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日本全国・移動運用記

第32回 東京都青ヶ島村移動

JO2ASQ 清水祐樹

東京都青ヶ島村は、東京23区からは350km以上離れた太平洋上の離島にある村で、日本で最も人口が少ない村でもあります。そこで、移動運用のリクエストが数多く寄せられていました。青ヶ島村は交通アクセスが限られており、季節によっては交通機関の欠航の確率が高くなります。台風や大雨が少なく、気候が安定していると思われる4月始めに移動運用を計画しました。

青ヶ島村はどんな所?

青ヶ島村への交通アクセスは、八丈島経由の船が1日1往復、八丈島空港経由のヘリコプター「東京愛らんどシャトル」が1日1往復に限られます。悪天候で海が荒れた場合、船が何日間も続けて欠航することがあります。ヘリコプターは定員が9名で、予約を取ることが難しい場合もあります(写真1)。移動の計画は、最終的にはその時の天候に大きく左右され、場合によっては数日間帰って来られない場合も想定しなければなりません。


写真1 利用したヘリコプター「東京愛らんどシャトル」

青ヶ島村の住所表記は「東京都青ヶ島村無番地」となっています。青ヶ島村に限らず、東京都の島しょ部は、住所表記に「郡」が付きません。しかし、アマチュア無線では、東京都の島しょ部は、「郡」と便宜的に同じ扱いをする「支庁」としてJCG番号(郡番号)が付けられています。大島支庁、三宅支庁、八丈支庁、小笠原支庁がそれらに該当し、交信した郡の数をカウントするJCGアワードの対象となります。青ヶ島村は八丈支庁に属しており、八丈支庁には他に八丈町があります。実際、青ヶ島への交通機関は全て八丈町からの発着であり、文化・慣習も八丈町と青ヶ島村で類似する部分が多いことが分かります。

青ヶ島村への移動

八丈島から青ヶ島へのヘリコプターを事前に予約し、八丈島へは羽田空港から飛行機で移動しました。ヘリコプターは船に比べて欠航の可能性が低いことと、港は村の中心部から離れており島内での移動に時間を要することから、ヘリコプターを利用することにしました。

前日、悪天候で羽田から八丈島への飛行機が欠航しており、予定通り移動運用ができるのか、不安な一夜を過ごしました。当日の朝、羽田空港に到着すると天候調査待ちとなっており、やがて運航が決定されました。かなりの強風に見舞われたものの、天気は晴天に近く視界は良好でした。

機材はレンタカー移動運用セットを利用し、事前に郵便局に郵送しました。ヘリコプターに搭乗する際の手荷物を少なくするため、着替え等も全て郵送にしました。機材が故障した場合、現地で修理することが困難なため、予備の機材も可能な限り持参しました。そのため、荷物の量は通常の移動運用に比べてかなり多くなりました。島内には公共交通機関が無く、島内での移動および運用は全てレンタカーを使用しました。

到着と運用準備

現地では風が非常に強く、気象データでは風速が11m/s、車のドアを開けることも困難になるほどの強風でした。太平洋上の小さな島で周囲に風を遮るものが何も無く、日常的にこのような強風が吹いているとのことでした。青ヶ島村には食堂が無いため、食事は昼食も含めて、宿で事前に手配しておく必要があります。食事の時間に合わせて一旦撤収し、宿に戻ることにしました。

荷物の受け取りや宿の手続きを済ませ、運用場所のロケハンに出掛けました。急斜面や細い道が多く、地図上に道があっても自動車の通行が不可能な場所があります(写真2)。また雨上がりでスリップの可能性もありました。島の南側に行けば、さらに標高の高い場所があったものの、移動に要する時間や安全面も考え、集落に近い展望台の駐車場で運用することにしました(写真3)。


写真2 青ヶ島村の主要道路の様子


写真3 運用場所の様子

北側、つまり本州側は見渡す限り全て海の場所で、ロケとしては良さそうです(写真4)。島では通行する人に挨拶をする習慣があり、この場所はヘリコプターの待合室から良く見えるようで、「1日中ここで何をしていたの?」などと、通りすがりの方から聞かれました。


写真4 運用場所近くから北側を眺めた様子

運用の様子

アンテナの設置を開始する時にも猛烈な風が吹き付けており、運転席側が風下になるように車の向きを決めました(写真5)。工具箱が風で転がってしまうほどの強風で、伸縮ポールを伸ばすにも、風で傾かないようにロープで引っ張ってバランスを取りながら進める、といった状態でした。


写真5 車内の様子

最初の運用は50MHz RTTYでした。アンテナはダイポールアンテナで、給電点の高さは4mほどしか確保できませんでした。本州側は見渡す限りの海なので、海上伝搬に期待が高まります。ところが、CQを出して呼ばれないばかりか、呼ばれても予想以上に信号が弱く、交信は困難を極めました。

V/UHFの場合、大気中に電波を閉じ込めるラジオダクトという層が発生して、電波が遠距離まで伝わることがあります。特に海上伝搬ではラジオダクトの影響が顕著に現れます。しかし、今回の移動運用では、ラジオダクトが無く電波が伝わりにくい状況だったことが、電波伝搬のデータで確認できました。以前に青ヶ島村で運用した方から、モービルホイップアンテナでも144MHzと430MHzで1エリア以外と交信できた、1200MHzも交信できたとの話を伺っていたにもかかわらず、今回の運用ではどのバンドも信号が非常に弱く、目立った成果はありませんでした。

HFでは、昼間の7MHzは長時間にわたって国内からのパイルアップ(多くの局から呼ばれる状態)が続きました、しかし10MHz以上のバンドは伝搬状況が悪くて聞こえる範囲が限られており、交信数も通常の移動運用と比較すると物足りないものとなりました。

夜になると1.9MHzと3.5MHzがパイルアップになり、人工的なノイズが少ないこともあって信号は良好に入感し、多くの局との交信ができました。特に1.9MHzは、通常の移動運用では40 ~50局と交信できれば「かなり頑張った」感じがするのですが、2日間で120局と交信でき、青ヶ島村のニーズの高さが伺えました。帰りは天候に恵まれ、ヘリコプターで予定通り島を出発することができました(写真6)。


写真6 ヘリコプターが離陸した直後の眺め

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