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日本全国・移動運用記

第25回 福井県RTTY移動

JO2ASQ 清水祐樹

福井県は東西方向に長い県で、主要道路が山間部を通っている箇所も多く見られます。そのため、1日で複数のQTHから運用しようとすると、場所によっては移動がかなり大変で、運用機会がなかなか無い場所もあります。

今回は、福井県の小浜市と三方上中郡若狭町で、RTTYのみの移動運用を行いました。RTTYの運用の面白い点は、他のモードで運用が盛んな市町村でもRTTYでは多くの局から呼ばれること、CWと同じような文面で交信できてシンプル、RTTYで通信するためのソフトウェアの性能向上の楽しみがある、などが挙げられます。

運用の様子

今回、移動運用を行った小浜市と三方上中郡若狭町は、いずれも北側が海、南側が山というロケーションで、海に近い地域にも高い山がいくつかあることが特徴です。V/UHFであれば、これらの山をうまく利用した運用も考えられますが、HFのローバンドが主体のため、周囲が開けた広い場所を探すことに注力しました。

運用は早朝から開始しました。夜明け前で霧が立ち込めて視界が悪い中、事前に航空写真などで駐車場の存在を確認していた小浜市の公園に行ってみました。ところが、公園は東側が山に囲まれており、東日本方面との交信が難しくなると考えて場所を変更。市内を走り回って、民家から離れており、周囲に高い建物等が無い場所を発見しました(写真1)。


写真1 小浜市での運用の様子

日の出直後の時間帯で、7MHzでは国内局の信号はまだ聞こえませんでした。そこで3.5MHzでCQを出すと立て続けにコールが続き、20分ほどは1分1局のペースでログが進みました。しかし、早朝の時間帯にRTTYをワッチしている局とは全て交信してしまったようで、それ以降はあまり呼ばれなくなりました。このタイミングで7MHzにQSYすると国内遠距離から呼ばれ、次第にコンディションが変化して近距離から呼ばれる様子が分かりました。

続く若狭町は、川沿いで運用しました。アンテナの端を固定する方法を考えたところ、つる性の植物が地面に這っており、支柱を地面に差し込んで固定することが簡単にできました。交信の方は、伝搬の状況が悪く、午前9時近くになっても7MHzが全く聞こえない時間帯がありました。

最後に、南越前町のサービスエリアで、ホイップアンテナを使っての運用にチャレンジしました。好天で気温が上昇する中、周囲にはエアコンを使用している車が多いためバンド全体にノイズが発生しており、弱い信号の解読には苦労しました。

コンディションが良い時期には、7MHz RTTYが混雑して空き周波数を見つけることが難しいこともあります。しかし、今回の移動運用はコンディションが悪く、毎回ほぼ同じ周波数で運用しても、混信になることはほとんどありませんでした。

RTTYの移動運用設備

RTTYの運用ではキーボードとマウス(タッチパッド)を瞬時に操作する必要があるため、超小型PCを操作台(2013年5月号)に設置して使用しています(写真2)。


写真2 RTTYの移動運用設備。超小型PCを瞬時に操作できるように配置している。

筆者のこだわりとして、RTTYの運用でもPCに記録を行わず、紙ログを使用しています。これはログが物理的に破損・紛失しない限りデータ消失の心配が無いことと、運用時の状況を詳細にメモできるからです。

RTTYの運用では、アンテナの利得が高いほど交信がしやすくなります。伝搬のコンディションを考えると3.5MHzと7MHzが交信の主体になると考え、3.5MHzと7MHzは1/4波長の逆L型アンテナ、10~50MHzは3.5MHz用のアンテナに手動アンテナチューナーを利用して同調させることにしました。アンテナチューナーは手動式を使用しています。これは、手動でSWRを低くする操作が面白いことが第一の理由で、他にも、アンテナにトラブルがあった場合にアンテナチューナーの挙動で異常が検知できる、電源を必要としない、といった実用上の利点もあります。

RTTYでは他のモード以上に、ノイズが少ない運用場所を探すことも重要です。近くに民家、工場、送電線、電気自動車などが無いことを確認して運用場所を決めることが、受信能力を高める秘訣です。受信時の波形ひずみを防ぐため、受信機のノイズブランカーやノイズリダクション機能はOFFにしています。50MHzなどで、受信音では存在がようやく確認できる程度の弱い信号がRTTYでは解読できると、耳で受信音を解読した時とは違ったうれしさがあります。

RTTYの送信時の出力レベル調整は、無線機のALCレベルやPo(出力電力表示)で確認する必要があります。筆者はクロスニードル式SWR計を使っています。これは出力(進行波電力)とSWRが同時に確認できる点が便利です。ごく稀に、ケーブルの接触不良やソフトウェアの誤動作などで、送信状態にしても出力が出ない場合がありますが、進行波電力を見ていれば、その手のトラブルはすぐに判別できます。

RTTYは送信出力がほぼ一定の連続送信になるため、必要以上に送信出力を上げると無線機が過熱して故障する可能性があります。筆者は50W出力の無線機で、RTTY運用時は12.5W(25%出力)を目安に出力を調整しています。この程度であれば、長時間の運用でも過熱が起こりません。

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次号は 12月 1日(木) に公開予定

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