2013年12月号

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連載記事

楽しいエレクトロニクス工作

JA3FMP 櫻井紀佳

第7回 送信機2 (最終回)

7.5 総合組立

送信各部の検討をしたので総合的に組み立てていきます。プリント基板は2.54mmピッチの穴あき基板を使いました。大きさは受信機より少し大きい76mm x 137mm程度です。今回失敗したのは、取り付け穴を考えずに基板の端から部品をつけてしまいました。後で取り付ける時に失敗に気が付きましたが、皆さんが作る時には取り付け穴を避けた所から部品を取り付けてください。

プリント基板に部品を取り付けて配線してください。アースと+3.4V、-3.4Vの配線は、少し太めのできれば1mm位のメッキ線で配線した方がベターです。上の写真のプリント基板の例ではアース、+3.4V、-3.4Vの3本の線が横に2列に列びましたが、所々でそれぞれの線を並列に配線しておきます。この方が線のインピーダンスが下がって全体的に安定になります。出力のコネクターは今回も手持ちのSMAにしましたが、受信機と同様にピンジャックでもOKです。

配線が終わると受信機の時と同様に配線のチェックを行います。繋がっていることを確認したら配線図にマーカーを入れていきます。不要なショートもチェックしてください。この送信部のプリント基板は、受信機で作ったアルミ板のシャーシーの受信機の上に取り付けてみました。ポリバリコンを1つしか持っていなかったので、受信機から外して送信VFOに付け替えました。

7.6 電気的チェック

プリント基板の取り付けとポリバリコンの配線を終えたら電源をつないでチェックしてみます。この送信機は基本的に調整する所がなく、作り上げると即動作しますが、1つのポリバリコンを送信と受信に使い分けたので送信しながら受信できません。送受信同時にするにはポリバリコンが2つ必要です。

また、周波数を正確に計れるものが欲しいところです。周波数カウンターがあればベストですが、HFの設備を持っているアマチュア無線局の受信機で合わせる方法もあると思います。

・電源
電源をつないでテスターで+3.4Vと-3.4Vを測ります。5Vの直列型定電圧ICに下駄をはかせたLEDの種類とバラツキによって、少し電圧が異なることがあります。±0.2V程度の違いは問題ありません。もし、-3.4Vが0Vになっている時には一番元の電源の-側がどこかのアースに繋がっていないか確認してください。


9Vの電源アダプター

・VFO
必要な周波数は28.0MHz~28.8MHzですが、周波数カウンターがないと正確に読めないと思います。周波数が読める受信機があればVFOの発振出力を受信して確認することができます。1/4分周した7MHzでも受信できると思います。

回路図にあるコンデンサーと自作したコイルでほぼ近い周波数になりますが、少しだけ周波数が低めになった場合は、巻いてあるコイルのピッチを少し伸ばして粗くすると周波数が高い方へ動きます。

7.7 実際の動作

必要なチェックを終えたら実際に動作させてみます。このためにはマイクが必要なため、マイクを手に入れてください。インターネットの通販で売っているものはコンデンサーマイクが多く、この場合、図のように電圧をかけることが必要です。ダイナミックマイクであれば電圧をかける必要はありません。

この送信機では、特に調整する部分がないため接続に間違いがなければすぐに動作します。もし、他に受信機を持っていればそれで聞いてみてください。周波数が合えばLSBの信号が聞こえるはずです。実際に手持ちの受信機で聞いてみたところ、まずまずの音質で聞こえました。

7.8 課題と改善点

一応の動作は確認できましたが、改善点も多くありました。一番の問題は高周波段のスイッチによる平衡変調です。測定の結果、このスイッチでは平衡度が悪く、最初の段の1.5kHzも少し漏れているようですし、VFOの信号も漏れています。やはりDBMによる平衡変調の方が良いようです。その回路は次のようになります。ただスイッチでもミキサー動作をすることは確認できました。


DBM送信機 (クリックで拡大します)

また、作り方も穴あき基板に部品を取り付けたためアースが不十分でノイズが多く、漏れてきた1500Hzの局部発振器の信号とミックスされた信号も不要信号として出ており気になります。1200HzのLPFももう少し性能を上げたいところです。フィルタの外の不要な信号が少し気になり、この特性が良くなれば不要信号も下がると思います。当初VFOの周波数が高く、周波数安定度が心配でしたが、実際には結構安定度もよく実用になりそうな状況でした。

全体のまとめ

今回で受信機と送信機の製作の最終回となりました。受信機と送信機を現在市販の部品で作り上げることを主目的にしましたが、免許が貰える無線局としてはもう少し問題点を検討した設計にしなければならないと思います。その場合は誰でも手に入る部品と言うより、その性能が出せる部品を個々に探す必要があります。また、その場合は測定器もある程度必要になりますが、作る喜びを見いだして頂き、そのような仲間が増えることを期待したいと思います。長い間読んで頂きありがとうございました。

■ マイク
現在簡単に手に入るマイクといえば、ダイナミックマイクとコンデンサーマイクです。昔は出力の大きいカーボンマイクや、音がいいと評判のベロシティマイク等が使われていました。

ダイナミックマイクの構造は原理的にスピーカーと同じで、強い永久磁石のS極とN極の間においたコイルを音によって動かすることでコイルに電流が発生するのでそれを取り出します。ちょうどスピーカーと逆の動作です。ダイナミックマイクは外からの電源が不要で、迫力ある音がするといわれ、カラオケ等によく使われるようですが、アマチュア無線でも好評のようです。

コンデンサーマイクはその名の通り構造的にはコンデンサーになっています。音声によってコンデンサーの電極の間隔を変化させると電圧が変化するためそれを取り出します。元々電極間に高い電圧をかけないと出力が取れないのですが、固定の電界を持つエレクトレットを使うことでそれを回避しています。電極に高いインピーダンスを持たせる必要からFETを使っています。この電源として出力端子に低い電圧が必要です。

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