アマチュア無線の今と昔
2025年12月1日掲載
しし座流星群(極大日: 11月17日、18日頃)がありました。11月にピークを迎える、有名な流星群です。知人(アマチュア無線には全く関係のない人)とLINEで話をしていましたら、たまたま流星の話が出ました。「しし座流星群を見たか?」という話から、流星の話題で盛り上がりました。皆さんはいかがだったでしょうか? この原稿が出る12月には2つの流星群があります。
・12月の流星群
①ふたご座流星群(12月中旬)
1月の「しぶんぎ座流星群」、8月の「ペルセウス座流星群」と並ぶ、三大流星群のひとつです。一晩に見られる流れ星の数が年間で最も多く、当たり年であれば1時間に40個〜60個以上見えることもあります。別名、年間最大級の「星のシャワー」とも呼ばれます。
時期: 毎年12月13日~15日頃
特徴: 明るい流星が多く、ピークの時間帯が長いため、初心者でも見つけやすいのが特徴でほぼ一晩中見ることができます。
今年の見頃は、極大日(ピーク)である12月14日(日)の夜~15日(月)の明け方です。深夜に月が昇ってきますが、それまでは月明かりのない暗い空で観測できます。ピーク時刻も日本の夜の時間帯に合っているため、多くの流れ星が期待できます。

ふたご座流星群
②こぐま座流星群(12月下旬)
クリスマスの直前、冬至の頃にピークを迎える流星群です。ふたご座流星群に比べると出現数は少ないですが、一年の最後を飾る天体ショーとして人気があります。
時期: 毎年12月21日~23日頃
特徴: 北極星に近い「こぐま座」から放射状に流れます。数は1時間に数個~10個程度と控えめですが、時折明るい火球が見られることもあります。
今年の見頃は、極大日(ピーク)である12月22日(月)の夜~23日(火)の未明です。この時期は月が新月に近く、月明かりの影響がほぼありません。一晩中、暗い空で観測できる絶好のチャンスです。
もう何十年も前ですが、12月23日が祝日だった時、スキーに向かう車の中から、肉眼でハッキリと見えた記憶があります。運転しながらでも見えたので、相当明るかったのでしょうね。もしかしたら火球だったのかも?
・MS通信
アマチュア無線の世界では、昔から「流星散乱通信(メテオスキャッター: Meteor Scatter)」として、流星群の時にVHF帯などで普段では飛ばないような地域とQSOすることが行われてきました。
私はてっきり過去形の話かと思っていましたが、実はデジタル技術の進化により、現在でも非常に熱心に行われている、ロマンあふれる通信方法だということがわかってきました。流れ星が輝く「一瞬」を利用して遠くの人と交信する、その仕組みや変遷について解説します。
①どんな仕組みなのか?
流星(塵)が大気圏に突入して燃え尽きるとき、周囲の空気が高熱でプラズマ化し、「イオン化列(電離柱)」という電気を帯びた細長い雲のようなものができます。このイオン化列が「数秒~数ミリ秒」の間だけ、鏡のように電波を反射します。これを利用して、通常は届かない遠距離(約500km~2,000km程度)の相手と交信する技術です。
主に使われるバンドとして、50MHzや144MHzのVHF帯がよく使われます。私は休眠前までは自称6mマンでしたので、流星の話題には興味を持って見ていました。前述のこぐま座流星群を見た時は休眠している最中の話でしたが、よくもまあ覚えていたものだと我ながら感心しちゃいますhi

MS通信のメインは50MHz
②昔と今:通信スタイルの劇的な変化
流星による反射は本当に一瞬です。そのため、時代とともに通信スタイルが大きく変わりました。
・昔(アナログ時代)の「職人芸」
かつては、反射が持続するわずか数秒の間に、CWやSSBで必要な情報(コールサインとレポート程度)を送り合うという、まさに「早業」が求められました。
大きな流星(火球クラス)が出た瞬間に、「今だ!」と叫ぶようにコールサインとレポートを交換します。相手の声が一瞬だけ「フワッ」と浮き上がって聞こえるスリルは、この通信ならではの醍醐味でした。
・今(デジタル時代)の「WSJT」革命
2000年代以降、ノーベル物理学賞受賞者でもあるジョゼフ・テイラー博士(K1JT)が開発した通信ソフト(WSJT-Xなど)の登場で、状況が一変しました。
MSK144モードを使い、人間の耳ではノイズにしか聞こえないような一瞬の信号(バースト)を、パソコンが自動的に検知・解読します。以前は熟練の技術と大きな流星群が必要でしたが、今ではパソコンと無線機があれば、散発的な(群に属さない)小さな流星の反射でも、日常的に交信ができるようになりました。

パソコンと無線機で流星反射通信を
①流星群との関係
デジタル化されたとはいえ、やはり母数が多い「主要流星群」の時期は特別です。
先ほども述べましたが、これからすぐに遭遇するふたご座流星群(12月)や、夏の一大イベントであるペルセウス座流星群(8月)の極大日は、反射のチャンスが頻繁に訪れるため、50MHzや144MHzはお祭り騒ぎになります。普段は聞こえない遠くの局が、流星が流れるたびに「ピョッ!」「キュッ!」という短い音と共に画面上に文字として浮かび上がってくる様子は、現代的ながらも非常に幻想的です。
②この通信のロマン
「星に願いを」と言いますが、アマチュア無線家は「星に電波を」乗せています。夜空を見上げなくても、無線機の向こうから聞こえる一瞬の信号で「あ、今大きな星が流れたな」と分かります。そしてその一瞬のきらめきを使って、見知らぬ誰かと「握手」をするといった、まさにSFのような体験ができるのが、流星散乱通信の面白いところだと思います。
12月のふたご座流星群は、数が多いのでこの通信を試みる局も非常に増えます。可能であれば、50MHzなどをワッチしてみると、独特の信号音が聞こえてくるかもしれません。
こうやって原稿を書いていると、何故かワクワクしてきましたhi この冬、ワッチできない方も、せめて流れ星を眺めて願いをかけてみてはいかがでしょうか?

星に願いをかけませんか?
なおご意見、ご感想、ご質問等については、筆者である私宛(jf1kktアットマークgmail.com)へご連絡頂けますと幸いです。
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