2013年9月号

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連載記事

楽しいエレクトロニクス工作

JA3FMP 櫻井紀佳

第4回 HF受信機2

4.4 総合組立

ICの外部に取り付ける部品や回路の検討が終わったので総合的に組み立ててみます。その後修正した全体の回路図はつぎの通りです。部品の番号が以前に実験したものと異なりますが、回路図を整理して分かりやすい番号に付け替えました。


(クリックで拡大します)

プリント基板は110mm x 78mmの大きさのものを使いましたが、これは手持ちの穴あき基板を都合のいい寸法に切ったものです。この寸法に近い基板を手に入れてください。できれば最初は少し大きめの方が、組立が楽にできると思います。プリント基板の穴ピッチは2.54mmのものが良いと思います。肝心のICのNJM2552は隣の足とのピッチが0.65mmなので変換基板が必要です。この変換基板で2.54mmピッチのプリント基板に取り付けできます。この変換基板にICをハンダ付けするには隣とのピッチが狭いので、隣の足とショートしないよう気をつけてハンダ付けしてください。


変換基板(左)とICのハンダ付け後(右)

今まで測定器については何も触れていませんでしたが、やはりテスターはどうしても必要です。あまり高級なものでなくても使えますので、手元にない場合はぜひ1台購入してください。巻末のコラムの「テスター」も見てください。タイプはアナログ型でもデジタル型でもいいのですが、デジタル型の方が測定値が分かりやすいと思います。

ICをハンダ付けした後、ICの足が隣同士ショートしていないか外側のピッチの広い端子にテスターのリード棒を当ててΩ計で測ります。もしショートしていれば1Ω以下の表示になると思います。先にリード棒どうしをショートさせて何Ωになるか見ておくと良いでしょう。0Ωにはなりません。また、ICの内部回路があるので、ショートしていない足同士は数kΩから数100kΩ程度の抵抗値で正常です。

高周波フィルターの2つのコイル(L1、L2)は互いに直角になるよう取り付けます。これは2つのコイルが結合すると特性が変わるのでそれを避けるためです。また、高周波フィルターのコイルは局部発振器のコイル(L3)とも近くない方がベターです。あまり近いと局部発振器の出力が高周波フィルターに結合して入ってしまい、最適な動作とはならない可能性があるからです。

全体的な部品の配置が決まったら配線しましょう。回路図は修正して改めて今回提示したものを使います。前回に示した回路図はラジオ用の回路に必要なものを追加したのですが、AMラジオ用の回路は使わないので不要な部分を取り去りました。

部品の配置は次の写真のようになりました。

アンテナコネクターは手持ちのSMA型を使いましたが、小型のものであれば下の写真の様な1Pのピンジャック・プラグでもOKです。

電解コンデンサーは縦型と横型のものを使っていますが、手持ちのものを使っただけで特に意味はありません。配線は0.4mmの錫メッキ線を部品屋さんかホームセンターで買ってきて使います。図のようにプリント基板に沿ってハンダ付けし、交差する部分はビニール線で浮かせて配線します。

プリント基板裏の配線の様子は次の通りです。

全体的な組立はできましたが、それぞれの動作確認は次回にしたいと思います。

■ CMOS (Complementary Metal-Oxide Semiconductor) IC
相補型と呼ばれる上下対称となった半導体IC。PチャンネルとNチャンネルのFET (field-effect transistor) 電界効果型トランジスタが上下対称になっていて消費電力が少ない、入力抵抗が高くドライブ電力が少ないなどの特徴があります。

■ コンデンサーの種類
対向した電極があればコンデンサーになりますが、電極の間の誘電体によって容量が変わります。同じ電極の大きさであれば誘電率の高い方が容量は多くなります。最近では電子機器メーカー向けのものは、ほとんどチップコンデンサーになっています。

・セラミックコンデンサー
誘電体にセラミックを使ったもので高い誘電率のセラミックによって小型化されました。容量の大きい小型のものは高い誘電率の誘電体で温度係数があまり良くありません。同調回路や発振回路のようにあまり変動しては困るものは温度係数の良いものを使用します。一般的に形の大きい方が温度係数は良い傾向にあります。

・電解コンデンサー(ケミカルコンデンサー)
古い人はよくケミコンと言う言い方をしますが、一般的にはアルミの表面を処理して細かい凹凸を作り、表面に極薄い酸化被膜の絶縁体を作って誘電体にします。この酸化被膜が薄いことと誘電率が高いこと、および細かい凸凹で表面積が広いことで容量の大きなコンデンサーができます。陰極に電解液を使うため電解コンデンサーと呼ばれています。高周波特性はよくないため、主に低周波や電源に使われます。

この他、タンタルコンデンサー、フィルムコンデンサー、マイカコンデンサー等、色々な種類のコンデンサーがありますが、初心者はセラミックコンデンサーと電解コンデンサーでほとんどのものが作れると思います。

■ 抵抗やコンデンサーの表示
抵抗はカラーコードで表示されているものが多いです。抵抗のカラーコードは上から2つが数値を表し、3つ目が乗数を表します。そして一番下側が許容差を表します。

カラーコードの覚え方は色々ありますが、JARLの資料ではつぎのようなっています。

コンデンサーの表示
セラミックコンデンサーの表示は数字2桁または3桁で表示しているものが多いです。
頭の2桁は数値を表し、3桁目が定数を表します。単位はpFで例えば、221は22 x 10¹で22 x 10 = 220 (pF)になります。472は47 x 10²で4700(pF) = 4.7(nF)になります。
数値1桁または2桁のものはそのままpFです。例えば、33は33pFです。

チップ抵抗には小さい字で表示していますが、チップコンデンサーには表示がなく、1度どこかに落とすと容量が分からなくなってしまいますので、取り扱いには注意が必要です。

■ テスター
回路試験器とも言いますが、電圧、電流、抵抗等、基本的な量を1台で測定できます。アナログメータを使ったアナログテスターと、数値表示されるデジタルテスターがありますが、最近市販されているもののほとんどがデジタルテスターです。電圧と電流はDCとACの両方が計れますが、高い周波数までの測定は無理で数10kHz以下が普通と思われます。

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