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日本全国・移動運用記

第68回 東京都大島町移動

JO2ASQ 清水祐樹

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東京都の伊豆大島は、伊豆諸島の最北部にあり、火山である三原山で有名な島です。伊豆大島の山の上から、関東平野のどこまで電波が飛ぶのか興味がありました。また、アマチュア無線では、JCG#10004 大島支庁 として“郡”と同様の扱いになっており、HF帯のリクエストが多い場所でもあることから、気候が安定している4月に移動運用を計画しました。

計画編

本土から伊豆大島に移動するには、船を利用することになります。船では運転手と自動車を同時に輸送できないため、現地でレンタカーを借りました。

運用場所は、インターネット上の地図や航空写真を参考にして決めました。登山道路はカーブや急傾斜があり夜間の運転を避けたかったことと、山の上でローバンド用の長いアンテナを設置できそうな場所が見当たらなかったことから、昼間は標高の高い場所で、夜間と早朝は海岸付近の広い場所に移動して運用しました。

運用周波数帯は1.9~1200MHz帯とサテライトとしました。リグはIC-7300MとIC-9700のセットです。1泊2日の運用で荷物を少なくするため、外付けアンテナチューナーは持参しませんでした。バンドごとにアンテナを調整して、SWRが下がらない場合はIC-7300Mの内蔵アンテナチューナーで対応しました(図1)。

7~50MHz帯はダイポールアンテナ、1.9/3.5MHz帯は逆L型アンテナとしました。これらのアンテナは打ち上げ角が高いため、電離層反射による“近距離の”交信に有利と考えました。ダイポールアンテナは、例えば沖縄で運用する場合には、遠距離通信を狙うため給電点を高くして打ち上げ角を低くしています。今回は、近距離との電離層反射を狙うため、給電点を2~2.5m程度に低くして、打ち上げ角を高く(上向きへの放射を強く)しました。逆L型アンテナのアースは、レンタカーに傷を付けないように、300×200mmのアルミ板を車の屋根に置いて容量結合したものを使用しました。


図1: 使用したアンテナの概要

V/UHF帯から運用を開始

伊東港からジェット船に乗るため、時間に十分に余裕を持って早朝に出発しました。港には予定より早く到着し、インターネットで現地の情報を収集していると、衛星が来ていることに気付きました。サテライト通信に使っているIC-9700は、現地に発送していました。そこで、予備機として手持ちで運搬している2台のIC-705をスーツケースから取り出し、ホイップアンテナ、デュープレクサを取り付けて、港でサテライトを運用しました(写真1)。


写真1: 2台のIC-705を使用して、サテライトを運用している様子

伊豆大島に到着後、レンタカーを借りて食料等を調達し、機材を設置して標高500mを超える運用場所に移動しました(写真2)。天気は良いものの、視界がかすんでいて、かすかに富士山の山頂が確認できるような眺めでした(写真3)。HFの伝搬が良くない様子だったため、144/430MHz帯でモービルホイップアンテナを使用して運用を開始しました(写真4)。

信号はあまり強くないものの、神奈川県や東京都の広い範囲は見通し距離に入っているようで、多くの局から呼ばれました。1200MHz帯は10エレのループ八木アンテナを使用し、信号が強くなるようにビーム方向を使い分けて運用しました。


写真2: レンタカーに機材を積み込んだ様子


写真3: 運用場所から富士山を眺めた様子


写真4: 144~1200MHz帯のアンテナ。風が強かったため、1日目の144/430MHz帯はモービルホイップアンテナを使用した。

V/UHF帯の運用が終わると、HF帯のギボシダイポールアンテナを設置して、7MHz帯 CWの運用を始めました(写真5)。このバンドは昼休み前後の時間帯よりも、夕方近い時間帯の方が伝搬のコンディションが安定する傾向にあります。需要は多いようで1時間以上のパイルアップが続きました。

その後、10~28MHz帯へと順にQSYすると、神奈川県や千葉県の海岸に近い局は全バンドで聞こえていました。しかし、東京の内陸部は距離が遠く、届きにくい印象でした。V/UHF帯で交信できた局とHF帯では交信できないことがあり、アンテナの利得が関係していると考えられます。サテライト通信でも、XW-2Dで1パス40QSOできるなど、パイルアップが続きました。


写真5: HF帯とサテライト通信用のアンテナ、背景は三原山

夜間と早朝は、海岸付近の広い場所で運用

夜は山から下りて、海岸で1.9/3.5MHz帯を運用しました。長さが80m近くある1.9MHz帯のダイポールアンテナを設置できる場所が見当たらず、日没で暗くなる直前だったので、長さ約20mの3.5MHz帯の逆L型ロングワイヤーアンテナを設置し、1.9MHz帯はコイルを接続してマッチングをとりました。3.5MHz帯はノイズレベルが高く交信には苦労しましたが、1.9MHz帯は都市部で見られるような人工的なノイズが無く、8エリアや6エリアとも交信できました。

翌朝も同じ場所で運用を開始しました。夜明けとともに、運用場所の東側に高い山があることが、はっきりと確認できました(写真6)。その後、明るくなって冷え込みも緩んでから、前日と同じ標高の高い運用場所に移動しました。風が弱くなったので、144MHz帯と430MHz帯はサテライト用の八木アンテナを使用したところ、モービルホイップよりも信号が強力になり、前日には信号が届かなかったと思われる、東京23区内からベランダのモービルアンテナで運用している局とも交信できました。

日曜日のうちに帰宅するため、運用は12時までとしました。50MHz帯から順に下がると、28MHz帯で7・8エリアが聞こえて、伝搬のコンディションが上がってきました。周波数が下がるにつれて近距離も含めた広い範囲が入感するようになり、最後は10MHz帯でも1エリアの全体が聞こえるパイルアップで、予定を15分延長して終了しました。


写真6: 海岸付近の運用場所の様子

結果

バンド別、1時間ごとに集計したQSO数を表1に示します。運用開始から終了までは24時間弱で、1,000QSOを超えました。10日15時台の7MHz帯104QSOと、1.9MHz帯の合計64QSOが特に目立った結果でした。


表1: バンド別、1時間ごとに集計したQSO数。1.9~50MHz帯はCW、144~1200MHz帯はCWとDV(レピータ経由およびシンプレックス)、サテライトはCWとSSB

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次号は 12月 1日(木) に公開予定

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