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ジャンク堂

第7回 オペアンプ入門(7)
実践編: Bird43のピークパワー計(もどき)化計画

JH3NRV 松尾信一


ジャンク堂 番外編 “今日のジャンク”

今回はいきなり番外編からスタートします。今日のジャンクは写真のBird43(バード43)というパワー計です。


アマチュア無線界では泣く子も黙る!?と言われるBirdのパワー計ですが、ジャンク扱いでの登場です。エレメント(検波器)を含めてヤフオクで入手したものです。

なぜジャンクとして登場したかというと、この43は私にはイマイチ使えなかったからです。その理由はパワー計として測定値が少し甘い(と思われる)からです。最初は250HというHF/max250Wのエレメントだけしかありませんでした。私のリグの最大出力が50Wなので、250Hでは読み取り精度が悪い領域で使っているためと思い、懲りもせずヤフオクで100Hというmax100Wのエレメントを入手しました。でも、やっぱり指示が少し甘かったのです。これでは測定器として使うには信頼がおけないと感じました。

もっとも、甘いといっても当局が標準としているパワー計や手持ちのSWR計などと比較した“多数決”の上でのことで、絶対精度はどうかはわかりません。標準としているパワー計も校正したものではなく、後で述べるように多分に気分的な要素で標準としているだけです。Bird43は通過型の上にエレメントを交換するといろいろな周波数やパワーが測定できるので、精度を求めるのは酷なことかも知れません。(スペックではフルスケールの±5%の精度らしいですが) それにアマチュア的には高価なようでも測定器の世界ではとても安価な部類です。

もう一つ使えない理由(実はこれが主な理由)ですが、メーターが重たいのです。先の理由と逆のことをいっていますが、SSBで使うと本当にメーターが振れないのです。メーターを使ったパワー計はSSBで使うとメーターの振れが悪いことが普通ですが、このパワー計のメーターはかなり鈍重に思います。そのため、SSBではメーターの振れをみてもパワーがフルに出ているかどうか、感触が分からないのでオンエア中のパワーモニターにもいまひとつ使えません。

余談ですが、オーディオ機器に使われるVUメーターは正式なものではレベルだけなくメーターの応答時間(アタックタイム)まで規定されているそうです。VU計はピークを指示するものではありませんが、慣れるとおおむねのピーク値が判断できると聞きます。

もちろん、これらの不満点は私の持っている43だけかも知れません。ほかに比較する43がないので、この1台をもってBird43はダメと言うつもりはありませんが、私の43はパワー計としての精度はかなり怪しいと思っています。

そんなわけで、このBird43は出番がなくお蔵入り(ジャンク扱い)となっていました。

ちなみに当局が標準としているパワー計ですが、43を貶(けな)したにもかかわらず同じBird社の4410というモノで、やはり通過型です。4410にはレンジ切り替えスイッチがあり、一つのエレメントで広範囲なパワーが測定できるようになっています。1kWのエレメントがあれば、フルスケールを1kWから1Wまで切り替えられます。このように多芸なのでBird43より更に精度を求めるのが酷なように思われますが、4410を信用したくなる理由があります。それは古い手持ちのSWR計などとの比較や無線機のフルパワーの時の指示値から、信頼してもよい程度の値を示します。またレンジを切り替えたときのつじつまが良くあっています。例えば、300Wレンジで100Wの指示のときにレンジを100Wに切り替えると見事にフルスケールの100Wの指示になります。もうひとつは、28MHzのパワーを私の手元の2~30MHzのエレメントと25~80MHzのエレメントのどちらで測定してもほぼ同じ指示値になります。絶対値で校正しているわけではないのですが、心理的に信頼感を持たせてくれます。スペック上の精度は43と同じくフルスケールで±5%となっていますが、両者の指示値には開きがあります。

パワーを測る測定器には1万円前後のSWR計から数十万円する測定器までありますが、精度を求めると相当高価なものになり、通常のアマチュアが手を出すには躊躇されます。バード社の43や4410はフルスケールの5%とカタログに書かれていますが、その程度の精度でも普通のSWR計などに比べてずいぶんと高価です。また、中古品を手にいれると今回の私のようにカタログスペックすら満足してない不良品では? と疑心暗鬼になります。

