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海外運用の先駆者達 ~20世紀に海外でアマチュア無線を運用した日本人達~

その122 アフリカのコモロで国際的なDXペディション 2001年(2)
「あの人は今(第47回)」JM1NCA太田謙氏

JA3AER 荒川泰蔵

2023年5月1日掲載

アフリカのコモロで国際的なDXペディション

今回は2001年の2回目で、北米、ヨーロッパ、アフリカです。この年は英国のCDXC(Chiltern DX Club)の有志が結成したDXペディションを目的とする団体「The Five Star DXers Association」が主催して、アフリカのコモロで9ケ国から28人のオペレーターが参加する国際的なDXペディションが行われ、筆者も参加させて頂きました(写真1)。尚、今月の「あの人は今(第47回)」は、JM1NCA太田謙氏の紹介です。


写真1. コモロDXペディションD68Cに、9ケ国から参加したメンバー達。

2001年 (アンギラ VP2E, VP2EMS)

JA3USA島本正敬氏は、カリブ海のアンギラで、コンテスト局VP2Eと、個人コールのVP2EMSを運用した経験をレポートしてくれました(写真2及び3)。「VP2EはK5NB(当時はKC5EA)が所有する別荘に設置された局で、40m級のタワーが複数本あり、20m、15m、10mは多段スタックというスーパーコンテスト局として設備されています。K5NBの自家用ジェットでタワーを始め、殆どの機材は自分で運んできていたようです。そんなK5NBが、2001年にVP2EがCQ WW PhoneでMulti-Multiの北米記録スコアを出そうと計画して、オペレーターはテキサス中心でしたが、全米から集めた際、JAもということで声がかかりました。A52Aで一緒だったK4UEEもその中の一人です。結果的にCQ WW Phoneの北米記録スコアを達成することができました。


写真2. (左)機窓からの航空写真。右下方の白い建物がK5NBの別荘で、タワーが数本見えます。最も高いのは確か60m。写真上部のカリブ海を見下ろす、アンギラで最も高い丘の上にあります。
(右)VP2EMS島本正敬氏の免許状。

コンテストの準備を含めると一週間程度の滞在だったと記憶していますが、準備期間、日中はアンテナの増設等の作業、夜は個人コールVP2EMSで運用をしていました。この免許はVP2Eが私の米国の免許を基に取得してくれていたので、取得方法は判らない。米の免許を基にしているのに免許人名がMacとなっていて変。CQ WW Phoneの準備中でしたから運用時間は毎日短時間でした。7MHzのアンテナは覚えていませんが、14MHzと21MHzは6エレの4段スタックだったと思います。


写真3. (左)VP2EMSのQSLカード。(中央)コンテスト前にVP2EMSを運用する島本正敬氏。(右)コンテストを終えてデッキでくつろぐメンバー達。

彼の別荘には料理人も居て、毎日大変なご馳走だったと記憶しています。ここでの結果が影響してか、翌年のCQ WW PhoneではIH9Pを運用することになりました。こちらは2002年のCQ WW Phone Multi-Multiの世界トップでした。コンテストは準備からの共同生活をしますので、仲間意識が大変育つように思います。IH9Pの仲間の一部と、後年アフリカへのDXペディションに一緒することにも繫がりました。(2022年5月記)」

2001年 (英国 M0NAO)

JM1ISX立石尚久氏は、英国で受験しM0NAOの免許を得て開局した経験を、アンケートで寄せてくれました。「住友商事の英国派遣員として1996年より英国滞在中です。2001年5月のRAE及び6月のRSGBモールス試験合格を経て、先日M0NAOとして開局しました。JAでの運用は仕事の関係で1989年頃よりQRT中でしたので、特に12WPMのモールステストについては苦労しました。現在シャック設営の段階ですが、住居があいにく住宅密集地で、且つフラット(マンション)のグランドフロアーと最悪のコンディションであり、Class Aのベネフィットを享受することは難しそうです。MFJの20m QRP機(MFJ-9420X)と、2mHのモービルホイップで運用する予定です。在英5年超の現在、いつまでこの地に居られるか分かりませんが、可能な限りOn the airしていこうと思っています。(2001年7月記)」

2001年 (コモロ D68C)

JA3AER筆者は、コモロへのDXペディションに参加した時の事を記録していました(写真4~7)。「2001年2月9日から28日までコモロからD68Cのコールサインで大規模なDXペディションが行われ、16万を越えるQSOなど、過去の数々のDXペディション記録を更新する好成績をおさめました。私はこれに2月12日から17日までの6日間参加する機会を得ました。


