Monthly FB NEWS 月刊FBニュース 月刊FBニュースはアマチュア無線の電子WEBマガジン。ベテランから入門まで、楽しく役立つ情報が満載です。

海外運用の先駆者達 ~20世紀に海外でアマチュア無線を運用した日本人達~

その55 ミクロネシアのプリフィックスが変わる時期 1989年(6)

JA3AER 荒川泰蔵

ミクロネシアのプリフィックスが変わる時期

ミクロネシアは、奈良DXアソシエーション(NDXA)のメンバーで構成されたV6Jチーム(JA3FGJ/V63GJ, JP3AYQ/V63YL, JJ3CIG/V63SS)が、今年(2017年)7月初旬に、IOTAのレアな島であるAS-226のモキル島(Mokil Island)からQRVしたので記憶に新しい(写真1の左)。このミクロネシアはスペイン、ドイツ、日本、米国と領主が変わってきたが、1984年には郵便業務開始の独自の切手を発行(写真1の右)、1986年には米国との間で自由連合協定を結び独立した。その後1989年にプリフィックスがKC6からV6に移行するが、この過度期に運用した方々のレポートから紹介する。尚、1991年には国連にも加盟しているが、国を代表するアマチュア無線クラブがないためか、まだIARUには加盟していない。


写真1. (左)V6Jモキル島(OC-226)のQSLカード(2017年)。
(右)ミクロネシア連邦の4つの州の島々が描かれた、連邦最初の切手(1984年発行)。

1989年 (ミクロネシア V63AQ, V63AR)

JH1NBN内山洋祐氏は、ミクロネシアのプリフィックスがKC6からV63に変わった初期に、V63AQの免許を得て運用したと、アンケートを寄せてくれた。「免許の申請時期が丁度KC6よりV63への過度期でした。その為か4、5ヶ月位かかり、免許が届いたのは出発1週間位前でした。また、担当官は非常に忙しいため、連絡等がうまくいかずやきもきしました。また、ミクロネシア連邦は連邦政府と各州の政府と独立していますので、免許の発行は連邦政府で行なわれますが、ヤップ州での運用でしたので予めヤップのみの滞在であることを申請書に含めておきました。また、ヤップ州のTransportation Divisionに説明及び許可をもらいに行きました。連邦の免許を提示し、運用場所等々の説明で問題有りませんでした。入国時には検査が厳しいので、免許は必ず提示できるようにしておいたほうが良いでしょう。島にはホテルが2軒しか有りません。(1990年6月記)」

JH2BNL和田裕司氏も、ミクロネシアのプリフィックスがKC6からV63に変わった時期に、V63ARの免許を得て運用したと、アンケートを寄せてくれた(写真2)。「私達の行く少し前にKC6からV63に変更になりライセンスが届いたのが、約1週間前でした。QRVしたのは、ミクロネシア連邦ヤップ州のヤップ島です。ホテルはE.S.C. Hotelです。今回のDXペディでは、初めてのV63を使い、ミクロネシアになってからQRVの少ない、ヤップ島からのQRVでした。ヤップ島は以前DXCCにはW.C.I.になっていましたので、たくさんの方からカントリーはE.C.I.かW.C.I.のどちらかと聞かれましたが、新しいカントリーの分け方は、パラオ/KC6、ミクロネシア/V63になっています。ですから、ロケ-ションはW.C.I.で、カントリーはミクロネシアです。(1990年6月記)」


写真2. (左)V63AR和田裕司氏への免許状送付案内書と、(右)その免許状。

1989年 (パラオ KC6BB, KC6YU)

JR2BEF鈴木康之氏はパラオでの免許を取得し、コロールでKC6BBを運用したとアンケートを寄せてくれた(写真3及び4)。「私の会社の従業員のJI2UAYマブチOM(KC6MZ)から、ライセンス取得法を教えていただいて、コールを得ました。現地へはKH2、グアムからKC6(E.C.I.)、Yap経由でフライトがあります。日航パラオは、無線をやりやすい雰囲気がありますが、JA方面は丘があってあまりFBではありませんでした。先例のOMに習って同軸を60m張り、この丘の上にDPを張りました。免許取得で手数をかけたKC6KR、コデップOMが1990年5月に他界され、又現在はライセンス発給元が変わったため、今までのように簡単にライセンスを得られなくなるのではと心配です。(1990年7月記)」


写真3. KC6BB鈴木康之氏が使用したパラオの免許申請用紙。


写真4. KC6BB鈴木康之氏の免許状。

JH1NBN内山洋祐氏は、パラオの免許機関が変わった初期に、KC6YUの免許を得て運用したと、アンケートを寄せてくれた(写真5及び6)。「免許の発行はPNCC(私企業)で行なわれていましたが、政府機関に変更になりました(1989年4月頃より)。これはPNCCの発行責任者が政府機関役務を兼任しており、彼がその職をかえたためです。彼はKC6KRのコ-ルで、ミクロネシア唯一の局としてアクティブでしたが、残念なことに1990年5月9日にサイレントキーになりました。政府機関への引き継ぎは行なわれていたのですが、手違い等でPNCCからKC6YU、KC6MZの免許が発行されました。このため最初の訪問時に免許を取り上げられました。しかし、同じコ-ルでの政府機関発行の免許を発行していただきました(免許の有効性はサインした人によるようです)。また、現在の運用可能周波数及びモ-ドは、公式文書では非常に制限されています。現在のアマチュア周波数、モードとフォーンバンドの資料を渡してきました。公式文書を現状に合う様に調整中です(これらの運用許可は暫定的に許可されますので予め許可を取ってください)。 担当官はアマチュア無線に関し詳しく知りませんので当初は事務手続きに少し遅れがあるかもしれません。(1990年6月記)」