なので、アマチュア的にはパワー計の精度は身の回りにある、もっとも自分が信頼できそうなものを信じることが吉と思います。また、最近のアマチュア用無線機は良く調整されているようで、良いダミーロードを接続したときの出力値はそう大きくズレていませんから、逆にパワー計の精度の目安になります。(もっとも、私が確認したのはアイコム製HF無線機だけですが)

そのような経緯と思い込みから我が家の標準パワー計になった4410ですが、こいつは006Pという9Vの電池が必要という難点があります。おまけに電源を切り忘れると数日で電池交換が必要になります。電池消耗が早くオンエア時のパワーのモニターなど、常用する用途には向いていません。そして、たまに使うとよく電源を切り忘れるのです。2~3回も切り忘れると電池交換が必要になります。これには閉口します。そのため電池の代わりにACアダプタを使えるようにするか、単三電池とDC-DCコンバータで9Vを作ることも考えたのですが、その当時は物欲がフツフツとしていたようで電池の要らない43を買っちまえとなってしまいました。今、思えば国産のSWRパワー計でも買っておけば良かったと後悔しています。

そんなわけで、パワー計としてもオンエア時の出力モニターとしてもイマイチのためにジャンク扱いとなった我が家のBird43です。しかし、このオペアンプ入門のネタを考えていた昨年末にオペアンプを使って43を復活させることを思いつきました。果たして、我が家のBird43はジャンクから現用品へ復活となるでしょうか? 乞うご期待です。



オペアンプ入門(7)
【実践編: Bird43のピークパワー計(もどき)化計画】

ということで、番外編から始まったジャンク堂ですが、オペアンプ入門の第7回目は「実践編」と題してBird43のピークパワー計化にトライします。オペアンプについては、まだまだ説明すべき内容がありますが、このあたりで一息ついて工作の時間も織り交ぜようと思います。

Bird43については色々なところでピークパワー計にするユニットの販売がされているようですし、そもそもBird43を持っておられる方もそう多く無いと思うので、単なる製作記事ではあまり役に立たないかも知れません。なので、あくまでオペアンプ入門の一部として回路の動作原理や設計手順を中心に書き進めたいと思います。

さて、今回はピークパワー計化に向けての準備/構想編になります。

基本回路: ピークホールド回路

SSBのように音声の大きさとともに変動する出力パワーのピークをメーターで読み取るためにはピーク値を保持(ホールド)する必要があります。この目的の回路をピークホールド回路といい、入力された電圧の最大値を保持する回路です。

良く用いられるピークホールドの基本回路は、下図のようにダイオードを経由してコンデンサに電荷(電圧)を蓄える回路になります。ダイオードは入力電圧が上がったときだけコンデンサに電荷をチャージして、下がったときにはコンデンサの電荷が放電されないようにするためにあります。


図のバッファ回路1はコンデンサに素早く電荷をチャージするために出力インピーダンスが低い必要があります。バッファ回路2はコンデンサにチャージされた電荷が放電しないように高入力インピーダンスの回路が必要です。通常のピークホールド回路では図のようにリセット(コンデンサの電荷を放電する)のためのスイッチを設けてあり、リセットするまで最大の電圧を保持するようになっています。一度リセットされると次のピーク電圧を保持します。

よく世間でみられるピークパワー計では下図のように、リセットするスイッチの代わりに高抵抗を入れてコンデンサの電荷を抵抗でゆっくりと放電させるようにしています。瞬時のピーク電圧を保持するために充電(アタック)が速く、放電(ディケイ)はゆっくり、という特性にしています。よく言われるファーストアタック/スローディケイ(Fast Attack Slow Decay)という特性です。


これらの回路に使用するバッファ回路には入力インピーダンスが高く、出力インピーダンスが低いオペアンプがうってつけになります。ただ、この回路の難点はコンデンサに電荷をチャージする経路のダイオードにあります。ダイオードにはシリコンで約0.6Vの接合電圧があるためにダイオードの接合電圧より低い電圧のピーク値は検出できません。仮にショットキータイプなどの低接合電圧のダイオードを用いても0.2V程度の接合電圧は残ります。

