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第45回 【無線機の修理ガイド】サービスマニュアルを読んでみよう

JP3DOI 正木潤一

2025年12月1日掲載


先日、OMの方からアイコムのIC-3Nのサービスマニュアルを頂きました。いわゆるメンテナンスマニュアルで、回路図や調整方法、部品の情報などが掲載されています。私はIC-3Nをコレクションとして持っていますが、実際に使った事はありません。今回は、このサービスマニュアルを実物のIC-3Nと照らし合わせながら読んでみようと思います。

<注意: サービスマニュアルは非売品。分解は自己責任で>
ユーザーによって分解された無線機は保証の対象外となります。また、販売店を通じてメーカーに確認してもらったところ、「現在では国内向けのサービスマニュアルは無く、修理やメンテナンスについては依頼してほしい」とのことでした。

レトロな装丁

取扱説明書とは異なる装丁で、オレンジ色のバインダーに片面印刷のページが綴じられています。アイコムのロゴも当時のもので、時代を感じます。


“S.57.7”との表記。昭和57年7月に発行されたものか。それにしてはかなり状態が良い

「アイコムの取説がA5サイズの横置きなのは、開いたままにできるように」とは聞いたことがありますが、サービスマニュアルがバインダーに綴じられている理由は不明です。関係があるか分かりませんが、あるOMのシャックでIC-7850を見せていただいた時、取説はバインダー形態でした。


取説のような「中綴じ」や「無線綴じ」ではない「バインダー綴じ」

構成

1章 定格、各部の名称
2章 機構部と分解手順、内部写真
3章 ブロック図、回路動作説明
4章 調整方法、回路図
5章 トラブルシューティング
6章パーツリスト、IC定格表

1章『定格、各部の名称』

冒頭に電気仕様と各部の名称が掲載されています。おそらく取説に掲載された内容と同じです。

2章『機構部分解手順』

内部の回路にアクセスするためには分解する必要があります。ただネジを外せばよいというものではなく、カバーのツメの構造上、取り外し方向があります。

現在は表面実装部品が使われているので部品取り付け面=ハンダ面ですが、当時の無線機にはリード部品が使われているので部品面の反対がハンダ面となっており、外すには基板をシャーシから取り外す必要があります。


IC-3Nは「パカッ」と開くヒンジ構造により半田面にアクセスできる


PTT「釦」(ボタン)。時代を感じさせる表記

分解イラストに部品名称が添えられており、交換部品を注文する際に指定できるようになっています。交換する際の注意点にも触れられています。


板バネが使われたPTTスイッチの交換方法。ネジ留めではなくハンダ付けされているのは意外

分解手順の最後には、基板が露わになった状態の写真が載っています。主要部品の実装位置と名称が付加されています。


主要部品の位置と名称が示された基板の写真


実物と比較すると同じことが分かる

3章『ブロック図、回路動作説明』

周波数変換や増幅段、フィルターなど、回路機能単位(=ブロック)で回路構成が分かりやすく図式化されています。これを見れば、IC-3Nの大まかな回路の動きが分かります。

それぞれの回路ブロックには、使用されている主要部品の名称が添えられています。送信回路部分は、送信機系統図に似ています。


ブロック図を見れば回路の規模や構成が分かる

たいへん興味深いのが、回路の動作を文章で説明している『動作説明』です。アンテナから入ってきた電波が中間周波数に変換され、復調されて音声として出力されるまでの流れと、マイクからの音声で変調が掛けられた送信信号がアンテナから出力されるまでの信号の流れに沿って信号処理が記述されています。


典型的なダブルスーパーの受信回路の働きが詳しく描写されている

主要な受動部品による信号の処理や能動部品の動作が描写されていて、それぞれの役割がわかります。これを読めば無線機の回路の基本的な知識が得られるのではないでしょうか。


周波数シンセサイザーの詳しい説明。初めてアマチュア機にPLLを搭載させたアイコムらしい

次ページは「4章『調整方法、回路図』」

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