写真4. (左上)D68Cの2つ折りQSLカードの表紙と、(左下)その内側。(右)D68Cの免許状。

アフリカ大陸とマダガスカル島に挟まれたコモロ諸島は4つの島(マヨッテ含む)から構成されていますが、今回はコモロ回教共和国(現在の国名はコモロ連合)の首都モロニ(Moroni)がある最も大きい島、グランドコモロ島の最北端のガラワビーチ(Le Galawa)からのQRVでした。アンテナやリグ等の機材3トンはコンテナで先に届いていたものの、2月7日から2日間の設営時は大雨でJA1RJU小笠原さん達先発隊は非常に苦労されたようです。


写真5. (左)パーティにて、左からJA3AER筆者、G3NUG, Nevilさん、JA1RJU小笠原一夫さん。
(右)D68Cを運用するJA1RJU小笠原一夫さん。

シャックはホテルの海岸沿いに建てられたバンガロー5棟を借り、1つを管理棟にあて4棟に合計10局のステーションを設置、その周辺の海岸に近いところに周波数毎に独立した各種アンテナを建てて、周波数やモードを変えての同時運用を可能としました。オペレーションは現地時間の0時から4時間刻みに6シフトで、バンドやモードを指定して運用する局(場所)をそれぞれのオペレーターに割り当てられました。私の場合は上記6日間で8シフト延べ32時間の運用でしたが、18MHzから28MHzまでの4バンドで約2,000局とQSOさせて頂きました。


写真6. (左)D68Cを運用するJA3AER筆者。
(右)海岸の近くに間隔を取って、バンド毎に建てられたHF帯のビームアンテナ。

今回の運用は総勢28名ですが全員が揃う日はありませんでした。参加者は9ケ国からの国際チームで、初日のQSOは16,500とFO0AAAの記録を破り、最初の1週間で92,728 QSOと過去のZL9CIの96,004 QSOに迫りました。そして2月16日にはその記録を破って10万QSOを達成、それを祝うパーティが開かれました。筆者は途中で帰国しましたが、最終的には45,345局と168,731 QSOの成績で、2月28日に無事終了したそうです。これは過去のDXペディションの最高記録だという事でした。(2001年4月記)」


写真7. (左)D68Cへの参加証と、(右)参加記念のトロフィー(コモロで使われているヨットの模型)。

2001年 (南アフリカ ZS6/GW0RTA)

JA3AER筆者は、コモロでのDXペディションからの帰途、南アフリカのヨハネスブルグに立ち寄り、G3NUG, Nevilleさんが紹介してくれた現地のハムに合う機会を得ました(写真8~10)。「2001年2月18日の午後コモロを発ちましたが、飛行便の都合で南アフリカのヨハネスブルグに2泊しました。翌19日の朝ZS6EZ, ChrisさんとZS6WB, Halさんが揃って空港近くのホテルまで迎えに来てくれ、朝食を一緒にした後、首都プレトリア郊外の彼らのシャックへ案内してくれました。


写真8. (左)贈呈したCQ誌を手に左からZS6WB, Halさんと、ZS6EZ, Chrisさん。(右)中華料理店にて左からZS6WB, Halさん、ZS6EZ, Chrisさん、ZS6/GW0RTA筆者。

ZS6EZ, Chrisさんはコンテスターとして活躍中ですし、ZS6WB, Halさんは6mに情熱を燃やしていて、アフリカで最初の6m DXCCを得たそうです。2人のシャックは隣り合わせで、一部のアンテナは切り替えて共同使用していますが、ZS6WB, Halさんはリタイアした余暇をZSのQSLビューローとして奉仕しています。ヨハネスブルグにある連盟事務所には専任者が1人しかいなく、とてもQSLカードまで手が回らないため、自宅の部屋に仕分け棚を作って手伝っているのだと話していました。


写真9. (左)ZS6WBのシャックにて、ポーズをとるHalさん。(右)ZSのQSLビューローとなっているZB6WB, Halさんの家の一室にて、ZS6EZ, ChrisさんとZB6WB, Halさん。

昼間はHalさんに首都プレトリアを案内して頂き、夕刻にはChrisさんのシャックから、CEPTライセンスに依るZS6/GW0RTAのコールサインでQRVさせて頂きました。この時刻、JAは既に深夜であったためか14MHzのSSBで数局としかQSO出来ませんでしたが、JAにビームを向けてのCQに多くのVU局が呼んでくれた他、AP2, A4, HS, FR等からも呼ばれ、約30局とQSOさせて頂きました。アフリカについては、以前カナリア諸島EA8からQRVしたことがあり、またコモロでD68Cを運用してきたばかりですが、島ではないアフリカ大陸からのQRVはこれが初めてでした。(2001年4月記)」