そこで、これもオペアンプ回路の特徴であるNFBを用いてこの問題を回避することができます。図がその基本回路で、ダイオードをRfと直列に入れます。


この回路では通常のRfに相当する帰還の抵抗が“Rf+ダイオードの抵抗値”になります。オペアンプの出力1の電圧がダイオードの接合電圧より低いとき、ダイオードの抵抗値が大きいために回路のゲインが大きくなります。出力1の電圧がダイオードの接合電圧以上になるとダイオードの抵抗値が小さくなりゲインが下がります。つまり、出力電圧によってゲインが変化します。このとき出力2の電圧をみるとダイオードの接合電圧が無いかのような出力が得られます。この様子をシミュレーションしたのが下のグラフです。


グラフは横軸が入力電圧で、縦軸が出力電圧です。オペアンプの出力Va(緑線)は入力に対して非直線ですが、出力Vc(青線)のほうは直線になっており、ダイオードの立ち上がりの非直線部分が見えなくなっています。

この特性はNFBの効果によって得られているため、このように動作するのはオペアンプにNFBが掛かる周波数までで、高周波には使えません。また、この回路では出力がプラス電圧のときはNFBが掛かりますが、マイナスの時はダイオードの一方向性によってNFBが掛からずオペアンプが最大ゲイン(開ループゲイン)で動作します。僅かでもマイナス電圧が入力されるとオペアンプの出力(Va)にはマイナス電源電圧に近い電圧が出力されてしまいますが、ダイオード(D1)によってVcの電圧は0Vとなります。

この回路はさきほどのファーストアタック/スローディケイのピーク検出回路のバッファ回路1にうってつけです。この場合、Rf(R2)が放電のための抵抗となります。

次のバッファ回路2ですがオペアンプの非反転増幅回路を採用すれば入力インピーダンスが高く、これもオペアンプがうってつけです。

以上からでき上がった基本回路は下図のようになります。先の説明ではなかったD2が入っていますが、この理由は別のところで触れます。世間で見られるピークパワー計の回路の多くはこの回路になっていると思います。


また、Rtも追加しています。これはCに電荷をチャージする(アタック)時の時定数となりますが、OPA1の出力にコンデンサを接続するので発振防止の意味もあります。

ピーク検出回路としてはCとRfが放電時定数(ディケイタイム)になります。通常、抵抗値はRf≫Rtに設定するのでRtの放電時定数に与える影響は少ないとみなせます。

ここで、充放電の時定数τは τ=R・C で求まります。しかし、このτは下の図のように中途半端(約63%)な電圧のときの時間になるので、τを3倍した時間が最終的な電圧に近く(95%)なります。


図は充電のときのグラフですが放電の時もグラフの形が上下反対になるだけで同じ関係になります。従って、メーターの振れが100%から5%まで下がる時間(ディケイタイム)を5秒にする場合は3τ=5秒となるようにCとRの値を決めます。

さて、OPA2は入力インピーダンスが高いバッファの役目をするのでゲイン1のボルテージフォロアとします。このOPA2の負荷となるのはメーターですが、メーターの振れ(感度)調整を行うための抵抗(半固定)が直列に入るので発振の可能性はまずありません。

以上で、基本回路が決まりました。次にその他の要求事項を調査/決定します。

Bird43のピークパワー計(もどき)化の基本仕様

設計をする場合は幾つかの基本的な仕様を決めて、それに沿うように回路や定数を決めて行きます。今回の場合は大雑把ですが以下のことを最初に決めます。
 (1)入力と出力の仕様/条件(もっとも重要です)
 (2)使い勝手などの機能
 (3)電源の仕様(これは使い勝手の仕様にもなります)

(1)入力と出力の仕様
Bird43はエレメント(検波器)の出力に直接高感度電流計を接続しているだけのシンプルな回路となっています。今回はBird43のエレメント(検波器)の出力とメーターの間にピーク検出回路を設けるのでその入力の仕様(電圧範囲)は検波器の出力電圧となり、出力の仕様はメーターの感度/抵抗値から決まります。