写真5. KC6YU内山洋祐氏の問い合わせに対する、パラオの免許機関からの返事の手紙。


写真6. (左)KC6YU内山洋祐氏(左側)とVR2AM, Hung氏(2016年APDXCにて)。
(右)KC6YU内山洋祐氏の名刺には運用した多くのコールサインが書かれている(2016年)。

1989年 (西サモア 5W1IL)

JF3PLF杉浦雅人氏は、グループで西サモアへ出かけ、5W1ILの免許を得て運用したと、アンケートを寄せてくれた(写真7)。「(今回のペデイションは、JARL京都クラブ設立40周年記念として、参加12人が全て現地のコールサインを取得して行い、そのQSO数は約6,000でした。私個人としては、海外からの運用は1982年のKH0, 1985年のW, KH2に続き、4カントリー目になります。今回は、出発前から現地の運用まで、5W1FD, GP, GW そしてFDさんのXYLであるGUさんといった各局に、お世話になりっぱなしのペデイションで、JANETのありがたさを痛感しました。免許はAAから順に指定され、こちらの希望はできません。手数料は15タラ(約1,000円)で、1年間有効。日本でHF帯が免許されていれば、問題なく現地の1級が取得できます。必要書類は、日本の局免、従免の英文証明と、パスポートのコピーです。原則として免許は現地到着後発給ですが、担当官が留守の時も多く、私達は5W1GW岩佐さんに申請を先に済ませておいてもらいました。運用は、オリンピア ツーリスト アコモデーションという、コテージ風のホテルで行いました。電源は240ボルトでしたが、細い線で配線してあり、ブレーカーこそ落ちませんでしたが、電気はパカパカしていました。今回の運用での目玉は、何と言っても18, 24MHzのQRVでしょう。出発前、岩佐さんにわざわざ現地の担当官に問い合わせてもらい、OKを確認したものです。JAでも免許が下りたばかりであり、私達のQRVが、18, 24MHzでの1st 5W-JAであることは間違いありません。また、RTTYもWなどからは猛パイルを浴び、大変興奮したのでした。(1989年10月記)」


写真7. (左)5W1IL杉浦雅人氏の免許状と、(右)そのQSLカード。

1989年 (ニューカレドニア FK/JA1CMS)

JA1CMS阿部克正氏はニューカレドニアでFK/JA1CMSの運用許可を得て運用したと、アンケートを寄せてくれた(写真8~10)。「1989年9月6日より9月11日まで運用。あらかじめ手紙にて運用許可を申請、現地に到着次第許可証を手渡すとのテレコムより通知を受けて出発。到着後許可証を受領。ヌーメアから21MHzのCWとSSBで運用、610局とQSOした。モービルハム誌1989年11月号を参照ください。(1989年12月記)」


写真8. FK/JA1CMS阿部克正氏の運用許可申請書。


写真9. (左)FK/JA1CMS阿部克正氏への臨時運用許可証送付案内書と、
(右)その臨時運用許可証。


写真10. FK/JA1CMS阿部克正氏のQSLカード。

1989年 (JL3UIX北山浩氏による太平洋ツアー KH6/JL3UIX, KH8/JL3UIX, A35HK, 5W1HV)

JL3UIX北山浩氏から、太平洋の島々から運用したと次のような手紙を頂いた。免許や運用の詳細は分からないが、運用された報告のみ紹介しておく。「毎月CQ誌の"日本人による海外アマチュア無線局の運用"を読ませていただいております。僕もいつかはと思い、1989年3月、KH6→KH8→A35→5W1と、海外からの運用を楽しんで来ました。それに味をしめ、来年の春に別のカントリー(KH0, KH2, KC6W, KC6E, KX6, T30, T2それにKH3も狙っているのですがほぼ100%無理)に行こうと思っています。その矢先にCQ誌6月号でKC6の特集がありびっくりしました。西側パラオの免許申請先は分かりましたが、東側ポナペの申請先を教えて下さい。お分かりであれば、KX6, T30, T2の申請先も教えて下さい。それに加えて、上記カントリーの参考になるようなものがあれば、それもお願いします。(1989年5月記)」尚、問い合わせに対しては、1989年5月29日に返事を出している。

海外運用の先駆者達 ~20世紀に海外でアマチュア無線を運用した日本人達~ バックナンバー

2017年10月号トップへ戻る

次号は 12月 1日(木) に公開予定

サイトのご利用について

©2024 月刊FBニュース編集部 All Rights Reserved.