写真10. (左)ZS6EZ, Chrisさんのシャックにて、ZS6/GW0RTA筆者とChrisさん。(中央)高さ18mのタワーに上げたマルチバンド4エレ八木アンテナ。(右)ZS6/GW0RTAのQSLカード。

「あの人は今 (第47回)」JM1NCA太田謙氏

JM1NCA太田謙氏の近況は、既に2022年1月号(その106)の「あの人は今」で紹介させて頂きましたが、その後、勤務先の仕事の関係で4度目の海外勤務を命じられ、奥様のJM1SIN太田久美さんとご一緒に米国に赴任してW1NCAを運用する他、地元のクラブに入会して、メンバー達から学びながら有意義な活動を続けておられるご様子で、近況をお知らせ頂きましたので紹介させて頂きます(写真11~17)

最後の海外のお勤め: これまでアジアに慣れ親しんできたこともあり、最後のお勤めもアジアのどこかと期待していたところ、全く予期していなかった米国ロサンゼルス勤務を命ぜられ2022年1月に赴任となりました。これにより名古屋在勤時に娘と一緒に受けたFCCライセンスが遂に日の目を見る日がやってきました。


写真11. (左)サンペドロ港の夜景をモチーフにして米国で初めて作ったW1NCAのQSLカード。
(右)渡米最初の週末に登ったMt. Disappointment。

海外引越と自宅の選定: 今回で会社人生4回目の海外赴任。赴任時の引越し荷物に無線機やアンテナ機材を入れるのは毎度のことですが、いつも赴任先で思い通りにアンテナを上げられるかは心配の種です。幸いこれまでのシンガポール、インドではそれなりに飛びが期待できるアンテナを上げることが出来ましたが、今回は家族の安全を優先すると集合住宅を選択せざるをえず、当面HFのアンテナ建設はお預けとなりました。しかし、これが不幸中の幸いとなり予期しない当地での交友関係や新たな経験を得るきっかけとなりました。

クラブ局のお世話に: 自宅で無線ができないとなると、近隣のクラブ局でのオペレーションを検討することになりますが、いろいろとWebで検索した中でQueen Marry号のW6RO, あるいは八木系のアンテナが上がっており100年近い歴史のあるUnited Radio Amateur ClubのK6AAが候補となりました。しかし、W6ROはコロナ禍において2年以上閉館したままのようですので、自宅にも近いK6AAの門戸を叩くことにしました。早速入会申込書と会費の小切手を用意してクラブの会計担当N6HMR, Gary宅を訪問、即日入会を認めて頂きました。しかし、このK6AAのあるMaritime Museumもコロナの影響で閉館中とか。ただ、Garyが同時に役員を務められているNI6BBがあるBattleship IOWA Amateur Radio Associationを勧められ、同時入会することになりました。この両クラブに入会したことにより、それぞれ毎週火曜日と水曜日に行われる2mレピーターでのネットミーティングへの参加、毎月行われるランチミーティングやZoomでの月例ミーティングなど、予想外に多くのアクティビティーに参加することになり、交友関係が広がって当地での生活が幅広いものとなりました。NI6BBではアマチュア無線をさせてもらう以外に、艦内の軍用無線機の運用の仕方を教わったり、それら無線機のメンテナンスのお手伝いをさせて頂いたりとやることが盛りだくさん。皆さん職歴がその道のプロの方も多いため素人の私は学ぶことばかり。こんな有意義なことはありません。軍用無線機は最低4名いないと稼働できないことから年に数回、何等かの記念日の際に運用するのみとなります。設備の仕様上、通常のアマチュアバンドにも出られるのですが、こうした記念日には軍用周波数で運用が行われコールサインも特別なNEPMというコールサインが使われます。これに対し軍用周波数で送信の出来ないアマチュア局はアマチュアバンドで返答しますので自ずとクロスバンド交信となります。例えばNEPMの送信は14.375MHz、受信は14.325MHzといった設定です。通常アマチュア局の通信の相手方はアマチュア局という指定がありますので、そのままではクロスバンドでも交信できないこととなります。このため、この記念運用をする際には特別にFCCの許可を取って米国アマチュア局が軍用無線局と交信できるように段取りされています。しかし、これはFCCが管轄するアマチュア局に限って許可されているものなので、残念ながら日本の皆さんは無線局免許状に記載の通信の相手方を変更しない限りNEPM局とは交信が出来ません。