そこで、私のBird43のメーターの振れと検波電圧(メーターの電圧)の関係を調べました。以下の表がそれになります。右にメーターの目盛を載せていますが、一番下の目盛を読んでいます。


この測定からフルスケール時の検波器の出力電圧が40mV程度であることが分かりました。ただ、私の43はメーターが振れすぎるようなので正常なものとは少し電圧が異なるかも知れません。

なお、この検波器の出力電圧はメーターを接続した状態での値です。Bird43のメーターは公称30μA/フルスケールとなっているので今回の測定値から計算すると、メーターの抵抗値は約1.37kΩとなります。従って、ピーク検出回路の入力インピーダンスもこの抵抗値に合わせておく必要があります。

次にピーク検出回路の出力電圧ですが、元々のメーターの入力電圧が40mV程度ですから、半固定ボリュームでメーターの振れの調整することを考えてメーター負荷(1.37kΩ)の状態で100mV程度は出力できるように考えます。そのため、ピーク検出回路内でゲインを持たせるように設計します。

・オフセット調整回路
検波器の出力電圧がかなり低いことが分かりましたので、一般的なオペアンプのオフセット電圧(数mV程度)の影響を考慮する必要が出てきました。入力電圧が最大で40mVの場合、例えばオペアンプに3mVのオフセット電圧があると無信号でもメーターがフルスケールの7.5%くらい振ってしまいます。このため、オフセット電圧のキャンセル(調整)は必須となります。

もしオペアンプの入力電圧の最大値が1V程度であれば、オフセット電圧の3mVは入力に対して0.3%なのでメーターの振れ(浮き)としても無視できます。しかし、今回の入力電圧のレベルではオフセット電圧の影響は無視できません。

オフセット調整が必要であることから、できればオフセット調整端子のついたオペアンプを使いたいところです。オフセット調整端子がない場合、オフセット調整をオペアンプの入力端子でおこなうことになります。その場合、調整電圧は0Vを中心にプラスとマイナスのどちらにでも調整できるようにする必要があります。オフセット電圧はプラス/マイナスのどちらになるかは個々のオペアンプで異なるためです。従ってオフセット調整を入力端子でおこなうことになると、電源は必然的にプラス/マイナスの両電源になります。

オフセット調整が必要と判断したことで、オペアンプの選定や回路の設計方針に大きな影響が出てきました。

(2)要求機能
次に使い勝手などを中心に機能面の仕様を考えます。
・ピーク検出モードとノーマルモード(43オリジナル状態)を切り替えられるようにする。
まず、電源スイッチとピーク検出回路を通す/スルーするスイッチを設けます。電源OFFのときはピーク検出回路をスルーにして、ノーマルのBird43として使用できるようにしたいと思います。

・電源ON表示のランプ(LED)を付ける
次に、電源ONを表すランプ(LED)を付けます。Bird4410ではレンジ切り替えスイッチが電源スイッチを兼ねているのですがランプなどがなく、薄暗い部屋では少し離れるとスイッチの位置(電源のON/OFF)がよくわかりません。ランプのように能動的に人間の目に訴えるようにすると、少しは電源の切り忘れ防止になるのではないかと思います。

・アタックタイムとディケイタイム
日頃見慣れているSメーターのような振れ感にしたいところです。そうすると、ディケイタイム(メーターの振れがフルスケールから0になるまでの時間)は3~5秒くらいになると思います。アタックタイムはできれば音声のエンベロープにきっちりと追従して欲しいのですが、機械的なアナログメーターを使う場合はメーターの振れの応答特性に大きく左右されます。

アナログメーターでは瞬時に電圧を加えてもメーターがその値を指示するまでに時間遅れがあります。またメーターによっては最大値付近でオーバーシュートするものもあり、その特性は様々です。ピーク検出回路上では音声のエンベロープに追従できるアタックタイムを実現できても、大抵はメーターの立ち上がり時間が追いつきません。本当にピークパワーを表示させようとすると、メーターの振れが正しい値を指示するまでピーク電圧を保持する必要があります。

