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Topics from Around the World

ブルース・リーは生きている
ブルース・リー生誕80周年メモリアル局VR2BLEEの運用

著 月刊FB NEWS編集部


JN3SEW___昨年(2021年)、5月22日の夕方5時過ぎ、購入したばかりのIC-705に第一電波工業の7~50MHzホイップアンテナRHM8B(資料1)を接続し、部屋の中で50MHz、SSBをワッチしていた。急にバンド内がブーンという音でざわざわしたのを不思議に思いながらもダイヤルを回すとVR2BLEEのコールサインが聴き取れた。「おっ、DX局だ!」、「コールサインが長いな」と思いながらもワッチを続ける。VR2BLEEがスタンバイするとJA各局がコールしているのが聞こえた。IC-705、5W QRP、それにホイップアンテナの設備。「QSOは無理か」と思いながらもマイクに向かってコールした。「VR2BLEE, this is JN3SEW. Over.」次の瞬間、なんと相手局から応答があったのだ。一瞬アドレナリンが噴き出したかのような気分になったのを覚えている。「JN3SEW, this is VR2BLEE. Your signal is 59. My name is Igor. Over.」 RSレポートを交換しQSOが終了。ほんの一瞬の出来事であった。


資料1 JN3SEWのシャック (IC-705に第一電波工業のRHM8Bを接続)

VR2BLEEのコールサインをネットサーチすると2021年は、香港を代表する俳優ブルース・リーの生誕80周年で、VR2BLEEはその特別記念局であることが分かった。さらに今回のQSOは自分にとって初めてのDX QSOということもあり、さらに気持ちが高ぶった。特別記念QSLカードやアワードも発行しているとの情報がネットに記載されており、リクエストをしたところ、最近そのQSLカードがエアメールで届いた。

上記はJN3SEW局が編集部に寄せてくれたニュースである。これを機に編集部ではVR2BLEEの記念局を運用していたVR2ZQZ、Mr. Igorにメールでインタビューをお願いしたところ、快くお受けしていただき、ネット等に紹介されていない情報等の提供もあり、今回その情報をまとめたのでこのコーナーで紹介する。

Mr. Igor (VR2ZQZ)

Mr. Igorとは今回の記念局VR2BLEEのメインオペレーターだ。期間中ほとんど彼がひとりで運用した。個人コールサインはVR2ZQZ。HF帯にアクティブにQRVしている。時期的にはサイクル25に入ったというものの残念ながらまだまだコンディションは低迷しており、彼の信号もEsでなければ聞こえない状態が続いている。これから徐々にコンディションが上昇すればJA各局もVR2ZQZとのQSOのチャンスが期待できる。

ところでMr. Igorは、今回のVR2BLEE記念局開局の発案者だ。開局の準備として当局に問い合わせたり、運用の準備で計画を立てたりで毎日が忙しかったようだ。記念局の運用は長期になるため、香港在住のアマチュア局にもVR2BLEEの運用のヘルプを依頼したようであるが、多くのアマチュア局の賛同が得られず苦労したとのことである。それでも数人がヘルプしてくれたおかげで多くの局と交信することができたと喜んでいた。


資料2 運用中の Mr. Igor (VR2ZQZ)

Bruce Lee Memorial Station

特別記念局VR2BLEEは、2021年2月23日から6か月間、7~50MHzのバンドで運用がなされた。ブルース・リー生誕80周年記念ということで実はVR80〇〇〇〇といったコールサインの採用も検討されたそうだが、香港ではVR2以外のコールサインの割り当てはなく、VR80のコールサインの割り当てとなると中国本土、北京への申請となるらしい。結果的には、VR2BLEEとなったがブルース・リーを回想させるに相応しいメモリアルコールサインとなった。

一方アマチュア無線以外では、香港ではブルース・リー記念日が盛大に祝われたとのことである。彼は、香港では唯一、国民みんなに愛されている人物で、貧乏人と金持ち、親中派と民主派、若者と老人、中国人と西洋人、香港と海外を結びつけているとのことである。香港の歴史上、ブルース・リーの人気に迫るような人物は他にいないとのMr. Igorのコメントだ。

VR2BLEEの運用

VR2BLEEは、香港のクラブ局であるVR2CS(1555th Kowloon Group)のメンバーで、Mr. Igor(VR2ZQZ)とBenedict Chak(VR2VVR)とが中心となり運用を実現させた。John Tsui(VR2GP)も何度かCWの運用をヘルプしてくれたようだが、大半はVR2ZQZ(Mr. Igor)が運用したとコメントしていた。

全バンドにおけるトータル交信局数は約11,000局。CWを中心にSSBも交えて108のDXCCと交信し、日本との交信は全バンドで約8,000局に及んだそうだ。運用はEsの発生する夏場とも重なり、6mではSSB、CWを含む約1,200局のJAとの交信があり、運用期間中のロシアDXコンテストでは、15m LPで2位の成績を収めるほどであった。

VR2BLEE Award(資料3左)は232局に発行された。そのほとんどがJA局であったとのことだ。VR2BLEEの運用には、氏の夫人(Titi/ YD2AAD)も長時間連続運用する彼に食事等のサービスで陰ながらサポートを行った。


資料3 左: VR2BLEEによるブルース・リー生誕80周年記念アワード(サイズ:A4)
右: ブルース・リー生誕80周年を記念したVR2BLEEを宣伝するポスター(サイズ:A3)


資料4 VR2ZQZの個人QSLカードと今回のVR2BLEEの記念QSLカード

VR2BLEEのシャックとアンテナ

VR2BLEEの運用は主に香港郊外の丘の上にあるMr. Igorのシャック(資料5)で行われた。シャックには40mと20mの2本のワイヤーアンテナを設置しており、指向性はJAに向いている。エレメントには7MHz、10MHz、14MHz、それに21MHz用のトラップも取り付けておりオールバンドでの運用が可能だ。ATU経由でワークバンドの18MHz 24MHzそれに28MHzにも対応しており、各バンドでJA局に強力な信号を送っている。


資料5 山の上のシャック。アンテナは50MHz用9エレ八木

また、24/28MHz用デュアルバンド八木、28MHz用8エレモノバンド八木も合わせて使用したという。


資料6 使用したアンテナ群
左: 24MHz(3エレ)/28MHz(7エレ)用八木アンテナ(ブーム長:14m)
右: 28MHz用8エレ八木アンテナ(ブーム長:18m)

QSP from Mr. Igor

Mr. Igorは多くのJA局に呼んでいただいたことに感謝していると言っていた。QSLカードのリクエストは、QRZ.COMのVR2BLEEのページ(https://www.qrz.com/lookup/VR2BLEE)にも記載されているので参考にしてほしい。また、ブルース・リーの記念切手は、残念ながらすべて今回の記念局のQSLカードの発行等に使い切ったらしく、今後は通常の切手になってしまうとのQSPがあった。さらに、世界各国からQSLカードのリクエストが来ており、急いで対応しているものの発送には2か月ぐらい掛かっているので気長に待ってほしいとのQSPもあった。

最後に

Mr. Igorは、このイベントの推進に個人的にたいへん協力してくれたJE2EHP(堤 善昭氏)に感謝したいと言っていた。また、VR2BLEE局のQSLカード交換に資金を提供してくれた多くのJA局のスポンサーにも同様に感謝すると併せてコメントしていた。

最後に「VR90BLEE」の可能性は? と尋ねたところ、「個人的なこともいろいろあるので何とも言えない。でも、おそらくはないでしょう。」との返事があった。期間中JA各局のみならず世界の多くの各局へのサービスに感謝いたします。TU

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