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楽しいエレクトロニクス工作

第84回 エレキー

JA3FMP 櫻井紀佳

この連載の「第40回 電子バグキー」でバグキーを作りましたが、短点だけでなく長点も連続して出せるエレキーを作ってみたくなりました。今時標準ロジックICを使ってエレキーを作る人はいないかも知れませんが、あえて昔から使い慣れたICを使って、クロック発振器による同期式エレキーを作ってみることにしました。

短点は以前の「電子バグキー」の回路を殆どそのまま利用できますが、長点は新たに回路を考えなければなりません。また今回は、短点に癖も出せるよう1:1のデューティを少し変更できるように考えました。ただし、長点のデューティを変えるのは好みに合わないため標準の3 : 1になるようにしました。


色々検討した最終的な回路は次のようになりました。


以前の「電子バグキー」でも説明しましたが、ロジックICを使ったデジタル回路は単純に考えるより難しいこともあります。まずはパドルを操作するとすぐに符号が出なくてはなりません。以前の「電子バグキー」の時には一拍おいて符号が出ることになりやり直した苦い経験がありました。

このためカウンターはダウンカウンター74HC191を使いクロックが入ればすぐ立ち上がる回路にしています。


UP DOWNカウンター74HC191の動作

CWの符号をマークとスペースで考えてそれぞれ1単位とすると、短点は2単位、長点はマーク部が3単位、スペース部が1単位で合計4単位になります。前回と同様に短点に癖を出せるよう短点のマークの幅を変化できるようにするため、マークの1単位を8個のクロックで構成するようにしました。従って長点のマークは3単位で24個分のクロックで構成します。もちろんスペースも1単位の8クロックです。

この回路は上半分が短点の回路で下半分が長点を作り出す回路になっています。「第40回 電子バグキー」で説明していますが、送信文字数を最大125文字/分とすると短点が16Hz位になり、短点2単位を16クロックで構成するためクロックの周波数は16倍のmax 250Hzくらいになります。IC1A~IC1Cはクロック発振回路でR3のVRで周波数を35Hz~250Hzくらい変化させています。

短点のパドルを押すと「Dot」端子がLになり、IC5Bの端子6がHになってD1で止めていた発振回路が動きはじめます。また、IC5AでLになっていたIC2のLOAD端子はIC2の出力QA~QDをすべてLに設定し、IC2のCLK端子にクロックが入るとIC2はダウンカウンターのため16進「F」からスタートします。

すぐにIC2のRCOからLを出力するためIC4AのFF(フリップフロップ)がプリセットされて短点のマークが始まることになります。IC2の出力QA~QDはIC3のBCDデコーダーに入力され9~0に対応した出力を取り出します。IC2のダウンカウントが進んで8~6になるとスイッチS1で取り出された出力でIC4AがLにリセットされて短点が終わります。7の時は標準ですが6の時は長めに、8の時は短めの短点が作られます。

以前の電子バグキーではBCDデコーダーに出力がアクティブHの74HC4028を使いましたが、今回は手持ちがなく代わりにアクティブLの74HC42を使いました。出力を反転する必要があるのでIC1Eのインバーターを入れています。

長点の回路は短点の回路を元にしてマークの長さが3倍になるようにしています。このためカウンターの16進動作を2回で1動作になるようにIC8AのFFをつけています。IC6は16進の「F」で立ち上がってダウンカウントを始めますが、この立ち上りでRCOよりLが出力され1回ごとにIC8AのFFを反転させます。

IC6のカウンターは16進「F」からスタートして8クロックで「7」になり、QA~QDの出力をIC7で検出して、さらにIC8Aの出力と合成すると24クロックを検出できます。IC8BはダウンカウンターIC6の立ち上がりのRCO出力でセットされ、IC7の出力によって24クロック目でリセットされるため長点のマークが取り出せることになります。


長点のタイミングチャート

IC8BのFFは電源立ち上り時に状態が定まらないのでR9、R1、C2でリセットするようにしています。短点はIC4Aの出力で、長点はIC8Bの出力からそれぞれR5、R8を通してQ1のFET BS170をドライブしてKey Outとして取り出しています。

これらの回路は手元にあった72mm x 95mmの穴空き基板に組み立てました。


このようなエレキーの製作はPICマイコンなどソフトを絡めたものの方が今風でスマートと思いますが、ハード的なロジックの動作を考えるのもまた楽しみの一つではないかと思いご紹介させていただきました。

74HC42の動作




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