2015年3月号

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楽しいエレクトロニクス工作

JA3FMP 櫻井紀佳

第22回 実験用定電圧電源

アマチュア無線に必要な色々なものを作ったり実験したりするとき、電圧が自由に変えられる電源が欲しいことがよくあります。市販でも色々な電源が売られていますが、価格も高いので自作してみることにしました。

回路はできるだけシンプルにして、誰が作っても再現性のよいことを目標にしました。

1.回路構成

定電圧電源には、スイッチングレギュレーターの方式と、シリーズレギュレーターの方式があります。今回製作する電源は実験用のため大電流は想定せず、また実験中にノイズに邪魔されたくない場合が多いため、基本的にノイズの出ないシリーズレギュレーターを製作します。

電圧の可変範囲は0V~+15V程度として、電流は最大3A程度にしたいと思います。出力を0V付近まで取り出せるようにするためには回路に工夫が必要で、そのため内部にマイナスの電源を使うことにしました。

また、トランスを組み込んで使うのが本来のシリーズレギュレーターと思いますが、ちょうど以前に使っていたパソコン用の電源が余っており、出力電圧が18Vでしたのでこれを使うことにしました。これはスイッチング電源のため、ノイズの点で多少懸念はありますが、今回製作する本体はスイッチングではないのでノイズは減少できると考えました。

回路の構成は次の通りです。


(クリックで拡大します)

この定電圧電源の電圧を制御する回路は、OPアンプIC3Aに±5Vの電源が供給され、OPアンプの+入力端子はグランドに接続されているため、-入力端子がグランドレベル0Vに近づくよう制御されます。電圧可変VR(R20)の片方には出力電圧が加えられ、もう一方は3.3kΩ(R1)を通して-5Vに接続されています。VRの中点は10kΩ(R2)を通してOPアンプの-入力に接続されているので、VRを回して中点を3.3kΩ(R1)に近づけると、この点が0Vになるよう制御されるため、VR(R20)の他端は約15Vになることが分かります。従って最大出力は約15Vです。VRを回してR1とR20の合計値の半分の6.65kΩのポイントは出力+5Vになります。

最大出力電流は3Aを予定していましたが、出力のトランジスターは手元にあった2SC5199を使ったため、最大コレクター電流が12Aと十分余裕があります。もう少し最大コレクター電流の少ないトランジスターでも問題ありません。そのドライバーは、これも手持ちの関係でJA7151を使いましたが、特に意味はなく、昔のモトローラのPNP中出力トランジスターが余っていたので使っただけです。これに代わるトランジスターは例えばロームの2SB1182/2SB1240等が使えると思います。これら2つのNPNとPNPのダーリントン接続としています。

OPアンプの出力バッファーにはロームのデジトラDTC114を使っています。このトランジスターの入力は内部が抵抗分割になっておりOPアンプに直接接続できます。IC3Aの出力の電圧が上がると、このトランジスターの電流が増加し、ダーリントン接続のQ1、Q2の電流も増加して出力電圧が上がる方向に働きます。このようなデジトラが手に入らないときは下の図のように2SC1185のような小信号トランジスターに外付け抵抗を取り付けても問題ありません。

OPアンプのマイナス電源部だけを取り出して説明するとつぎのようになります。


(クリックで拡大します)

IC6~IC8は3段のインバーターによる発振回路で周波数は47kHz位です。この発振出力で後のFETをドライブしてスイッチングしますが、そのままの波形では上側のPMOSと下側のNMOSのFETが同時にONになる瞬間ができる可能性があり、回路的にショートになるので避けなければなりません。

このため、R8とC12で波形を遅延させてIC4のAND回路とIC5のOR回路を通してFETをドライブすると、同時にONになるのを避けることができます。後のマイナス電源を作るFETのスイッチは普通のスイッチに置き換えると理解しやすくなります。

左の図のように上のスイッチがONのなると+18Vの電源からC9→D2と電流が流れてC9が充電されます。次の周期で、今度は右の図のように下のスイッチがONとなりC9の+がグランドに接続されるためD1を通してC10がマイナスに充電されます。これを繰り返すことで出力は電源電圧を逆にした-18Vに近い電圧になります。

