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今月のハム

JH3NGD 吉村和人さん

兵庫県明石市の小高い丘に作ったシャックからアクティブに運用中のJH3NGD吉村さん。1952年、徳島県で生まれた吉村さんは中学生の頃、中古の短波ラジオを直していた時にたまたまアマチュア無線の電波をキャッチして興味を持った。しかし、徳島では国家試験が実施されていなかったため、免許を取得したのは高校1年の時で、夜行列車で松山まで行き電話級の試験を受験した。

資格取得後は、アルバイトをして購入した中古の無線機で1969年にJA5EIVを開局した。アンテナは竹竿を支柱にしたダイポールで3.5MHz、7MHz、21MHzにオンエアした。さらに、その年の夏休みのアルバイトで50MHzのパナスカイマーク6、通称「パナロク」を購入し、竹材のスプレッダーで自作した2エレキュピカルクワッドを使って運用を始めた。ある日50MHzでたまたまオーストラリアとつながったのがきっかけとなり、DX QSOの虜になった吉村さんは、その後は、21MHz、28MHzの2エレキュピカルクワッドを作り、毎日DX QSOに明け暮れた。

1971年、高校を卒業した吉村さんは建設会社に就職し、関西支店に配属された。寮のあった大阪府豊中市でJH3NGDを開局しHF帯での運用を再開しただけでなく、モービル運用にも目覚め、通勤しながら毎日7、21、28、50、144MHz等でオンエアしたという。

1975年になると名古屋支店に転勤となり、名古屋の寮の屋上にHFのビームアンテナを設置。JR2UOCのコールサインを取得してオンエアを始めた。その後1980年に再び関西支店勤務になると、今度は姫路市からJH3NGDの運用を再開。ビームアンテナでDX QSOを楽しみながら、さらに通勤途中のモービルからは自作アンテナで3.5MHzなどを運用した。

1985年、吉村さんは明石市に転居し、敷地内に28m高の自立タワーを建てた。タワーには自作した14MHz 6エレ八木と28MHz 6エレ八木、それに7MHz 短縮2エレ八木を乗せてDX QSOに明け暮れた。しかし、1995年の阪神淡路大震災では自宅、アンテナ共に少し被害を受けたこともあって1999年には自宅を自ら設計して建て直したという。

2004年、台風16号の強風でタワーの上から2段目が座屈してアンテナが落下、それが高圧6600Vに接触して近隣が7時間停電するという事故が発生。しかし、それにも懲りず、吉村さんはアンテナとタワーを再建した。少し規模を縮小し、23m高のタワーに14MHz 4エレ八木と、7MHz ロータリーダイポールを設置したが、さすがに以前のようには飛ばなかった。しかし、一度事故を経験したことから、自宅でのアンテナ大型化は断念し、セカンドシャックの建設計画を進めることにした。

幸いにも明石市内にある海抜約90mの小高い丘に用地の確保ができ、2006年末からセカンドシャック建設の段取りを始めた。シャックには特注ハウスを設置し内装は自分で行った。アンテナは14MHz 6エレ八木、18MHz 5エレ八木、7MHz フルサイズ2エレを自作して設置し、1kWへの変更検査を受けてセカンドシャックからの運用をスタートした。

この7MHz 2エレ八木はよく飛んだが、受信性能に満足がいかなかったため、大型アンテナへの載せ替えを計画し、吉村さんはブーム長26mの5エレフルサイズ八木を自作した。なお、この7MHz 5エレ八木を支えるために採用したアンテナマストは、下部が直径114mm、上部が直径89mmの2段構造で、肉厚は10mmのため、その重量はマストだけで327kgにもなるという。「このくらい頑丈なマストにしないと、ブームステーによってマストが曲がってしまうからです」、と吉村さんは説明する。これらのアンテナ設置は業者には依頼せず、全て仲間内で行った。「いつも工事やメンテナンスを助けてくれるローカル局には本当に感謝しています」、と吉村さんは話す。


吉村さんのシャックとアンテナ群。(2017年2月現在) 左側のタワー(27m高)には、21/28MHzデュアルバンド5エレと24MHz 自作7エレ、 中央のタワー(30m高)には、18MHz自作7エレと14MHz自作7エレ、 右側タワー(40m高)には、7MHz自作5エレ八木が乗っている。

アンテナを大型化したことで、飛び、受けともに満足が行くようになったが、逆にメンテナンスは大変となった。アンテナを回転させるローテーターは大型のものに取り替えたが、強風で何度も故障したため、さすがにこの大型アンテナではローテーターがもたないと判断し、それ以降、いつも台風が来る前に40mのタワーに登ってマストクランプを緩め、台風が過ぎ去ると再度タワーに登って、アンテナの方向を合わせてクランプを締める作業を繰り返している。

「何も聞こえなくてもCQを出してみると応答があることがあります。つまり伝搬がオープンしているのを発見するのは楽しいですよ」、と話す。「南米向けには英語でCQを出しても応答が無いことが多いですが、スペイン語でCQを出すと応答があります。よく聞こえているし、ちょっと呼んでみようかなと思ってくれるのだからと思います」、「下手な外国語でも海外の局と話をすることができて、仕事のストレス解消にも役だつのは、アマチュア無線の大きなメリットです」、吉村さんと話す。

「現在のシャックはローケーションが抜群に良いのですが、近隣ノイズが多いので、これをなんとか解決したいです」、「また、誰よりもよく聞こえるアンテナを自作して、運用しいたいと思っています。まずは、ハイバンドの大型アンテナのスタック化を考えています」、と吉村さんは今後の計画を教えてくれた。

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次号は 12月 1日(木) に公開予定

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