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アマチュア無線の今と昔

第40回 浦島太郎になって迷っているカムバック組の皆様へ

JF1KKT 横田勝彦

2026年3月2日掲載

閏年とオリンピック

毎年当たり前のようにめくるカレンダー。しかし、よく見ると「2月」だけが28日(あるいは29日)しかなく、少し窮屈そうにしていますよね。実はこのカレンダーのいびつな構造と、私たちが熱狂する「オリンピック」には、歴史と人間の事情が交差する面白い物語が隠されています。

今回は、そんな2月の秘密とオリンピックの歩みについて、少し時計の針を巻き戻して紐解いてみましょう。

●なぜ2月だけが「短い」のか? 〜しわ寄せを受けた年末の月〜
2月が短い理由は、はるか昔、古代ローマ時代にまで遡ります。当時のローマ暦では、農作業が始まる春、つまり現在の「3月」が1年のスタートでした。そして、1年の終わりの月が「2月」だったのです。当時の暦は月の満ち欠けを基準にしており、1年は355日しかありませんでした。

その後、季節と暦のズレを直すために「太陽暦(ユリウス暦)」が導入され、1年を365日と定めて各月に日数を割り振ることになりました。この時、すでに各月には30日や31日が割り振られていましたが、計算上どうしても日数が足りなくなります。そこで、「1年の最後の月だから、ここで帳尻を合わせよう」と、一番端っこにあった2月が削られ、28日間にされてしまったのです。つまり、2月が短いのは「古代ローマ時代の年末で、しわ寄せを受けたから」という、なんとも不憫な理由なのでした。


今年の2月は28日までありました

●2月の「おまけの1日」とオリンピックの劇的な出会い
さて、太陽暦の1年は正確には「365.2422日」です。この端数を調整するために、4年に1度、2月に1日を足して29日とする「うるう年」が生まれました。

では、これがどうオリンピックと関係するのでしょうか? 時は流れて1896年。フランスのクーベルタン男爵の提唱により、ギリシャのアテネで第1回「近代オリンピック」が開催されました。この1896年が、たまたま「うるう年」だったのです。オリンピックは古代ギリシャの慣わしに倣って「4年に1度の開催」と決められました。偶然にも第1回がうるう年と重なったことで、その後も「うるう年(2月が29日ある年)=夏季オリンピックの年」という美しいサイクルが定着しました(※戦争による中止や、近年の新型コロナウイルスの影響による特例は除きます)。

カレンダーの隅っこでひっそりと日数を調整していた2月が、世界最大のスポーツの祭典を知らせる「ファンファーレ」のような役割を持つようになったのです。


オリンピックといえば聖火

●夏と冬の「別れ」 〜熱狂の分散と大人の事情〜
かつて、冬季オリンピックは夏季オリンピックと「同じ年」に開催されていました。1924年フランスでの第1回シャモニー・モンブラン大会から1992年フランスでの第16回アルベールビル大会まで、夏と冬のスポーツの祭典は同じ年にやってくる「超特大イベントイヤー」だったのです。

しかし、現在ではご存知の通り、夏と冬は2年ごとに交互に開催されています。なぜ同じ年に開催しなくなったのでしょうか? 理由は大きく分けて2つあります。

1. スポンサーと放送局の「お財布」の限界

オリンピックが巨大化するにつれ、大会の運営には莫大なお金がかかるようになりました。同じ年に夏と冬が立て続けに開催されると、スポンサー企業は一度に巨額の協賛金を払わねばならず、テレビ局も放送権料の支払いや番組編成がパンク寸前になってしまったのです。

2. 「冬」にもっと光を当てたい

どうしても規模の大きい夏季オリンピックの陰に、冬季オリンピックが隠れてしまうという問題もありました。開催年をずらすことで、冬季スポーツ単独で世界中の注目を集めやすくなります。

こうした「商業的な大人の事情」と「スポーツ普及」の思惑が重なり、IOC(国際オリンピック委員会)は開催年をずらすことを決定。1994年のリレハンメル冬季大会から、現在のように夏と冬が2年おきにやってくるサイクルへと移行しました。

2月が短いのは古代ローマ人の都合。うるう年とオリンピックが重なるのは1896年の偶然。そして夏と冬のオリンピックが別々になったのは、現代社会の経済事情。私たちが何気なく過ごしているカレンダーやスポーツの祭典の裏には、こうした人間味あふれる歴史のドラマが隠されています。ちょうどこの原稿を書いている2月中旬、イタリアではミラノ・コルティナダンペッツォ冬季オリンピックが開催され大いに盛り上がっています。次にカレンダーの2月を見る時は、ぜひこの古代ローマから続く壮大な時間旅行に思いを馳せてみてください。

