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おきらくゴク楽自己くんれん

その31 144MHz帯ツインループアンテナで全市全郡コンテストに参戦
お手軽な自作アンテナは実用に耐えられるのか?

JF3LCH 永井博雄

2023年11月1日掲載

皆さんこんにちは。月刊FB NEWS連載で自作カテゴリーに入っていながらも軽トラバイルシャック完成後はあちこちに出かけて運用記も多くなり、移動運用カテゴリーとの狭間で揺れている「おきらくゴク楽自己くんれん」です。


せっかく自作したのだから活用しよう!

時々知り合いの方から「貴局は自作したものをよく使われていますね」と言われたりします。世間ではアンテナなどを自作しても完成した喜びに満足され実際に継続して無線運用にがっつり使うことはそうないみたいな感じですね。

もちろんガツガツ使っている方もおられるとは思いますが、作るだけで満足という方の気持ちもわかるような気がします。私の場合はこれまで自家用軽自動車に簡易リチウムイオンサブバッテリーを搭載したり、タイヤ踏みベースを作ったり、各種移動用アンテナを作ったりと、全て自分自身のアマチュア無線業務に必要なものを自己訓練(笑)として必要に応じて作ってきました。作ったからにはフルに活用したいものだと考えています。

1. ツインデルタループアンテナのおさらい

そんな中、久しぶりに144MHz帯ツインデルタループアンテナを紹介いたしました。このアンテナは100円均一で売られている2m長さのステンレスワイヤーを使って安価に高性能なアンテナを作ることができるとして、本年2023年6月号のその26で紹介しテスト運用で思わぬ遠距離の局とつながり良いものが出来たと自画自賛していました。しかしもっとその性能を確かめる機会はないものかと考えておりました。

2. XPO記念コンテストで小手試し


少し肩身の狭い運用

毎年秋分の日(今年は9月19日)に行われるXPO記念コンテストでロケーションに優れる奈良県吉野郡上北山村の標高1400mの所から出ることを考えていました。

天気予報は夕方まで晴れということで格好の実験日和となりました。このアンテナはカブセと呼ばれるステンレスワイヤーを支えるプラスティック部品が雨水を給電部内に引入れているという弱点があり、雨が降ると使用できなくなります。

参加する部門は電信144MHz部門を選択しました。朝6時スタートのコンテストですが事情で出発が遅れてしまい、運用開始が9時を回ってしまいました。またいつも車を止めている場所に他の車が停まっていました。一見して無線関係の方の車ではない感じでしたので失礼してすぐそばに車を停めさせてもらいアンテナを上げさせてもらいました。

メジャーコンテストではないし参加者の少ない部門ですので、いくら高い所から運用しても次から次へと呼ばれることはありません。近隣のマルチを埋めることさえ難しい状況でしたが、なんと新潟県(08)とつながることができました。

普段この場所からなかなか新潟には電波が届きません。お相手の局のFBな設備のおかげだとは思いますが興奮してしまいました。もう秋だという時期に新潟県と交信できるとは、もしかするとこのアンテナは思った以上の実力を秘めているのではないか? と夢が大きく広がりました。

とはいえ準備不足で持ってきたバッテリーの容量が少なかったので15時くらいまでの運用でこの日は終えました。それでも運が良ければ入賞できる可能性も残したスコアは獲得できました。

3. 全市全郡コンテストに挑戦

XPO記念コンテストで実力の片鱗を感じることができたので、10月7日~8日に行われた全市全郡コンテストに挑むことにしました。部門はXPO記念コンテストと同じく電信144MHz部門で昨年の3エリア入賞スコアを目標にします。このコンテストの特徴として交信数を増やせばおのずとマルチも増えていきますので決して遠くに飛ばす必要はないのですが、飛び具合を実感する為にXPO記念コンテストと同じ場所で運用することにしました。

今度はスタート時間に遅れないよう十分に余裕をもって準備をしました。天気予報ではスタートからしばらく雨の心配はないのですが、8日は午後から雨が降る予報です。このアンテナには防水処置を施しておらず、雨が降るとアンテナの性能が落ちますので運用はそれまでの時間制限付きとなってしまいました。

移動地には7日15時過ぎに到着しました。今回は先に車が停められてなかったので、いつもの場所に陣取ることができました。アンテナは1本だけですからゆっくりと準備ができました。


夕日を背にアンテナをセット


144MHz帯自作アンテナで入賞を目指す

程なくセットが完了し、別のアンテナを使い430MHz帯などでCQを出して移動運用を楽しんでから早めの夕食をとり、まったりとした時間をシャック内で過ごすことができました。


