Monthly FB NEWS 月刊FBニュース 月刊FBニュースはアマチュア無線の電子WEBマガジン。ベテランから入門まで、楽しく役立つ情報が満載です。

FBのトレビア

第三十四回 FM放送受信用のQFHアンテナを作ってみた


Dr. FB

電波による地震予報

ずいぶん前の話しですが、1995年1月17日に発生した「平成7年(1995年)兵庫県南部地震」、通称「阪神・淡路大震災」の際に、さまざまな天空の発光現象が報告されていることを何かの雑誌で読んだことがあります。地震の発生の前後に一瞬空が明るく光ったとか、天空が青白くなったといったような現象です。多くの研究者は、この天空の発光現象は、地震発生の前後に電磁波や電離層に作用する何かが発生し、それがこの現象を発生させているとの見方をされています。中でも彗星や小惑星の発見で有名な串田嘉男氏も山梨県北斗市にある八ヶ岳南麓天文台にて電波を使った地震予報の研究に挑んでおられます。(図1)

その八ヶ岳南麓天文台を訪問した際に見たのは、FM放送用の八木アンテナが敷地内のあちこちに天空にビームを向けてFM放送を受信している光景でした。FM放送の電波はVHFですから概ね見通し距離の伝搬であり、例えば大阪や東京から北海道や九州のFM放送は異常伝搬が発生しない限り通常では受信できません。串田氏は、通常では受信できない放送局の周波数にチューナーの周波数を合わせて24時間常時受信状態を観測されています。通常では受信できない周波数が受信できるということは、SSN(Sun Spot Number)の増加による電離層の変化も考えられますが、地震の前兆による何らかの影響で電離層に変化をもたらし、その変化が異常伝搬につながっていることも考えられます。


図1 串田嘉男氏執筆の地震予報に関する書籍

天空に向けた八木アンテナ

地震予報の研究はもとより、天空にビームを向けた八木アンテナにも興味を持ったことから、FM放送用のQFHアンテナの製作にチャレンジした友人を取材しました。QFHアンテナは、Quadrifilar Helical antennaの略で、元々はアメリカの気象衛星NOAAの受信用に開発されたものです。


図2 (左)ナガラ電子工業のQFHアンテナ
(右)天空に向けられたFM用八木アンテナ-八ヶ岳南麓天文台のFM電波(VHF帯域)モニター観測による地震予報の資料より抜粋

指向特性は株式会社ナガラ電子工業のサイトに掲載された情報によると図3のようになっています。つまり、真上から見た水平方向のビームは、ホイップアンテナと同じような円形をしており、真横から見た垂直方向のビームは、底面付近にはサイドローブが出ていますが半円球の形をしています。気象衛星やGPSなど、高い仰角から放射される電波の受信にはピッタリのアンテナといえます。


図3 QFH144(ナガラ電子工業)の真横から見たビームパターン

FM放送用QFHアンテナの性能

完成したアンテナはアマチュア用ではないため送信の実運用はできませんが、測定器を使い周波数に対するSWRとインピーダンスを簡単に測定しました。


図4 完成したFM放送受信用のQFHアンテナ

アンテナの周波数に対するSWR特性を示したものが図5、図6です。図5では、87.52MHzのときにSWRは最小で1.5を示しているのが分かります。FM放送の上限の周波数付近になるとSWRは3を超えていますが、受信専用と考えるとFM放送の帯域、76.1~94.9MHzで、SWRが3.5までに収まっているのはよくできていると思います。


図5 周波数に対するSWR特性

製作されたアンテナの特性は非常にクリチカルでした。アンテナの給電点から同軸ケーブルを使ってマッチングをとっていますが、その同軸ケーブルの位置によってもSWRは変化しました。図5、図6で示したグラフに多少の差が出ているのはそのためです。図6の右側の写真は、アマチュアにはおなじみのアンテナアナライザーで測定したSWRとインピーダンスです。82.333MHzのときのインピーダンスZ=R+jXの抵抗分R=50Ω、リアクタンス分X=8Ωと限りなくリアクタンス分が0Ωに近づいていることが分かります。


図6 SWRとインピーダンスの変化

QFHアンテナの構造と製作

各エレメントの長さや直径は以下のサイトの自動計算にて算出し、最終は出来上がりを微調整して製作されています。
http://www.jcoppens.com/ant/qfh/calc.en.php
アンテナエレメントは、直径6mmの銅パイプを使って製作されています。アンテナの高さは1mを超えており、直径も50cm以上あることから、銅パイプを使用しているとはいえ自立でも強度的に問題があります。製作には銅パイプを支える段ボール製のコアが使われています。(図7)


図7 段ボールをアンテナのコアとして組み立て自立させる


図8 各部の構造


図9 製作したQFHアンテナの構造

完成後の受信テスト

IC-705にロッドアンテナと製作したQFHアンテナを接続し、FM放送局の電波を受信し受信テストを行いました。図10上段のようにアンテナを垂直に立てた状態の接続では両者のSメーターによるレベル差は出ませんでした。下段のように両者のアンテナを倒すと、ロッドアンテナには大きな指向性が発生し、ロッドアンテナの先端が放送局のアンテナの方向に向けるとSメーターの振れは著しく低下したのに対し、QFHアンテナはどの方向に向けてもほぼ同じように強く受信できました。理論通りの指向性が出ています。

電波による地震発生の予兆観測には使っていませんが、このQFHアンテナの指向性が天空を向いていることからこの観測には有効であると考えています。


図10 ロッドアンテナとQFHアンテナの指向性の差を実験

FBDX

FBのトレビア バックナンバー

2022年2月号トップへ戻る

次号は 8月 15日(月) に公開予定

サイトのご利用について

©2022 月刊FBニュース編集部 All Rights Reserved. 発行元: 月刊FBニュース編集部