このピーク電圧を保持する特性を持たせたものをハング(Hang)型といい、通常のファーストアタックスローディケイ型との違いを下の図に示します。ハング型は左の図で、通常のファーストアタック/スローディケイ型は右の図になります。赤い線はピーク検出回路の出力電圧で、青い線はメーターの振れの遅れを表しています。


多くのピークパワー計ではディケイタイムを長くして、メーターがピーク値を指示するまで電圧の低下を少なくするようにしていますが、パルス状の入力1発でメーターが0の状態から正しいピーク値まできちんと追従するものは少ないように思います。これは、メーターを使う限りある程度しかたないことかも知れません。ただ、音声やCW波形が入力の場合は短時間に何度もピーク電圧が入力されるので、だんだんとピーク値を指示するようになります。

単発のパルスのような入力でも本当のピークをメーターに指示させるためにはハング型を採用すべきですが回路が少々複雑になるので今回は普通のファーストアタック/スローディケイ型でお茶を濁します。

今回のタイトルがピークパワー計(もどき)としているのは、ハング回路を使用しない、通常のファーストアタック/スローディケイの回路で設計するためです。動作としては一般的なピークパワー計と呼ばれているものと変わりないと思います。

(3)電源の仕様
最後に電源の仕様を決めます。さきほど、オフセット調整を設ける話しをしましたが、選定するオペアンプによって単電源で済むか±両電源にするか決まります。

また、電源で私が個人的に重要視したいことは入手しやすい単3電池を使うことで、使用本数もなるべく少なくしたいと思います。できれば単3電池1本で動かしたいところですが、普通のオペアンプでは単3電池1本で動かすのは無理なようです。DC-DCコンバータを併用することも考えられますが、電池の持ちも考えて単3電池2本で妥協します。次に電池の種類として乾電池だけでなく、ニッケル水素電池も使いたいと思います。そうすると、電源電圧は2Vから3.3V程度までの範囲で回路が安定動作する必要があります。乾電池2本だけであれば、初期電圧の3.3V程度から終止電圧は一応2.8V程度までとできますが、ニッケル水素電池(公称1.2V)2本では初期電圧で2.6V程度、終止電圧では2V程度となります。

次に電池の持ちですが、できれば電源を切り忘れても1か月程度は持ってほしいと思います。仮にニッケル水素電池の容量を2000mAとすると、消費電流が2.7mAであれば電源を入れっぱなしで30日持ちます。少し余裕を持たせたいのでアバウトですが消費電流は2mA程度を目標にしたいと思います。電源を切り忘れなければ数か月は持つことになります。

全体の概略ブロック図

ノーマル状態とピーク検出状態を切り替えるために、概略のブロック図は以下のようになります。この後に出て来ますが、採用するオペアンプは手持ちの都合でオフセット端子のないものを使うので±両電源で考えます。


当初は全ての切り替えを一つのスイッチで行うように考えたのですが±電源になると4連のトグルスイッチが必要となることから、電源とノーマル/ピークの切り替えスイッチを別々にしました。4連のトグルスイッチの手持ちが無かったことと、買うにしても結構高価なためです。なお、2つのスイッチを並べて配置することで1本の指で両方を同時に切り替えができるようにします。また、電源ONを表示するLEDは当初、±電源ラインの両端に入れる予定でしたが事情により回路の一部に組み込んでいます。

主要部品(オペアンプ)の選択

以上の要求仕様から主要部品となるオペアンプを選びます。電源をニッケル水素電池2本からとしたので電源電圧が2V程度から動作するオペアンプが必要です。そうすると必然的にCMOS型のオペアンプから選択することになります。バイポーラ型のLM358もこのような目的には良いのですが電源電圧が3V以上必要なのでニッケル水素電池2本では少し電圧が不足します。もし3本以上であれば、LM358はコスト的にも良い選択になると思います。

さて、CMOS型のオペアンプからの選択ですが、実は手持ちの都合で悩むこともなくJRCのNJU7043となりました。NJU7043はそのスペックから色々な用途に使えそうなのでストックしておいたもので、ここで出番となりました。(私の都合で今回の製作は全て手持ちの部品で賄うように考えています。なお、NJU7043は比較的安価なオペアンプです)