アマチュア無線とオリンピック

上記でお話ししたように、1994年のリレハンメル大会から、夏季五輪と冬季五輪は同じ年ではなく、2年ごとの交互開催に分離されました。経済的な事情や冬季スポーツへの注目度アップが主な理由でしたが、実はこれ、アマチュア無線家にとっては「ビッグな記念局とアワードのチャンスが2年ごとにやってくる」という素晴らしいメリットを生み出しました。

同じ年に夏冬の記念局が重なることなく、2年ごとにじっくりと各国の特別記念局や記念コールサインの局を追いかけることができるようになったのです。せっかくのオリンピックイヤーですので、日本で開催された過去のオリンピックにおける、アマチュア無線の特別記念局(および関連局)のコールサインについて、少し調べてみました。

調べて思ったことですが、日本の電波行政の歴史や、時代ごとのコールサイン割り当てルールの変遷が見て取れて、アマチュア無線家にとっては非常に興味深いテーマです。年代順にご紹介します。

1. 1964年 東京オリンピック(夏季)

特別記念局: なし(開設されず)
実は、記念すべき最初の東京オリンピックでは、現在のような特別記念局(8J~など)は開設されませんでした。当時の電波法規では、アマチュア無線による「第三者通信」への制限が非常に厳しかったことや、特別な文字列のコールサインを発給する前例・法整備が整っていなかったことが理由とされています(当時の日本のアマチュア無線局数はまだ2万局台でした)。

その代わり、JARLでは「五輪マーク入りの記念QSLカード(白紙)」を製作・斡旋し、各局が自分のコールサインを書き込んで世界中へ送ることでオリンピックをPRしました。

2. 1972年 札幌オリンピック(冬季)

記念局コールサイン: JA8IOC
日本初の冬季オリンピックとなった札幌大会では、JARLが開設する形で記念局が登場しました。コールサインは、現在の記念局でおなじみの「8J」や「8N」ではなく、通常の割り当て範囲内である「JA8」のサフィックスに、国際オリンピック委員会を意味する「IOC」を割り当てた「JA8IOC」でした。開催前年の1971年9月から運用が開始され、世界中の局から呼ばれました。


JA8IOC(JARL Webサイトより)

3. 1998年 長野オリンピック(冬季)

事前PR局: 8J0OGN (Olympic Games Nagano)
オリンピック記念局: 8N0WOG (Winter Olympic Games)
パラリンピック記念局: 8J0WPG (Winter Paralympic Games)

長野大会の時代になると、現在のように特別なプレフィックス(8J、8N)を使った記念局の運用が完全に定着していました。開会の1年半以上前から「8J0OGN」がPR運用を行い、大会本番ではオリンピックとパラリンピックで別々の特別なコールサインが発給されました。国内外のDXerたちが、この信越エリア(0エリア)の特別なコールサインを追いかけました。

4. 2020年 東京オリンピック・パラリンピック(夏季・2021年開催)

特別記念局(特例): JA1TOKYO
地方本部が開設するPR記念局: 8J#OLYMPIC (#は0〜9のエリア番号)
海外向け記念局: 8N#OLP (#は0〜9のエリア番号)

記憶に新しい2度目の東京大会です。全国の各エリア(0〜9)に「8J」と「8N」のコールサインが割り当てられ、多くのクラブ局や個人局が持ち回りで運用しました。特筆すべきは「OLYMPIC」という7文字の超ロングサフィックスや、「TOKYO」という5文字のサフィックスが総務省から許可されたことです。電信(CW)で8J1OLYMPICを打つのは非常に長く、パイルアップを捌くオペレーターの腕の見せ所でもありました。


JA1TOKYOのQSLカード(JARL Webサイトより)

今年はミラノ・コルティナダンペッツォ冬季大会の開催に合わせて、イタリアの各局(特別記念局として「II」や「IR」などのスペシャルプレフィックス)がアクティブにオンエアしています。スポーツ選手たちが雪と氷の上でベストを尽くしている裏で、私たちもマイクや電鍵(キー)で世界中の仲間たちと「59」「599」のシグナルレポートを交換する。これこそが、アマチュア無線家流のオリンピックの楽しみ方です。

なおご意見、ご感想、ご質問等については、筆者である私宛(jf1kktアットマークgmail.com)へご連絡頂けますと幸いです。

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