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HW Lab

第9回 アクティブBPFのアマチュア無線への応用 (その1)

JH3HWL 箭野佳照

2025年9月16日掲載


アクティブBPFの実験と製作について

メーカー製の大型HFトランシーバーを持っているのですが、飽き足らず中国製の小型短波ラジオを購入しました(図1)。受信感度も選択度もイマイチですがどこにでも持っていける手軽さはバツグンです。ラジオはLW/MW、SW、FM、AIRのバンドを受信することができます。受信モードもAM、FMのほかにSSB(LSB/USB)も付いているスグレモノです。


図1. SSBも受信できる小型短波ラジオ

このラジオでアマチュアバンドを受信するとSSBはもとよりCWの信号も受信できます。選択度はそれほどでもないため7MHz帯のような混みいったバンドでは複数の局が同時に受かり混信状態となります。そこでOP-AMPを使ったアクティブBPFを通して信号を受信すると混信は改善されるのではないかといった興味が湧きだしました。

今回その実験を行い、うまくいけば実験結果をもとにアクティブBPFを製作します。一回目(その1)は、ブレッドボードに回路を組み、実験を行いながら性能を確認します。二回目(その2)は、その結果に基づきアクティブBPFを製作し、短波ラジオに接続して実際の信号を受信してみます。

LCフィルターについて

電気信号の中から特定の信号を取り出す回路がフィルターです。フィルターはコイル(L)とコンデンサー(C)の組合せで作ることができます。

図2に示したフィルターは、単にLとCで構成した代表的な回路です。電源は不要で、LとCの接続だけでフィルター回路を構成することができることから、今回実験するアクティブフィルターに対して、パッシブフィルターとも呼ばれています。あるいは簡単にLCフィルターと呼ばれることもあります。

ここで特定の周波数の信号だけを通すBPFに着目します。LとCで構成された並列共振回路が回路に組み込まれています。共振回路の共振周波数(f0)を求める公式は(1)式で表されることはご存じのとおりです。



図2. 代表的なLCフィルター回路

通過信号の周波数は、LあるいはCの値を変えることで変化させることができます。ここでCWの信号を600Hzぐらいの周波数で聴くことを想定したBPFを考えます。例えばコンデンサーの容量を100µFとするとコイルのインダクタンスは(1)式より約700µHとなります。

LまたはCの値を変えることで通過信号の周波数を可変することができますが、通過信号の周波数をこのLCフィルターで連続的に可変するには電子工作的には少々ハードルは高いです。

バイクワッド(Biquad)型アクティブBPF

OP-AMPを使ったアクティブフィルターでは、通過信号の周波数やQの値はコイルのインダクタンスやコンデンサーの定数を変化させることなく抵抗の値を変化させることで実現できます。今回の実験では、通過信号の周波数やQの値をほぼ独立して可変することができるバイクワッド(Biquad)型BPFを試してみます。その原理図を図3に示します。

IC1~IC3のOP-AMPでBPFを作ります。図2に示したLCによるフィルターではQの高い特性、つまり帯域幅の狭い特性を得ることは、物理的に部品の制約があり困難であることは知られています。

多くのHFアマチュア無線機に装着されているCWフィルターの帯域幅は500Hzあるいはそれ以下ですから、中国製短波ラジオに接続するアクティブBPFの帯域幅も500Hzのフィルターに匹敵する特性を目指します。

図3に示したバイクワッド型のBPFは、低い周波数ではQを100以上にも設定できる特長があることからこの回路を選びました。

バイクワッド型のBPFは次の(2)~(4)式に示す3つの式を用いて回路の各LCの定数を決めます。筆算や電卓による計算は面倒ですが、記事末にはこのバイクワッド型BPFの定数自動計算ができるウェブサイトを参考で掲載しました。今回の計算は、このウェブサイトの自動計算を用いて行いました。


図3. バイクワッド型アクティブBPFの回路図


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