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日本全国・移動運用記

第56回 鹿児島県熊毛郡屋久島町移動

JO2ASQ 清水祐樹

(編集部からのお知らせ)
本連載筆者の清水氏はゴールデンウィーク中に下記の「アマチュア無線オンラインレッスン」を開講されますのでご案内いたします。

【コース】
①CW入門
②D-STAR解説付き交信(画像伝送も対応OK)
③無線設備構築の相談

【開催日】
2020年 5月 2~6日
10~12時、13~17時 (1回1時間以内、事前予約制)

【開催方法】
ZoomによるWebミーティング

詳細は、http://jo2asq.a.la9.jp/lesson.htmlをご覧ください。


鹿児島県にある屋久島は、世界遺産として登録されている、観光地として有名な島です。4月初めの気候の良い時期に、移動運用を計画しました。

屋久島は、どんな所?

屋久島は鹿児島県熊毛郡屋久島町に属します。熊毛郡は、全域が離島に存在しており、屋久島町の他には種子島(2016年2月号)の中種子町と南種子町があります。屋久島の地形の特徴を一言で表すと「大きな山がそのまま島になっている」といえます。島のほぼ中央に宮之浦岳(標高1,936m)があり、斜面が多く、広い平地はほとんど見当たりません(写真1)。

今回の移動運用は、HF帯での遠距離通信が難しい時期であり、ほぼ国内向けの運用に特化しました。そのため、本州方向にあたる北東側が開けた場所で運用することを考えました。移動手段は鹿児島空港から飛行機を利用し、現地でレンタカーを借りました。この連載で何度も紹介しているレンタカー移動セットです。使用する機材は、宅配便で現地の営業所に発送しました。


写真1 屋久島の案内図。島全体が大きな山になっている様子が分かる。

運用場所の選定

屋久島には夜間も営業しているドラッグストアがあり、食料品の購入が可能であることが分かりました。心配事の一つであった食事の問題が解決できたので、航空写真で事前に探してあった公園以外で運用場所を探してみました。

港などがある町の中心部は、ある程度の平地があっても、民家が多く長時間の運用には向かないと判断しました。事前に探してあった公園に行き、アンテナの設置方法を考えました。広い場所が無く、給電点から両側2方向に展開するダイポールアンテナは設置が難しく、給電点から1方向だけに展開する逆L型ロングワイヤー(2013年10月号)を設置しました。

強風でアンテナ設置に苦戦

レンタカー移動セットの梱包を解いて、運用の準備を始めました。タイヤベースに伸縮ポールを立てて、伸縮ポールの先端にロングワイヤーアンテナと支持用のロープを取り付け、伸縮ポールを1段ずつ伸ばしました。

3段、4段と伸ばしていくうちに、伸縮ポールの先端が強風で大きく傾き、伸縮ポールの継ぎ目部分が折れそうなくらいの風圧が加わってきました。先端を風上方向にロープで引っ張りながら、ゆっくりと作業を進めてゆき、逆L型アンテナが設置できました(写真2)。当初は、隣接する芝生の上にアンテナを展開したところ、子どもが芝生の中に入って遊んでいることに気付き、人が通らない植え込みを取り巻くような形でアンテナを展開しました(図1)。

ロープを2方向、ロングワイヤーを1方向の計3方向から引っ張って伸縮ポールが揺れないように固定し、ロープの1本はワイパーの根元に縛り付けました。場所の都合で、1.9MHzの1/4λワイヤーの展開はあきらめ、3.5MHzの1/4λワイヤーを使用しました。アンテナチューナーで10~28MHzの各バンドに対応し(7MHz帯の運用時だけは7MHzの1/4λで切り離す)、1.9MHzは給電点にコイル(写真3)を入れて同調を取りました。


写真2 運用場所の様子


図1 使用した逆L型アンテナの設置方法


写真3 給電点に設けたコイルの様子

サテライト通信は、新市のような大パイルに

衛星のFO-29は、現時点では主に土曜日・日曜日の昼間、予告された時刻に管制局がトランスポンダをONにして運用されます。FO-29が可視範囲に入る時間は13~20分程度(時期により違う)で、その途中からONになるため、交信が可能な時間は長くても数分しかありません。

トランスポンダがONになってすぐにCQを開始すると、福岡県那珂川市が新しい市になった最初の運用のような猛烈なパイルアップになりました。CWで5分間に18局と交信した後、SSBでは1局だけ交信できて、衛星はすぐに南西にある山の影に隠れて見えなくなりました(写真4)。南西側の山の影響で、この方向のDX局にも、弱い信号しか届かなかったかもしれません。


写真4 運用場所から南西側を見た様子。海の反対側にはすぐに山があり、この方向には電波が飛びにくい。

1日目はハイバンドのオープンが無く、2日目の午後にようやく聞こえる

離島での運用の面白さの一つに、10MHz帯と14MHz帯の運用があります。普通の局が出ていても見向きもされないのに、コンディションが良くなり珍局が出てきたと分かると強烈なパイルアップになる、オンとオフの違いがはっきりしています。

HF帯は10MHz帯から開始し、順番に上の周波数にQSYしました。14MHz帯で7・8エリアの数局と交信できた後に、18MHz帯はどれだけCQを出しても空振りで、伝搬のコンディションは良くありませんでした。7MHz CWは大パイルアップになると予想して、移動局がよく出ている周波数からあえて離れることで、混乱回避を狙いました。この方法は効果があり、適度な呼ばれ方で1時間以上のパイルアップが続き、1日目は7MHzだけで144局とQSOできました。

夕方からは3.5MHzと1.9MHzを運用しました。この日はローバンドも伝搬のコンディションが悪く、特に1.9MHzが近距離しか聞こえない感じで、1.9MHz帯に出ているいつも強力なFT8も、かなり弱い信号でした。ノイズレベルは低く、弱い信号の受信は比較的容易でした。

2日目も相変わらずの強風で、アンテナの設置には苦労しました。午後からは10MHz帯の信号が強くなってきたため、14~28MHz帯の各バンドにチャレンジしました。手動アンテナチューナーでSWRを下げても、SWRが突然∞に暴走することがありました。アンテナを見ると、強風でワイヤーが伸縮ポールに巻きついたり、コネクタが緩んで接触不良になったりしていました。あまりの強風で海水が飛んでくるらしく、アンテナに塩が付着しました。そのような悪条件の中、21MHz帯の運用中だけ1エリアの信号が強力に聞こえて、ごく短時間に多くの局とQSOできたことが印象に残っています。

2日間(運用開始から終了まで25時間)のQSO数を表1に示します。50MHz帯は、アンテナがロングワイヤーで利得が低く、最も近くて100kmほど離れた九州本土まで飛ばすことも難しいと考え、運用を断念しました。


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次号は 12月 1日(木) に公開予定

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