OPアンプで-5Vを使うためIC2のシリーズ定電圧ICでこの電圧を取り出します。この回路は電源動作のプロセスを考えるには良いかも知れませんが部品が多いため、もしLM2662かLTC1144等のICが手に入れば次の回路が簡単です。

出力を誤ってショートした場合などで、回路が故障すると困るため電流制限回路をつけています。

出力に電流が流れるとR4に電圧降下が生じます。電流が増えてQ3のベース・エミッター電圧がコレクター電流の流れ始める0.5V(5A)以上になるとコレクター電流が流れ、R3を通してIC3AのOPアンプに入力されて出力電圧を下げる方向に働き回路を保護します。トランジスターのベース・エミッター電圧は温度の依存性があるため、この電流制限回路は温度で制限する電流が変わりますが常温では問題なく使えます。

切り替えて使う電圧計と電流計は、元々1mAの電流計の表示部の原稿をパソコンで作り、貼り付けて最大20Vと5Aにしました。パソコン用紙として、メーターのパネルに使えるようなプリンターで印刷できるフィルムを売っていますので、これを使います。

この電流計の内部抵抗は100Ωなので、回路電流5Aの時に電流計に1mA流れれば良いのですが、電流計に直列に2個の抵抗で902Ωを挿入し見かけ上、内部抵抗を約1kΩにしています。

5A x XΩ = 1mA x 1kとなるので、XΩは0.2Ωとなります。0.1Ω x 2となっていますが中点の所から電流保護回路に使っています。この抵抗は1Ωのものを基板上に10個並列に並べましたが、形状が1608タイプのため0.1Wで、10個でも1Wしかなく電力不足でもっと大きいものに替える必要があります。

また、電圧計は最大20Vの時、1mA流れれば良いので、抵抗値としては20kΩですが、電流計の内部抵抗分1kΩを差し引くと19kΩになります。19kΩの抵抗は市販されていないので市販の18kΩと1kΩを直列に接続しました。

2.組立

電源を置くために机の場所を取られるのは少し気になるので、縦型形状の電源にしてみました。ケースは部品屋さんで売っているもので、大きさを適当に選んだものです。元々は横型で使うケースですが無理に縦型にしてみました。

メーターは以前からちょうど1mAのものを持っていたのでこれを使い、また電源スイッチ、ボリューム、メーター切替スイッチ、端子、電源コネクター等も、ほとんどのものは部品箱に残っていたものを使いましたが、これらは部品屋さんで手に入ると思います。


プリント基板                            電源内部

電流保護回路をつけているため煙が出るほどの電流は流れないはずですが、何かのトラブルに備えてヒューズを付けました。このヒューズは自動車用のものですが、最近はこのホルダーを含めて部品屋さんで売っています。

Q1とQ2は近い方が配線しやすいので3mmの長ビスで上下に止めています。Q1は電流が多いので、ケース一杯のアルミ板を取付け放熱板としています。Q1はコレクター電極がむき出しでアルミ板と絶縁したいため、専用のマイカ板を挟んで取付け、放熱効果を上げるためサーマルコンパウンドを塗りました。プリント基板はこの放熱用アルミ板に3mmのスタッドで留めています。

線の長さを切り間違えて配線は見苦しくなりましたが、やり直す程のことではないかとそのままにしています。


サーマルコンパウンドと絶縁マイカ板

供給元の電源は昔のDELLのパソコン用電源ですが、パソコンを廃棄したため余っていたものです。これはスイッチング方式ですが18Vで3A以上取れるのでこれを使うことにしました。今回作った電源の最大電圧は15Vなので入力電圧は18V以上欲しいところです。

もしトランスと整流器で供給元の電源を作るのであれば、トランスの2次電圧は16V~18V位が良いと思います。トランスの電流はもちろん3A以上必要です。16Vでも無負荷では電解コンデンサーの端子で+21V~22V位になるので電解コンデンサーの耐圧は25V必要です。


 トランスを使った電源回路                      

電圧可変の直流電源が手元にあると便利で、色々な実験に使っている他、ミニドリルの電源としても使っています。比較的簡単にできますので興味ある人に製作をお勧めします。

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