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日本全国・移動運用記

第59回 沖縄県宮古郡多良間村移動

JO2ASQ 清水祐樹

沖縄県宮古郡は、多良間村(たらまそん)の1村だけで構成される、離島に存在する郡です。人口が少なく、交通手段も限られていて運用する局が少なく、交信が難しい郡の一つに挙げられます。電波伝搬の良い時期に、できるだけ多くの局と交信するため、6月末のEスポシーズンに移動運用を計画しました。

多良間村は、どんな所?

宮古郡多良間村は、沖縄県の宮古島と石垣島の間にあり、多良間島と水納(みんな)島の2つの島で構成されています。水納島は定住者がごくわずかで、交通手段はチャーター船に限られます。今回は、多良間島で運用することにしました。

多良間村はリゾート開発がされていないため、自然に近い風景を見られることが特徴です(写真1)。ネットで検索すると「沖縄最後の秘境」「多良間ブルーの海」という表現も見られます。島を訪れる観光客の多くは、ダイビングが目的のようです。




写真1 多良間村の様子
(上)八重山遠見台から石垣島方面を見渡す風景
(中)多良間ブルーの海
(下)見渡す限りのサトウキビ畑

多良間村への交通手段は、宮古島からの飛行機が1日2便と、船が1日1便です。沖縄本島からの直接の航路は無く、宮古島で乗り換えになります。筆者が移動運用を計画した日は、飛行機は減便、船がドック入りで運休の時期と重なっており、もしも悪天候等で帰りの飛行機が運休した場合には、島から数日間出られない状況も覚悟せざるを得ない状況でした。直前の天気予報では大崩れは無さそうで、まずは安心して出発できました。

到着から運用開始まで

運用は建物や部屋を借りるか、レンタカーを使うことが考えられます。サテライト通信で遠距離と交信するために、地平線ギリギリまで見通せる場所が望ましいため、レンタカーを使って海岸付近で運用しました。また、食事できる場所・時間に制約があり、高温で車内に食料を保存することが困難であることから、食事の時間帯には毎回撤収しました。

大きな荷物は船便で事前に郵送しておき、レンタカーに移動運用セットを組立てました。無線機はIC-7300MとIC-9700の組み合わせで、いつもと同じです(写真2)。


写真2 レンタカーに移動運用セットを組んだ様子。

昼間は日差しが強くて暑いため、カーエアコンの使用が必須です。エンジンから発生するノイズを抑えるため、電源の配線にはW1JR巻きにした大型の分割式トロイダルコアを何個も挿入し、車のボデーにアースを接続しました。その結果、エンジンから発生するノイズは気にならないレベルに抑制できました。ただし、弱い信号を受信したい、というここ一番の勝負どころではエンジンを停止しました。

到着日の運用開始は夕方になりました。といっても夏の沖縄は日没が遅く、夕食後でもまだ十分に明るさが残っています(写真3)。夏の夕方は、例えば2エリアでは7MHz帯の近距離が聞こえなくなり、3.5MHz帯や1.9MHz帯が国内交信の主力になる時間帯です。しかし、ここは東京から1,800km以上離れており、電波伝搬が全く違います。

まず、国内の広い範囲が聞こえる10MHzから開始しました。予想通り、ものすごいパイルアップになりました。高速CWでテンポよくQSOが進み、また、7・8エリアといった国内遠距離の信号が意外に弱かったことから、パイルアップは39局とQSOした時点で落ち着き、次の14MHz帯にQSYしました。こちらの方が国内局の信号は強い感じで、83局とQSOできました。このように28MHz帯まで順に上がった後、長さ80m近いダイポールアンテナを設置して3.5MHz帯と1.9MHz帯を運用しました。

夏の沖縄は、晴れていても突然雨雲が発生し、短時間の雨や雷に見舞われることがあります。遠く離れた海上で雷が光り、同時に空電ノイズが入感することもありました。


写真3 ローバンド向けの運用場所の様子

Eスポで50MHz帯、さらには144MHz帯でもQSO

2日目はHF帯の各バンドを巡回しました。朝の7MHz帯はパイルアップになったものの、入感する地域の変動が激しく、やがて国内局の信号は弱くなりました。24MHz帯で非常に弱い信号でQSOできても、28MHz帯では聞こえないパターンが何局も続き、夕方、コンディションが良くなった時に28MHz帯で再会できることもありました。2日目の50MHz帯は2QSOだけに終わりました。

