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日本全国・移動運用記

第39回 島根県移動

JO2ASQ 清水祐樹

島根県は、全国の都道府県で2番目に人口が少ない県です。移動局があまり出てこない地域もあるようで、移動運用のリクエストが多く寄せられていました。そこで、島根県の8つの市を2泊3日で移動する計画を立てました。

移動運用の計画

島根県は東西に長い県で、東西方向の長さは150km以上あります。東西方向に車で移動する場合、高速道路・自動車専用道路が未整備の区間もあり、移動に時間がかかります。時間の配分を考え、1日目に1か所、2日目に5か所、3日目に2か所の計8か所で運用する計画を立てました。

ところで、島根県の全ての郡(町村)を2泊3日で全て訪問することは可能でしょうか? 答えはNoです。隠岐郡の離島に4つの町村があり、移動に時間を要するためです。

1日目の運用は雲南市から

最初の運用は、雲南市としました。海に面していない唯一の市で、移動運用の場所を探すには、海に面している市よりも時間がかかると考えたためです。

山陰自動車道の宍道ICから南下して雲南市に入ると、小高い丘の上に公園を見つけました。FBなロケーションを期待して行ってみると、閉門時間が早く、ここでの運用は断念。代わりに堤防上の空きスペースで運用しました(写真1)。


写真1 雲南市での運用の様子

15時を過ぎて、太陽は西の空に傾き始めました。7MHzが聞こえなくなる前に運用しようとCWでCQを出すと、コンディションが良く、パイルアップで30分以上も呼ばれ続けました。やはり、移動運用はパイルアップを受けるのが一番の楽しみで、長時間移動の疲れも忘れるひとときです。その後、10MHzで1エリアが安定して聞こえたり、14MHzでDX局から続けて呼ばれたりするなど、夕方としては好調な伝搬状況が続きました。

日没後、出雲空港の近くで出雲市の7MHzにもチャレンジ。日没後にもかかわらず各エリアが安定して聞こえており、この日は7MHzが大当たりでした。

県庁所在地・松江市の移動局は少ない?

日本全国を移動しながら、地元の局と無線で、あるいはアイボールしてお話しする機会があります。その中で、「県庁所在地の移動局は少ない」「県庁所在地の1.9、10、18、24MHzは珍しい(=コンテストにアクティブな固定局がいても、コンテスト対象外のバンドでは交信の機会が少ない)」という話を聞いたことがあります。県庁所在地の松江市はどうでしょうか。

朝4時台、外は真っ暗の時間帯に松江市のホテルを出発、カーナビや地図で安来市との境界付近の公園を見つけました。基本的に夜間にしか交信できない1.9MHzを日の出前に運用、早朝にもかかわらず5局と交信できました。

夜明けとともに安来市の海岸付近に移動し、駐車スペースを探しました。早朝から釣り客などが来ており、通行人の邪魔にならないようにひっそりと運用しました。

再び松江市に戻り(写真2)、3.5MHzから上のバンドを狙いました。午前8時台、通常の伝搬状態では7MHzが安定して聞こえるか? といった時間帯であるにもかかわらず、この日も伝搬のコンディションが良く、各バンドで順調に呼ばれ続け、14MHzでは21局と交信できました。県庁所在地は移動局が少なく、需要が多い説は本当のようです。


写真2 松江市での運用の様子

続いて出雲市に移動しました。住所は出雲市斐川町神庭、JARL QSLビューローがある町に初めて行ってみました。(注:JARL QSLビューローでは、QSLカードの直接持ち込みは一切受け付けていません。すなわち、現地を訪問しても特典は何もありませんので、ご注意ください。)

記念に近くの空き地で運用を開始、QTHは出雲市JCC3203だけしか送信していません。9月には通常は発生しない季節外れのEスポで、14~50MHzの各バンドで次々に呼ばれました。
午後からは大田市、江津市と続く移動予定です。順番としては大田市を先に通過します。しかし、夕方には伝搬状態が悪くなって7MHzなどの交信が難しくなると考え、先に江津市に行くことにしました。

大田市は石見銀山などの観光地があり、3連休の真ん中で多くの観光客で賑わっていました。ここで、大勢の人がカメラを持って線路の周辺に並んでおり、楽しそうに談話している光景を目にしました。珍しい列車が通ることは想像がつくものの、それが何なのかは現地では分かりませんでした。後から調べてみると、貨物列車が山陽本線の不通区間を迂回するため山陰本線を走行する、非常に珍しい場面を撮影しているようです。無線の移動運用で、現地で同じ趣味を持つ人たちと話が弾むことがあります。鉄道の世界でも、同じようなことがあるのでしょう。

江津市の国道沿いの駐車場で運用を開始すると、伝搬のコンディションはまだまだ好調で、7~21MHzまでの各バンドで多くの局から呼ばれました。24MHzと28MHzはコンディションが落ちていて7・8エリアがかすかに聞こえる程度でした。ここでは10MHz CWが39局で、バンド別の最多QSOでした。10MHz CWはWACA(全市交信)などを狙っている局が多いです。近距離と電離層反射で交信することが難しく、7MHzよりも難易度は高いです。珍しい市で10MHzを運用中にコンディションが良くなると、一気に多くの局から呼ばれることがあります。

大田市は運動公園の駐車場で運用しました(写真3)。ここは住宅地に面したロケーションでノイズが激しく、弱い信号の受信は厳しい状況でした。夕方になると伝搬のコンディションは低下して、この日の午前中のような賑わいはありません。CQを出しても空振りが続きます。

日没の時間が近くなり、最後に10MHzに出て終わろうと考えていたところ、突然多くの局から呼ばれ始めました。イオノグラム(解説は2014年4月号)を見ると、またもや季節外れのEスポが発生していました。急いで28MHzで運用を始めると、このバンドでは交信が難しい距離にある静岡県とも交信できました。順に低い周波数に下りると、14MHzに到達した頃にはコンディションが低下して、やがて何も聞こえなくなりました。


写真3 大田市での運用の様子

3日目は益田市と浜田市

小雨の朝、島根県の最西端の市である益田市で運用を開始しました。当初、益田市と浜田市の境界付近で運用して、伝搬のコンディションに応じて2つの市を行き来することを考えていました。ところが市の境界付近は予想以上にロケーションが悪く、運用できそうな場所が無いため、まずは益田市側で少し運用して、浜田市は市の境界から離れた港まで移動しました(写真4)。


写真4 浜田市での運用の様子

港は広々として電波の飛びも良さそうです。しかし伝搬のコンディションは前日ほどではなく、午前7時台には3.5MHzが強力、7MHzはまだ聞こえる気配がありませんでした。

再び益田市に戻り、今度は市の境界から離れた線路沿いの駐車場を発見しました(写真5)。ここでも鉄道ファンの皆さんが数名、カメラを持ってシャッターチャンスを伺っていました。


写真5 益田市での運用の様子

伝搬は前日ほどの勢いはなく、午前8時台に14MHzで北海道と沖縄が聞こえる程度でした。タイムリミットは午前9時。浜田市から筆者宅までは600km近い距離があり、3連休の最終日は渋滞もあって、帰宅は夜になりました。

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次号は 12月 1日(木) に公開予定

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