日本全国・移動運用記
2025年7月1日掲載
(前編の概要)
フェリーで苫小牧に到着し、途中で移動運用しながら留萌市を経由して、稚内市に移動しました。道中では風や雨が強い日もあり、伝搬のコンディションも良くなかったため、思うように交信できないこともありました。稚内からフェリーで利尻島に渡ると、翌日は猛烈な風、さらに午後からは雪が降り始め、厳しい天候が続きました。
この日は昼間のフェリーで利尻島から礼文島に移動しました。朝は風が弱まり、気温も上がって雪の心配は無くなり、フェリーは通常通りの運航と聞いて、一安心しました。フェリーに乗る前に利尻町と利尻富士町で運用したものの、伝搬のコンディションは依然として悪く、7MHz帯や10MHz帯ではすでに多くの局と交信済みだったため、呼んでいただける局も少なく、最後は空振りCQばかりになってしまいました。
礼文町の市街地は島の東側にあるため、西側に開けた場所が無く、高台にある展望台の駐車場まで移動して運用を行いました(写真1)。HF帯のハイバンドは相変わらず調子が良くありませんでしたが、風が弱まったおかげで全長40mのロングワイヤーアンテナを設置できて、1.9MHz帯は多くの局とQSOできました。
写真1 礼文郡礼文町での運用の様子
早朝、展望台の駐車場でハイバンドにチャレンジしたものの、スキャッターと思われる伝搬で札幌市近辺が時々聞こえるだけで、利尻島でも礼文島でも、ハイバンドのEスポには一度も出会うこと無く運用終了となりました。
その後フェリーで稚内市に戻り、次の目的地である枝幸郡枝幸町まで100km近くを移動しました。枝幸町は海岸にある公園で運用しました(写真2)。ハイバンドの伝搬のコンディションは引き続き悪かったものの、7MHz帯は好調で、当初の予定より時間を延長して運用しました。
次に浜頓別町の公園に移動して運用を再開すると、7MHz帯と10MHz帯は良好で、多くの局と交信できました。一方で3.5MHz帯と1.9MHz帯は不調でした。
写真2 枝幸郡枝幸町での運用の様子
この日は中頓別町-音威子府村-中川町-美深町の4町村で運用を計画しました。地図ではこれらの地域は隣接していますが、実際は移動距離が非常に長く、宿泊施設も少ないため移動運用する人が少ないようです。そのためHF帯では多くの運用リクエストがありました。
枝幸郡中頓別町では、以前にも利用したことがある駐車場で早朝から運用を開始しました。北海道は日の出時刻が早いため、午前5時を過ぎると1.9MHz帯も3.5MHz帯も到達範囲が北海道内に限られていました。
その後、中川郡(上川)音威子府村の公園に移動したところ、伝搬のコンディションがやや上がって、特に14MHz帯では1か所で122局と交信できました。早朝は気温が2℃と寒かったものの、日の出後は一気に気温が上がり、服装の調整が必要でした。しかし24MHz帯は2QSOのみ、28MHz帯は全く入感がありませんでした。
次に向かった中川町は、町の中心部までの移動距離が長すぎるため、音威子府村に近い駐車場で運用しました(写真3)。ここではタイミング良く28MHz帯が開けて、多くの交信ができました。
最後に美深町へ50km以上を移動して、公園の駐車場で運用を続けました。前日と同様に、7MHz帯と10MHz帯の状態が良く、ハイバンドが不調だったため、これらの周波数に集中する作戦に出て多くの交信ができました。
写真3 中川郡(上川)中川町での運用の様子
JCG 01023 上川郡(上川)には11の町村があり、すべての町村との交信を希望される方も多いと聞いています。しかし、各町村の面積が非常に広いため、移動運用は簡単ではありません。今回は、過去の運用記録などを参考に、HF帯のCWで需要が高いと思われる剣淵町と鷹栖町に絞って運用計画を立てました。
最初の運用は名寄市で、昨年の運用では開始時刻が遅く、運用場所の条件も良くなかったことから、今回は周辺に障害物が無い河川敷の駐車場で運用しました。しかし、ハイバンドの伝搬状況は悪く、あまり目立った成果はありませんでした。
次に移動した剣淵町では、風が急に強まり雨も降り始めましたが、伝搬の状態はやや改善され18MHz帯や21MHz帯で多くの交信ができました。しかし24MHz帯は入感がなく、交信できませんでした。
その後、雨竜郡(上川)幌加内町に移動しました(写真4)。2010年4月に幌加内町が上川総合振興局に編入されて新しい郡の扱いになった町で、筆者はその時に豪雪の中で移動運用を行ったことがあります(2017年1月号の記事)。その後も何度か運用をしており、50MHz帯で多くの局と交信できたこともありましたが、今回は残念ながら伝搬のコンディションが上がらず、18MHz帯までが限界でした。
続いて移動した鷹栖町の公園では、夕方になると伝搬状態が良くなり、特に10MHz帯は151QSOとかなりの盛況でした。
最後に旭川市の市街地に近い場所で短時間だけ運用を行いました。固定局が多く需要は少ないと考え、7MHz帯から上の周波数帯では運用せず、1.9MHz帯、3.5MHz帯、サテライトだけに限定して運用しました。大型連休の合間ということもあり、夜遅い時間帯にも多くの局から呼ばれました。
写真4 雨竜郡(上川)幌加内町での運用の様子
この日は雨の予報が出ていたため、明るくなった早朝に最初の運用地に向けて移動しました。濃霧で視界が悪く、さらに最初に来る衛星の時間帯が遅めだったこともあり、通常より遅い時間からの運用開始となりました。
最初に運用した樺戸郡新十津川町では7MHz帯から運用を開始しましたが、伝搬状況が思わしくなく、近距離に電波が飛びにくいスキップしている状態でした。
続く浦臼町でも雨が降り続いていたため、ぬかるんだ場所は避け、舗装された公園の駐車場で運用しました。伝搬状態が引き続き悪かったため、サテライト通信も活用して交信数を伸ばしました。
その後、空知郡(空知)奈井江町は、初めて利用する公園の駐車場で運用しました(写真5)。この頃になると伝搬のコンディションはさらに悪化し、周波数帯によっては相手局の信号が激しいQSB(信号の揺らぎ)を伴って聞こえにくくなり、交信に何度も挑戦する場面がありました。
札幌市は10区に分かれており移動運用が難しい区もあります。今回は時間の都合で1か所だけの運用に絞り、白石区を選びました。普段使っている公園は夜間に閉鎖されるため他の候補地を探し、最終的には以前使ったことのある別の公園に決定しました。夕方には伝搬の状態がやや回復しましたが依然として不安定で、ハイバンドでの交信は難しい状況でした。
写真5 空知郡(空知)奈井江町での運用の様子
QTH、周波数帯、運用日ごとのQSO数を表1に示します。離島の利尻町・利尻富士町・礼文町以外での1か所での最多QSO数は、初山別村の466QSOでした。1日1,000QSOは延べ5日間の達成でした。使える衛星が数年前よりも少なくなり、サテライト通信でのQSO数は少なくなっています。
50MHz帯は、最終日の5月4日に札幌市付近と交信できただけで、何回かチャレンジしたものの、電離層反射による交信はできませんでした。
表1 QTH、周波数帯、運用日ごとのQSO数。1.9~50MHz帯はCW、サテライトはCW/SSB
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