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日本全国・移動運用記

第36回 愛知県北設楽郡移動

JO2ASQ 清水祐樹

夏の暑い時期は、標高の高い涼しい場所での移動運用も良いものです。高い山の上から下界を見下ろせる場所であれば、電波の飛びも期待できます。しかし、実際の移動運用では、時間、天候、混雑などの事情で、山頂まで到達することが難しいことも多くあります。

HF帯の電離層反射は、斜め上方に電波が飛べば良いので、見通しの悪い山間部の谷底での運用でも、ある程度の交信が可能です。愛知県で最も標高が高い山である茶臼山での運用を考えていたところ、夏休み中で混雑が予想され、山頂付近までの到達にも時間がかかることから、その近辺の北設楽郡(きたしたらぐん)の3町村から、HF帯を中心とした移動運用を計画しました。

東栄町移動

北設楽郡の3町村の中では、東栄町の運用リクエストが多くありました。その要因の一つとして、山頂で運用できる場所が少ないことが挙げられます。北設楽郡は山地が多く、地図を眺めてみても東栄町と豊根村は広い平地がほとんど見当たりません。運用場所を探すため、まずは東栄町の中心部で公共施設が多く集まる地域を探してみました。

インターネットの地図サイトで地形の情報を調べてみても、「どの程度まで山に囲まれているか」といった距離感までは分かりにくく、また山間部はデータの解像度が低い場合もあるので、最終的には現地での確認が重要です。現地の地形を検討した結果、公園に面した公共施設の駐車場で運用することにしました。周囲は山に囲まれており、西側に高い木がありました。(写真1)。


写真1 東栄町の運用場所の様子

早朝から運用を開始し、7MHzは近距離があまり聞こえない伝搬状態だったので、3.5MHzを主に運用しました。周囲に木や建物などの障害物がある場合、高い周波数の電波は吸収されやすく、低い周波数になるほど障害物の後方に回り込みやすくなる性質(回折)があります。3.5MHzは波長が80mほどあるため、それより十分小さな木や障害物は伝搬にあまり影響が無いようで、多くの交信ができました。

豊根村移動

豊根村は平地が非常に少なく、茶臼山の山頂付近を除いては、主要道路が通っている地域の大部分が谷底にあるような地形です。時間の都合で山頂のロケの良い場所まで行くことは断念し、村の中心部の公園で運用することにしました(写真2)。


写真2 豊根村の運用場所の様子

この場所は北側に高い山があり、北日本方向には電波の飛びが良くないと予想していました。しかし、意外にも7エリア・8エリアへの伝搬が好調で、28MHzでも8エリアが安定して聞こえていました。HFの場合は運用場所のロケが悪くてもあきらめずに、電離層の状態が良さそうなタイミングで運用すれば、交信の可能性が高くなります。

運用を始めると、近距離の伝搬状態が悪く、10MHzから上のバンドではあまり呼ばれなかったので、20km以上離れた設楽町に一旦移動し、午後にコンディションが上がったタイミングで、もう一度出直すことにしました。

昼食後に再び同じ場所に戻って運用を始めると、厚い雲が急激に上空に流れ込んできて、やがて大粒の雨が降り始めました。雨が降っているだけであれば、雨具を着用してアンテナを調整すれば、運用は可能です。ところが、雨がさらに激しくなると同時に、雷が近付いてきて、近くに落雷もあったようです。安全のためHFのアンテナは外して待機しました。20分ほど経つと雨が上がって静かになり、再び運用を開始しました。

このように、夏期の移動運用では、天候の急変にも対策を考えておく必要があります。今回は車内での運用だったので、窓を閉めれば雨風はしのげます。しかし、テントを張ったり、屋根があるだけの東屋で機器を設置したりしたような状態では、雨風が激しくなると機器の故障につながるような厳しい状態になっていたかもしれません。

一般に、お昼休み前後の時間帯よりも夕方の方が伝搬の状態は良くなるものですが、この日は夕方もあまり良くなく、16時前後の、日没にはまだ早い時間帯に3.5MHzが良好に聞こえていました。

設楽町移動

設楽町は広い町で、ある程度広い平地もあります。ここはアクセスに便利な場所を選択し、町の中心部で運用することにしました(写真3)。


写真3 設楽町の運用場所の様子

広い場所であっても、田んぼや畑の近くでは、収穫作業や農薬散布を行っている可能性があります。アンテナが設置できる環境が整っていれば、町の中心部に近い場所で運用する方が好みです。

昼休み前後の時間帯に運用したので、HF帯の伝搬状況はあまり活発ではなく、7MHzと10MHzで粘り強くCQを出して交信数を増やすことに注力し、それより高い周波数では、交信できればラッキーという感じで気楽に運用しました。さすがに夏休みでワッチしている局が多く、また地表波で電波が届く近距離の局が多く出ていたので、伝搬状態が悪い割には多くの局と交信できました。

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次号は 12月 1日(木) に公開予定

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