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日本全国・移動運用記

第30回 愛媛県越智郡上島町移動

JO2ASQ 清水祐樹

愛媛県越智郡は離島だけで構成される郡で、上島町の1町だけが存在します。ここは本州・四国の、いわゆる本土から橋を渡って到達することが不可能で、上陸するには本州側(広島県尾道市)からフェリーを利用する必要があります。比較的容易に移動できる離島といっても、移動運用を行う局は少ないのが実情です。そこで、愛媛県越智郡上島町での移動運用を計画しました。

運用の計画

計画は1日の日帰り運用です。どの程度の交信が出来るかは、最終的には当日の電波伝搬のコンディション次第となります。様々な状況を想定して、多くの局と交信できるよう計画を組みました。

ここ数年は電離層の状態が悪く、さらに2月はEスポ(スポラディックE層)が稀にしか発生しないため、日によってはHF(短波帯)で国内交信自体が難しいこともあります。昼間の場合、良い時には7MHzの近距離が聞こえますが、そうでない場合は3.5MHzでそれなりの性能のアンテナを設置するしか打つ手がありません。

海外局向けにIOTA AS-200のサービスをしようにも、電波伝搬は海外局と容易に交信できる時期ではなく、AS-200自体も既に多くの局が運用しており需要が見込まれないため、今回は見送りました。用意する設備としては、自家用車で移動するため通常の移動運用と変わりません。1日分のバッテリーを搭載し、電源は十分に賄えました。

運用場所の選定

上島町には多くの島が存在し、フェリーの航路もいくつか存在します。今回の移動運用では、所要時間が3分と最も短い、生名島へのフェリーを利用しました(写真1)。


写真1 利用したフェリーの航路。手前側が愛媛県越智郡上島町、対岸が広島県尾道市。フェリーには自家用車に乗ったまま乗船し、約3分で対岸に到着する。

当日のスケジュールは、早朝にフェリーで島に上陸し、1日中運用して夜にはフェリーで島から離れる日帰り運用です。同じ場所で長時間滞在するため、可能ならばトイレがあり、他の利用者の邪魔にならない場所が理想と考えました。

始めて運用する場所の場合、事前にインターネットの地図や写真で運用場所を検討しています。しかし、インターネット上の写真は情報が古いことがあり、最新の工事等の状況を反映していない場合があります。また、人がどれくらい通るのか、公衆トイレが使用可能か、といった状況は、実際に行くまで分かりません。また、今回の移動運用には直接関係ありませんが、標高の高い地方や豪雪地帯では、冬季は公共施設が閉鎖中の場合もあります。

運用場所を選定するため、グラウンドや海岸の候補地をいくつか回りました。このうち、海岸にある工事中の公園は、雨が降った後で水たまりができて使用が難しい状態になっており、長時間の駐車でも他の利用者の邪魔になりにくいと判断しました。しかも徒歩で行ける範囲に公衆トイレがありました(写真2)。


写真2 運用の様子

強風で気温も低く、車外に出ることが面倒なため、アンテナにはロングワイヤーアンテナを使用し、車内のアンテナチューナーを操作してバンド切り替えをする方式にしました(写真3)。


写真3 バンド切り替えに使用した手動アンテナチューナー(手前側)

運用開始

朝7時前では、7MHzはまだ近距離が聞こえません。こうなるとHFで国内と交信するには1.9MHzか3.5MHzしか選択肢がありません。1.9MHzはコンテストが開催されており空き周波数探しが難しいため、3.5MHzから開始しました。

開始当初は多くの局から呼ばれたものの、伝搬の状況があまり良くないためなのか、既に需要を満たしているのか、おそらく両方の要因で、応答は次第に少なくなりました。1.9MHzはコンテストの推奨周波数から外れた周波数を確保し、混信をかいくぐりながら多くの局から呼ばれました。

運用しながら電離層データを見ていると、10MHzで500km程度に伝搬する可能性があることに気付きました。そこで8時頃から10MHzにQSYすると、2エリア以東から立て続けに呼ばれました。この時期に10MHzの国内交信は難しいと予想していたので、幸先の良いスタートでした。7MHzにQSYするとパイルアップが続き、100局を優に超えました。午前中は主に7MHzと10MHzを行き来し、多くの局と交信できました。

運用中に雪が降ってきました。サラサラで大粒の雪で、強風で水平に流されるような降り方でした。気温-10℃でも過ごせる完全防寒装備で臨んだため、雪が降っても快適に過ごせました。昼食は島内のスーパーで弁当を購入しました。スーパーは島の周回道路から離れており、自力で場所を見つけるには難しい場所でした。この店はカーナビの周辺検索で発見しました。やはり、知らない場所で生活必需品を入手するには、カーナビの機能やインターネット環境は便利です。

午後からは14MHzが聞こえた

昼休み後に運用を再開すると、10MHzと14MHzで1エリアが聞こえてきました。しかし、18MHzではあまり多くの局とは交信できず、15時頃には10MHzも聞こえなくなりました。それでも、珍しいと思われる愛媛県越智郡の14MHzを多くの局にサービスできたことは、今回の大きな成果です。夕方になると7MHzの近距離も次第に聞こえなくなり、3.5MHzと1.9MHzも一通りの需要は満たしたようで、大きなパイルアップにはなりませんでした。

この日の運用を総括すると、どのバンドでも良いのでCWでJCG38003(越智郡)が欲しい国内局には、それなりのサービスが出来ました。しかし、特に3エリア付近は7MHzでも聞こえる機会がほとんどなく、1.9MHzと3.5MHzしか聞こえる周波数帯がありませんでした。5~7月のEスポシーズンに運用すれば、これとは全く違った楽しみ方ができると期待されます。

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次号は 12月 1日(木) に公開予定

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