3日目の朝は、7MHz帯や10MHz帯でQSO可能な局とは、おおむね需要を満たした感じで、50MHz帯と144MHz帯のアンテナを用意してEスポを待ちました(写真4)。FT8をワッチして各バンドのコンディションを探ってみると、50MHz帯で国内局がまずまずの強さで入感しており、まずCWに出ると、すぐにパイルアップになりました。しかし、信号強度の変化が激しく、20分ほどでバンド内が静まり返りました。

HF帯の各バンドを巡回しているうちに、再びコンディションが上がり、1エリアや2エリアから、144MHz帯で沖縄本島が聞こえたとネット上に情報が上がってきました。しかし、28MHz帯でパイルアップが続いて、なかなか手が離せませんでした。隙を見て144MHz帯のアンテナを北北東に向けてCWでCQを出すと、新潟県からコールがありました。珍しい144MHz帯のEスポによるQSOで大感激、距離は約1,900kmでした。


写真4 50MHz帯と144MHz帯のEスポに対応したアンテナ

午後にも144MHz帯で神奈川県とQSOできた後は、50MHz帯のCW、SSB、RTTYを運用しました。SSBは1分間に3~4局のペースで快調にパイルアップをさばきました。このスピーディなQSOが50MHz帯のEスポの面白いところです。RTTYの運用中に急激に信号が弱くなり、その後に考えていたAMやFMでのQSOまでは至りませんでした。

今回のQSO数を表1に示します。7MHz帯の伝搬が不安定で、QSO数が意外に伸びませんでした。


表1 バンド・モード別QSO数

飛行機の待ち時間に、IC-705でHF帯の移動運用

空港で飛行機の待ち時間に、IC-705とHFJ-350を使ってHF帯の移動運用を行いました(写真5)。IC-705は、ノートPCなどと同様に、手持ちで機内に持ち込みました。保安検査場でトレーに載せて検査を通る際「これは何ですか?」と何度も聞かれました。

運用時には雨が降っており、屋根のある場所にIC-705を設置しました。HFJ-350をL型変換コネクタでIC-705に直結し、倒れないようにロープでカバンの持ち手に固定しました。アースは前号で解説した通り、近くにあった金属製の物体に接続しました。コイルのタップを運用する周波数帯に合わせ、ロッドアンテナの長さを調整してSWRを下げました。

青森県の方から、どのバンドでも良いので宮古島市とQSOしたいとリクエストがありました。直線距離は2,200km以上あります。机の上に設置したアンテナからの出力5Wの電波は、ここまで届くのでしょうか? 予想としては、昼間の7MHz帯はここまで遠くには届かず、10MHz帯か14MHz帯で見込みがあると考えていました。

7MHz帯は予想通り、国内局の信号は全く聞こえませんでした。10MHz帯と14MHz帯でCQを出しても、全く聞こえないとのことです。5Wでは届かないのか、屋根がある場所ではダメなのか…? 試しに18MHz帯、21MHz帯…と順に上がると、28MHz帯で突然強力な信号が聞こえて、さらには50MHz帯でもQSOできました。

QRPの設備では、伝搬が最適な周波数帯で運用することでQSOの可能性が上がるので、HFの全バンドに対応できるアンテナは、とても便利です。14~50MHz帯の各バンドで、行きは16QSO、帰りは12QSOできました。



写真5 (上)IC-705移動運用セットで運用中の様子 (下)使用したアース

アンテナの長さの調整について、詳しく説明します。送信時のSWR表示だけを頼りにアンテナの長さを調整すると、SWRが高すぎる場合に、SWRが上がったか下がったか、分からなくなることがあります(図1)。その場合は、メーターをPo(送信出力)表示にしてPoが最大になるようアンテナの長さを調整し、Poが最大になったらSWR表示に切り替えて、SWR最小に調整することがコツです。また、送信中にアンテナに手を近づけてSWRが下がる場合にはアンテナを数mm長く、手を近づけてSWRが上がる場合には数mm短くすると、SWRをさらに低く調整できます。


図1 アンテナのSWR調整の様子。SWRが高過ぎるため、バーグラフではSWRが表示できない(画面下段)。まず、Po(送信出力)が最大になるようアンテナの長さを調整し、Poが最大になったらSWR表示に切り替えて、SWR最小に調整する。

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次号は 12月1日(火) に公開予定

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