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その8 今どきの軽自動車へのモービル機取付け

JF3LCH 永井博雄

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【本記事は複雑な制御をしている最新の軽自動車の電源に手を入れ実験しています。不慮の事態も考えられますので試される方は安全に十分注意して自己責任でお願いします。】

みなさんこんにちは。今回は私の普段使う車にモービル機を取付けたお話です。今年7月にホンダの軽自動車N-WGN(エヌワゴン)を購入しました。コロナの影響で車の生産が滞る少し前のタイミングで購入できました。同じ時期に人気が高い色を注文した人は2ヶ月以上待たされたという事で運が良かったようです。


最近は軽自動車も装備が良くなりました

この車に決めた理由は色々あります。走行時室内が静かで乗り心地がワンランク上の車なみで高速道路では半自動運転が可能、その他の安全装備の大変充実していることでした。納車されて早速、以前の愛車に積んでいたモービル機ID-5100Dを取付けたかったのですが、最近の車はみんなかなり作り込まれた室内なのでID-5100の大きなコントローラーを取付けるのに十分なスペースが見つかりませんでした。私のモービル機取付けに対するこだわりもあり、悩んでいるうちに1ヶ月以上の時間が経ってしまいました。

私のこだわりとはダッシュボード上などに、いかにも「アマチュア無線やっていますよ」的にコントローラーをつけたり、取付けの為に内装に穴をあけたり、粘着テープを貼ったり、取付けた跡が残るようなことはしたくないということです。これは新車だからというのではなく、この前に乗っていた中古で購入した車でもルームミラーの根本までコントロールケーブルを隠ぺい配線してミラーの上にコントローラーを取付けていました。この場所は意外目立たず。一般の人を乗せた時でも「これは何ですか?」という質問を受けることが全くありませんでした。車にモービル機を取付ける。こんな単純なことでも自分なりに工夫して上手くいけば楽しいものですね。


以前の車ではルームミラー上に取付け

そんな感じで何とか目立たないように、スマートにコントローラーを置くことはできないものか? と悩み続けていました。

1. コントローラーの取付け場所の検討

しばらく新しい車に乗っているうちにあまり使うことのないスペースがあることに気が付きました。


センターロアーボックスを活用

このセンターロアーボックスは比較的に大きな収納スペースですが、低い位置にあるので頻繁に入れたり出したりすることに適していないスペースでほとんど活用していませんでした。この場所にコントローラーをつけるといちいち操作のたびにしゃがみ込む必要があり少々不便ですがID-5100ではハンドマイクで大体の操作が可能なのでそれほど不便ではありません。そこでこの場所にどうにかしてコントローラーを取付けてみることにしました。

2. コントローラー取付け

肝心の取付け方法ですが、幸い手元に7月号のHFJ-350M二刀流で使用したアルミアングルの余りが大量にありましたので、純正オプションMBA-2と組み合わせてコントローラー取付け枠を組んでみました。


アルミアングルで枠を組んでテスト

仮に組んだアングルでは上部に長すぎてロアーボックスに物を入れることができなかったので切断します。


上部にはみ出す部分を切断してラッカースプレーで塗装


裏側: 外部SP用鉄板と固定に使う配線バンド

外部スピーカーには手持ちのマグネットブラケットがついている第一電波工業の小さな古いモデルP-600というものを使用。マグネットにつける鉄板もアングルに接着。ロアーボックス口の下端に絡める配線クリップバンドをネジで2個取付けています。カーペットに接する面にはマジックテープの尖った面を貼りつけカーペットに噛ませて動かないようにします。


コントローラーを取付け可能な状態

カーペットに接着というか抵抗を持たせます。左右アングルからのネジ止め式配線クリップをロアーボックス下端に引っ掛けます。これでコントローラーの固定が可能になりました。

3. 電源の確保

無線機電源の配線方法を紹介します。最近の車はエンジンルームに無駄な穴などありませんのでバッテリーからの配線を室内に取り込むのには苦労します。N-WGNには助手席側外板とエンジンルームの間に隙間があり、助手席のドアを開けるとフェンダーとの隙間にグロメットが見えてきます。ここを通せば室内に電源線を取り入れることができます。ただエンジンルームとドア側の間に遮音の為と思われる細い隙間テープが貼られているので上手く処理をして入線してください。


エンジンルーム助手席側外板との隙間に配線


助手席側のドアとの隙間のグロメット

この配線方法は私が2010年購入して乗っていたホンダのフィットで取った方法とほぼ同じです。確認はしていませんがホンダ車には同じ方法でバッテリーから電源を引き込むことが出来る車種が多いのではないかと思います。

同軸ケーブルを出来るだけ短くするためにアンテナはリアゲートに基台を取付けて本体を後部座席下に設置しました。したがってオプションのマイクロホン延長ケーブルを使ってハンドマイクを運転席近くまで持ってきています。