CMOS型ではNJU7001などはオフセット調整端子を持っており、電源電圧も単電源1Vから動作するので一見、魅力的に思われますが出力電流が10μA程度しか取れないようで、流石にメーターを駆動できそうにありません。他にも良いものがあると思いますが手持ち部品最優先でNJU7043となりました。

NJU7043の概要は以下のとおりです。(データシートからの引用)


電源電圧が1.8Vから使え、消費電流もオペアンプ単体では2ユニット使用でも600μAと低消費電流であることが魅力です。ただし入力オフセット電圧は最大で10mVもあります。

さて、オペアンプの選定まで終わったところで今回は終了です。次回は先の基本回路にオフセット調整回路を追加する検討を行い、全体回路図の完成を目指します。

補足: 理想ダイオード回路

ピーク検出回路でダイオードの接合電圧を打ち消す回路を紹介しましたが、少しだけこの回路の補足をします。少々、分かりづらい内容ですので最後に持ってきました。読み飛ばして頂いても結構です。

今回のピーク検出回路ではオペアンプの教科書などに出てくる理想ダイオードによる整流回路と基本的に同じ回路になっています。ただし、一般的に理想ダイオードによる整流回路は下のグラフの回路のようにマイナス入力端子に信号を入力し、反転増幅回路として動作させます。また、ダイオードD2も追加されています。D2があることで、オペアンプとしては出力の電圧がプラスでもマイナスでも負帰還が掛かります。


交流入力(緑線)に対して出力は反転していますが、Out1c(青線)が理想ダイオードとしての出力になります。Out1a(赤線)はオペアンプの出力端子の波形となります。整流回路ですから、出力(ここではOut1c)にはマイナス電圧が出ないようになっています。

今回のピーク検出回路ではプラス入力端子に電圧を入力しており、非反転増幅回路になります。下のグラフの回路ではピーク検出回路の説明ではなかったD2が入っており、出力電圧がプラスでもマイナスでも負帰還が掛かるようにしています。下のグラフはこの回路の入力Vin(緑線)に対する、出力Out1c(青線)とOut1a(赤線)です。


この場合、出力(Out1c)にマイナス電圧が出てきており、整流回路とはいえなくなっています。これは、D2によって出力がマイナス電圧のときでも負帰還が掛かり、マイナス入力端子の電圧はプラス入力端子と同じになります。(D2で出力電圧に引っ張られるともいえます) このマイナス入力端子の電圧の動きがRf(R2)を経由して出力に現れます。従って、Rf(R2)の抵抗値やOut1cに接続する負荷の抵抗値などでOut1cに現れるマイナスの電圧レベルが変わります。

ここでピーク検出回路の説明のようにD2に相当するダイオードがない状態を考えます。この場合、出力電圧がマイナスのときは負帰還が掛からず、オペアンプは最大ゲイン(開ループゲイン)で動作し、出力電圧はマイナス電源に近い状態になります。負帰還が掛からないことでマイナス入力端子がマイナス電圧になることもありません。この状態では出力にあるダイオードD1によってOut1cには(D1の漏れ電流がなければ)マイナス電圧が出てきません。なお、入力電圧がプラスのときは出力(Out1a、Out1cとも)電圧がプラスになります。この一連の動作から非反転増幅の場合はD2が無い場合に整流回路の動作となります。ただ、D2がない場合はオペアンプの出力がマイナス電圧のときに負帰還が掛からない状態となるため、オペアンプの動作としてはイレギュラーともいえます。(コンパレーター動作になる)

今回のピーク検出回路は入力電圧がプラス側のみで整流回路としての動作は必要ないことと、オフセット調整のこともありD2を入れてオペアンプとしてのセオリーに沿った動作にしています。

また、ダイオードを使用せずFETやアナログスイッチを使って理想ダイオードやピーク検出回路を実現する方法もありますが回路が少々複雑なために今回は採用していません。

それでは73&88!

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