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日本全国・移動運用記

第38回 福岡県那珂川市・新市移動

JO2ASQ 清水祐樹

2018年10月1日、福岡県に新しい市“那珂川市”が誕生しました(写真1)。その前後には多くの移動局が現地で運用を行い、各バンドがパイルアップで賑わいました。

市制施行の前日で、筑紫郡那珂川町の最終日でもある9月30日には、九州南部に台風24号が接近するなどの悪条件が重なり、呼ぶ方も呼ばれる方も交信に苦労する様子が伺えました。さらに、那珂川市誕生後の最初の土曜日である10月6日にも、九州北部に台風25号が接近し、現地での運用に大きな影響がありました。

筆者は那珂川市で多くの交信を目指して、2回にわたって移動運用を行いました。今回は、その様子を紹介します。


写真1 那珂川市役所

那珂川市は、どんな場所?

那珂川市は北側が福岡市に接しており、福岡市に近い地域は住宅地、それ以外の多くの地域は山林で構成されている地形です(写真2)。市の北東は博多南駅に面しており、その付近は住宅や商店が特に密集しています。市の中心部近くには田畑もあります。しかし、私有地である、道が狭いなどの理由で、移動運用の場所としては適していません。

那珂川市は東・南・西の3方向が山林に囲まれています。車で乗り入れできるように整備された場所は少なく、V/UHF帯での国内QSOに適した、東側に開けた場所を探すことが困難です。集落から離れた山の上では、インターネットへの接続が難しいという問題もあります。さらに、昨今の集中豪雨の影響で、山地につながる道路では通行止めが相次いでいました。


写真2 那珂川市の様子を表す案内板。航空写真を見ると、住宅地と山林が隣接している地形になっており、広い平地は、写真中央付近の田畑以外には少ないことが分かる。

那珂川町で運用開始

市制施行の10月1日は月曜日でした。前々日の9月29日(土)に現地入りして、夜には十分に休養、30日(日)の午後から運用を始めて、1日午前0時からの那珂川市パイルアップに備える計画でした。

9月29日は、台風24号接近の影響で強い雨が断続的に降っており、地面が未舗装の場所(農道、河川敷など)では運用できない制約が生じました。また、他の運用局と距離が近いと、同じバンドで運用した場合にカブリ(フィルター帯域外の強い電波の影響で、弱い信号が受信できなくなる現象の俗称)が発生するので、他の運用局との位置関係も考える必要があります(詳細は2016年8月号で解説)。

29日は、町役場から離れた、駐車スペースが5台ほどの小さな公園で運用しました。フェンスや植え込みに沿ってアンテナを折り曲げて配置することで、全長80mの1.9MHzダイポールアンテナも設置可能でした。他の場所が利用できなければ、30日以降もこの公園で運用することを考えました。

運用を開始すると、早速7MHz CWで連続して呼ばれ続け、1時間ほどで100局に到達しました。消滅する筑紫郡那珂川町の需要が高いことと、那珂川市でのQSOに備えて機器の動作や伝搬状況を確認するための交信で、パイルアップになったと思われます。7MHzのバンド全域に、OTHレーダーと呼ばれるパタパタという強力な混信があり、受信に苦労しました。

夜には3.5MHzと1.9MHzにQSYしました。筑紫郡の1.9MHzは以前から運用局が少なく、過去には筑紫郡が1.9MHz WAGA(全郡交信)の最後だった局もいました。このバンドは、電離層反射の性質上、基本的に遠距離ほど交信が難しく、6-8エリア間で交信が成立した時のうれしさは特別なものです。8エリアから呼ばれたはずなのにQSBで消えた… 何回呼んでも浮かない… でも数10分後に信号は強くなり一発でレポート599、ということもありました。

那珂川町最後の日に、台風接近

那珂川町最後の日である9月30日は、九州地方南部に台風24号が接近しており、深夜から早朝にかけて暴風雨になりました。昼前から雨は弱まったものの、強い風はしばらく続き、アンテナの強風対策をしながら那珂川町最終日の運用を始めました。

第一候補の運用場所は航空写真で見つけた、地図に公園名が載っていない小さな公園です。主要道路から離れた目立たない場所にあり、他の移動局と重なることも無さそうです。長いアンテナも確実に設置できます。ただし、敷地内にトイレが無く、対応に苦労しました。

台風の後は電波伝搬のコンディションが良くなるという、移動局の間で信じられている噂話?があります。この日も10MHzの近距離の伝搬が良い感じだったものの、通常の移動運用と比べると交信数は少な目でした。台風は東日本に向かっており、早々とアンテナを畳んだり、移動運用を中止したりした局も多かったようです。CQが空振りになると、買い物に出かけるなどして、のんびりと休養しました。

夜には天気が徐々に回復し、他の移動局も準備が整って運用を本格的に開始したことから、自局のCQが長時間空振りすることも多くなりました。午前0時の那珂川市誕生の瞬間に備えて、その30分前までは休養しながら、運用の準備を整えました(写真3)。

23時30分、那珂川市誕生の瞬間に備えて、運用を再開しました。深夜は伝搬の性質上、7MHzで国内が聞こえることは少なく、国内向けに運用可能な周波数は1.9MHzと3.5MHzに限られます。午前0時の新市誕生の瞬間には、SSBは深夜に出られる局数が少ないため、CWの方が激しいパイルアップになります。運用局が多い3.5MHz CWで、パイルアップを受ける準備が整いました。


写真3 車内の様子。長時間の運用に備えて、バッテリー、食料、水、衣類などを十分に用意した。

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