4. アイドリングストップで問題発生

こうしてID-5100Dを設置できてローカル局との交信を楽しんでいた時、問題が発生しました。送信時、交差点から発進でアイドリングストップしていたエンジンが再始動すると無線機がOFFとなり話が途切れるようになりました。どうもエンジンルーム前部のバッテリーから後部座席下の本体までの距離が長すぎてセルモーターが回ると無線機本体では許容以上の電圧降下を起こしてしまっているようです。

5. サブバッテリー搭載を検討

このような電圧低下による電源ダウン現象の対策には昇圧コンバーター使い、エンジン始動時に下がる電圧を13.8Vに昇圧する方式にて対策されているという話を聞いていました。しかし今回、どうせなら移動運用時に車載バッテリーあがりを意識せずに移動運用ができるようにサブバッテリーを設置しモービル機への通常の給電も行えればアイドリングスタート時の電源ダウン対策になるのではないかと考えていました。

そんなときに「理想ダイオード」というものがあり、面白そうなキットが出ていることを知りました。早速お取り寄せをしました。順方向電圧降下を意識しなくてよい、まさに「理想的」なダイオードです。これがあれば鉛蓄電池同士のメインバッテリーとサブバッテリーを並列に繋いでやるだけで両方とも充電してやることが出来ます。

【くんれんコラム】
理想ダイオードの巻

一般にシリコンダイオードでは順方向に電流を流すと約0.6V程度電圧が低下してしまいます。これにより車のDC12V車載バッテリーと逆流を防ぐ為にダイオードを通してサブバッテリーに接続しても、十分な充電電圧が得られないのでサブバッテリーを13.8V以上の満充電することが出来ません。

この問題を解決するためにDC/DCコンバーターで昇圧して充電したり、市販の充電器を使う為に一度AC100Vを作って充電器を動かしたり複雑な方法で対応していました。

そこでこの理想ダイオード(Ideal diode)を使えば、順方向電圧低下を無視できる程度にすることが出来るので電圧降下を意識しなくて良くなります。したがってこれと電流制限抵抗の簡単な回路でサブバッテリーを十分に充電すること可能となります。エンジン停止時は車載バッテリーとリレーを使って縁を切ることでサブバッテリーを無線機専用電源として利用できます。


ダイオードと言ってもLTC4412という小さな小さなICとMOSFETとで構成された電子回路です。米つぶより遥かに小さいICのハンダ付けが老眼の私には難関でしたがOMからの指導を受けて何とか組立に成功しました。

今回使用のキットは2エリアのOMが頒布されているものを使わせていただきました。




これで簡単な回路で電圧降下を気にせずサブバッテリーを充放電できる目途がたちました。

6. サブバッテリーを選択

それではサブバッテリーには何を使うか? 鉛蓄電池であれば満充電することができます。そうなれば車内で安心して使えるシールドバッテリー型がより適しているでしょう。容量はセルスタート時の電圧補償用であればゴク小さなものでよいのですが、出掛けた先での運用を考えれば大きな容量も欲しいものです。ネットで5Ahのものより写真の7.2Ahのものが3千円程度と安かったのでコレにしました。私の場合移動運用電源と言っても最近ではIC-705を使う場合が多く、そんなに大きな容量の必要はありません。仮に50Wで送信するとした場合FMモードなどでは少々足りませんがSSBなどで短時間の運用ならこの容量でもそれなりにこなせるでしょう。


モービル機の電圧補償にはこれで必要十分


タッパーに入れた理想ダイオードユニット


理想ダイオードを利用したサブバッテリー回路

セメント抵抗はサブバッテリーの残り容量が少ない時に充電電流が流れ過ぎないように入れています。今回は後部座席下に設置しましたが、時に熱くなりますので設置場所には十分な注意が必要です。

7. まとめ

車にキズつけないで粘着テープ等も使わずにモービル機を取付けることができ、アイドリングストップ再始動時の電源ダウンも全く発生しなくなりました。また追加したサブバッテリーは移動運用電源として車内に常設することができて非常に便利で快適です。

サブバッテリーに容量が大きなバッテリーを使う場合、今回使った理想ダイオードキットでは20A以上を扱えるようなので電流制限用セメント抵抗の値と耐電力を変えてやれば大きな出力での長時間運用も可能になるでしょう。

当初はモービル機電源の安定供給が目的でいろいろ試してみました。移動用電源の常設が可能となり一石二鳥となり満足度は上々です。こうしてひと段落がついたところですが、使っているうちにもっと良い環境が作れないか? と欲が出てきました。今後の発展について上手くいった時は本連載の記事で紹介させていただこうと思っています。

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