写真12. (左)NI6BB局のあるBattleship IOWA。(右)時にはイベントで、ハンバーガー屋に変身。


写真13. (左)Grey Radioをメンテナス中のK6LH, Cliffさんと、(右)K6SUJ, Orloさん。

一方、K6AAは当面クラブ局での運用ができないということで、もっぱらランチ会に参加する程度でしたが、以前より気になっていたField Day 2022(以下FDと省略)に、一緒に参加させてもらうことになりました。FDの主旨は通常のコンテストとは異なり、いかに広くアマチュア無線の広報に貢献するか、新しい技術を試したり、ソーラーパネルなど環境配慮をしたかなどがポイントになるものですが、ポイントで優勝者などを表彰したりするものではありません。小生はポイントが高くなるサテライトの担当をさせて頂きました。久しぶりのサテライト運用でしたが、特にISSなどのFMレピーター経由の交信は驚くほど多くの局が一度に送信しますので、下り信号が強力であるものの、なかなか交信できず苦労しました。

その後K6AAは2022年10月より開館しましたのでNI6BBと時間配分しながら両局を行き来して活動しております。NI6BBは一般見学者が入れない制限エリアにありますので外部の方と会うことはないのですが、K6AAはMaritime Museumの見学コースの一角にありますので、多数の見学者が無線局にも立ち寄られます。カウンターに設置したモールス練習機を珍しそうに触る方、小生がオペレートしている姿を興味深く見られる方、あるいはお子さんにタイタニック号の無線電信の話をされる方。いろいろな方が来られ対応しますので、オペレーション以外でも忙しい面があります。これら紆余曲折がありましたが、最大の成果は太平洋戦争における戦艦アイオワと戦艦大和建造の背景、ロサンゼルス港・ターミナルアイランドの日系人漁師村の歴史等々、新たな視点で歴史を再勉強させて頂けたことです。過去の海外駐在でも各地のクラブに所属しましたが、これほど急激に人的ネットワークが広がり、多くの新しい情報が入ってくる経験は初めてです。


写真14. (左)K6AA局のあるMaritime Museum。(右)日系人漁村の特別展風景。


写真15. (左)Maritime Museum内のクラブ局 K6AA。(右)持参したIC-7300を設置して運用。

ビンテージラジオ: 新たな経験のもう一つは、目下の楽しみであるビンテージラジオです。きっかけはNI6BBから参加したCX Contest(Classic Exchange Contest - ARRL主催のVintage Radioを使った局によるコンテスト)です。この時にQSOさせて頂いたKR7W, Richardさん(KR7W's Ham Radio Blog)のCWの信号が何とも懐かしい奇妙な音(多分1980年代以前から無線をやられていた方なら分かるはず)、かつ周波数がどんどんドリフトしていきます。どんなリグを使っているのかとQRZ.COMで確認すると見たこともないリグ、しかし何とも美しいではないですか。そこにあるのはいずれも1950年代のリグで、送信機の終段はOMさんたち哀愁の的807です。その後いろいろと勉強して、先ずは彼と同じHallicrafters SX-101Aを150ドルで購入。完動品ですが古いキャパシターなどは交換するなどの整備計画を現在策定中。続く送信機を毎月当地で行われるジャンク市で目下捜索中。恐らくこの時代の送信機は日本に持って帰っても新スプリアス規格では通らないと思いますが、当地駐在の記念の置物としては十分楽しめると思っています。


写真16. (左)初めて手に入れたビンテージラジオ、Hallicrafters SX-101A。
(右)マーカー用に入っている水晶発振子。

港町サンペドロ: ロサンゼルスはボストンやニューヨークに比べると新しい街というイメージで、歴史を感じる面が少ないように思うのですが、NI6BB, K6AAがあるサンペドロはこの地区で最も古い港町であり、ちょっと他とは趣が異なります。小生は新入社員の頃から長らく大阪港で仕事をしていたものですから余計に何か相通ずるものを感じてしまいます。NI6BBの会長でありK6AAの前会長のW6HB, Dougさんお気に入りのサンペドロのライブハウスには私たち夫婦も誘って頂き、かれこれ7,8回くらい行きました。年代に少しずれはあるものの、昔のカバーソングを生演奏で聞くのはなかなか良いものです。アメリカは広い国ですので行きたい所は沢山ありますが、サンペドロというローカルコミュニティーにどっぷり入り込むのも良いのかなと最近は思っています。ロサンゼルスを訪れる機会があれば、是非サンペドロの両無線局へもお立ち寄り下さい。(2023年2月記)」


写真17. (左)W6HB, Dougさんお勧めの、サンペトロのライブハウス。
(右)ライブハウスで、コメディショウを楽しむW6HB, DougさんとW1NCA太田謙氏。

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