コンテスト開始前のモバイルシャック内

移動地は標高が高いのでこの時期は10℃を大幅に下回るため暖房は必須となります。

今回用意したのは300Wのミニファンヒーターです。小さなセラミック発熱体をパソコン用のファンで送風する簡単な造りの安価なファンヒーターですが、狭いシャック内を温めるには十分な容量です。また電気毛布やホットカーペットのように温度調整機能がないので、手持ちの古い矩形波インバーターで使うことができるのもこのファンヒーターを選んだ理由です。


300Wのインバーターとミニファンヒーター


100Ahのバッテリーを暖房専用とした

今回は容量100Ahのリチウムイオン電池をシャック内の300Wヒーター専用の電源として使うことにしました。このバッテリーはBluetoothを内蔵しており容量監視をスマートホンで行うことができます。気になる消費電流ですがインバーターに流れる電流は約25Aとなっていました。これならば100Ahで約4時間運転できるとなりますが、容量が0になるまで使い続けることは出来ませんので、約3時間ほどの暖房が可能と言う事にしておきます。

実際は300Wで運転を続けると暖かくなり過ぎます。手動でON/OFFを繰り返すのでもっと長い時間快適な室温を維持できました。肝心の無線機電源は雨が降るまでもてばいいので50Ahと30Ahの12.8Vリチウムイオン電池で使いました。

コンテストがスタートしました。CQを出し続けコツコツと交信数を積む地道な作戦です。続けて呼ばれることは少ないですが確実に交信数を増やしいきます。ほどなくバンドが少し静かになると遠方の局が聞こえてきます。1エリアの某社団局を何度も呼びましたがコールバックが返ってきません。これはいつものことでアンテナの性能とは関係ありません。それでも何局かの1エリア移動ともつながるタイミングがあり、このタイミングを探すのにIC-9700のバンドスコープは大変役に立ちます。

全体的にコンディションが上がってくるとバンド内のあちこちに柱が立つので、そこに探しに行けば新しい遠方の局を交信することが容易です。とはいえ全市全郡コンテストは市郡がマルチですから局数が勝負です。何も遠くの局とつながる必要なく、近くてもいかに多くの局とつながることができるかで勝負がわかれます。

午後になって昨年の入賞者の交信局数に近づいてきたのですが、雨が降りだし次第に強くなってきました。しばらくは特に変化がなかったのですが14時を過ぎると何故かSWRが下がってきました。変に感じていたらCQを出しても全然呼ばれなくなっていきました。どうも給電部が濡れて電波の反射さえなくSWRが下がる、全く電波が飛んでない状態になっていたようです。

昨日からワッチしていて同じバンドモードでは長時間運用している局は少ないようで、この時点で3エリア入賞の手ごたえを感じていました。持ってきた市販ホイップアンテナを使い運用を続けることも考えましたが「自作アンテナでの運用」という事を選択し、この時点でコンテストをあきらめ片付けることにしました。

帰りにふもとにある温泉で濡れて冷えた体を温めて帰ることができました。とりあえずではありましたが目標を達成しての温泉の気持ちよさは最高ですね。


コンテスト移動運用帰りの温泉は最高

4. まとめ

製作した時の記事では高いゲインが得られそうだと書きました。このアンテナはデルタループアンテナをスタックして使っているということができます。何度か実際に使ってみてあながちこれは間違いだとは言えないと感じています。実際にコンテストで使ってみて、3m長さのGPアンテナと比べても同等以上性能があるかなという印象です。また全市全郡コンテストでは新潟県とつながることはありませんでしたが、そこは市・区・郡がマルチとなるコンテストです。より多くの局とつながることができればマルチはおのずと増えていきます。その点でもこのアンテナの前後共にパターンが広がる8の字特性を生かすことができたのではないかと思います。

雨の影響で昨年の入賞成績を上回ることは出来ませんでしたが入賞は果たせそうな成績を得ることができました。手軽な自作アンテナでもコンテストで使ってその性能を確かめる。こんなコンテストの楽しみ方はいかがでしょうか?

最後になりましたがコンテストで交信していただいた皆さんありがとうございました。

5.おまけ

先日の6m AND DOWNコンテストの結果が発表されました。このコンテストでは本連載その28で書いたように、シングルオペ電信電話430MHz部門で過去最高だった全国3位以上を目指し挑みました。おかげさまで初の同部門全国2位入賞を獲得することができました。これは大変うれしい入賞でした。弱い信号を相手にしていただいた皆さん重ねてありがとうございました。

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