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新・エレクトロニクス工作室

第39回 基板で作るアッテネータ その1

JE1UCI 冨川寿夫

2025年7月15日掲載

今までにアッテネータは何回も作りました。ほとんどが週刊BEACONで連載を書いていた頃と思います。実は以前からプリント基板を外注で作ろうと、KiCadにチャレンジしていました。その最初に作るのはステップアッテネータと決めていたのです。アッテネータは、いくら有っても良いし応用が広がるからです。また、基板を初めて作るには、ちょうど良い題材だと思います。という事で作った写真1のようなミニのステップアッテネータです。


写真1 このように基板を外注して作ったステップアッテネータ

KiCadで基板を作るには相当の時間がかかり、最近の数年はほとんど進捗しない状態でした。実は、この月刊FBニュースに関する自作も、昨年末頃には少々停滞していました。ここできっかけになったのが、Zoomで行われたQRP懇親会です。話の中で、JR2FNK鶴田さんにヒントを頂いたのが大きかったと思います。その後は一気に進める事ができました。

回路

回路はKiCadで書いても良いのですが、今までと同じBSch3Vを使っています。KiCadを使うのは、基板の設計のみに集中したためです。まあ、今後は不明です。このような理由で図1のような回路になりました。図1では一応10dB×3としていますが、特に抵抗値を決めるつもりはありません。自由に作りたい値にすれば良いと思います。基板のサイズから決めた3段ですので、10dB×3の他に、1,2,4dBでも良いと思います。1~7dBを1dBステップで可変できます。1dBステップが細かすぎるのであれば、2,4,8dBでも良いと思います。2~14dBを2dBステップで可変できます。5,10,20dBでも良いと思いますが、10,20,40dBという設定では正確な減衰量は難しいでしょう。ただ、減衰量の精度はともかく、とにかく大きい値にしたい・・・ という程度であれば良いと思います。個人的には基板がありますので、何でもありです。


図1 このような回路図にはなるが、抵抗値等は自由に・・・

3段にしたのは、100mm×100mmという基板サイズからの制約です。これを25mm×50mmに8分割したため、3段が良さそうとなりました。もちろん、25mm×100mmにする方法もありますが、7~8段になりそうです。すると少々多段過ぎると思います。もちろん、全ての面積を使わずに25mm×80mmの4枚取りにするとかの方法もあります。しかし最初ですので、もったいないような気がして止めました。

作製

KiCadで作ったのが図2になります。これを外注した基板が写真2になります。このように100mm×100mmの中に8枚の基板を作っています。但し、上手かどうかになると、まだまだなのでしょう。シルク印刷はしていますが、あえて抵抗等の部品番号と100Ω等の値は入れていません。


図2 100mm×100mmで作った8枚の基板


写真2 外注して完成した基板

この基板間にはVカットを入れていますので、金鋸で切るような手間はありません。手で簡単に切り離す事ができます。切り離したところが写真3になります。最初に作った図も図3になります。基板に001と最初のナンバーを入れているのが解ります。


写真3 切り離した基板(上は裏面)


図3 組み合わせる前の一枚基板

抵抗には、入手が容易な1/6Wタイプを使っています。これを基板にピッタリと貼り付くように寝かせてハンダ付けします。1/4Wでは寝かせて付けられません。当然ですが、特に高い周波数で特性に影響します。もちろん1/6Wなので、電力的には注意する場合もありそうです。もちろん基板としては、直列や並列にすることは想定外です。

抵抗の値は、週刊BEACONのNo.192の最後の方で紹介したエクセルで計算しました。その結果が表1になります。この表ではR3を中間の抵抗としています。基本的にはE12系列で作ろうとしているのですが、色の付いたセルのように外れたところがあります。3dBの300ΩはDBMなどでも使う値なので揃えるべきでしょう。4dBなどは計算値を見て24Ωを仕入れたくなりました。5dBの30Ωもそんなところでしょう。7dBと8dBの51Ωは、50Ωに近いという事で仕入れたのでしょう。10dBの75Ωは同軸のインピーダンスにもありますし、アッテネータとしても使いたい値です。このように、かなり苦しい言い訳になりますが、実際にソフトを使って考えてみると解ると思います。もちろん減衰量だけではなくインピーダンスを合わせる必要もあります。仕方なく少し離れた値を使う場合は、トレードオフになります。目的によって減衰量が重要な場合と、インピーダンスが重要な場合とがあるはずです。その点4dBは見事に合っていますが、7dBは減衰量だけです。これは、もう少し考える余地があるという事です。


表1 アッテネータの値をまとめた

表1のRinはアッテネータの反対側に基準用の50Ωを付けた時のインピーダンスです。これが50Ωに近いほど良い値となります。そしてその時のSWRとリターンロスも載せています。測定器の一部と考えれば40dB以上欲しいところです。アマチュア的にも30dB以上は欲しいのですが、足りないところがあります。このように、アンテナの場合はSWRで良いのですが、ダミーやアッテネータの場合はリターンロスを用いる方が良否を的確に表現できます。もちろん、これらの値は誤差をゼロとした計算上ですので、実際とは異なります。周波数が高くなればjXの部分も大きくなります。ただ、最初から計算上にずれがあるのは問題でしょう。

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