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日本全国・移動運用記

第97回 北海道 道東方面移動

JO2ASQ 清水祐樹

2023年10月2日掲載

前回の記事では、7月の3連休に北海道の道東方面に飛行機とレンタカーで移動した時の様子を紹介しました。8月の夏休みも、北海道の道東方面にフェリーと自分の車で移動し、7月よりもさらに広い範囲で移動運用を行いました。

運用計画

今回は、苫小牧発着のフェリーを利用しました。道東方面の東側、例えば目梨郡羅臼町に車で移動するためには、苫小牧からほぼ一日以上の時間を要します。そこへ向かう途中で、できるだけ需要がある場所、あるいは最近運用していない場所を考えてルートを決めました。特に帯広周辺は今年5月にも行っているので、そこで運用しなかった市町村に行くようにしました(図1)。

図1で、根室市から先のルートが載っていない理由は、後ほど説明します・・・。


図1 今回の移動ルート

8月10日(1日目) 苫小牧市の海岸で運用

北海道に到着して、まずは苫小牧市の海岸にある公園で運用しました。夜間の運用では、ハイバンドの国内向け伝搬は近距離がスキップして、7MHz帯でも国内との交信が難しくなるようなことがあります。しかし、この時の運用は、夜間としてはかなりコンディションが良く、10MHz帯では国内の広範囲が聞こえており、18MHz帯で2エリアと交信できるなど、昼間の通常のコンディションに近いような伝搬条件でした。

8月11日(2日目) 夕張市から、昨年に時間が確保できなかった中札内村へ移動

2日目は、夕張市で運用を開始しました。早朝は、前日から引き続いて伝搬のコンディションが良く、18MHz帯で近距離の局が聞こえていました。その後、占冠(しむかっぷ)村と南富良野町に移動しました。占冠村は、衛星の時間の都合で短時間の運用となり、ハイバンドは運用する機会がありませんでした(写真1)。

南富良野町ではEスポが発生しており、28MHz帯では1エリアや2エリアと多くの交信ができました。その後は、南富良野町から約90kmを移動して中札内村(なかさつない)に向かいました。ここは、昨年8月の運用(2022年10月号の記事)で、大雨により途中で運用を打ち切ってしまったために、交信できなかった局がおられました。その1年後に、十分な時間を確保して再び運用することになりました。すると、伝搬のコンディションが非常に良く、この時期としては珍しく50MHz帯でも多くの交信ができました。


写真1 勇払郡(上川)占冠村での運用の様子

8月12日(3日目) 帯広市から東へ、4か所での運用

帯広市の周辺は市町村の数が多く、これまでの運用でも十分に運用時間を確保できなかった市町村があります。この日は、音更町、幕別町、池田町、本別町の順番で一日に4か所で運用しました。公園や河川敷で運用して、池田町(写真2)以外は以前にも訪れたことがある場所でした。伝搬のコンディションとしては、時間帯によっては浮き沈みがあったものの、前日に引き続いて良い傾向が続きました。

最後の本別町では、28MHz帯で長時間のパイルアップが発生し、50MHz帯を運用する時間が確保できない状況になりました。この後、北見市に2時間ほどかけて移動する予定だったため、運用時間の延長に限界がありました。


写真2 中川郡(十勝)池田町での運用の様子

8月13日(4日目) 北見市から、7月にサテライトが十分にできなかった美幌町に移動

早朝は北見市で短時間の運用を行い、その後で、常呂郡置戸(おけと)町と訓子府(くんねっぷ)町に移動しました。このあたりは農地が広がっていて駐車スペースが確保できなかったり、山に囲まれた場所があったりして、運用場所探しには少し手間取りました。

伝搬のコンディションとしては、あまり良くなかったものの、この時期の平均よりは良い感じで、14MHz帯で1エリアが強力に聞こえても、その一つ上の18MHz帯では全く聞こえない場合がありました。美幌町は7月にも運用していますが、サテライトで十分なサービスが出来なかったために再び移動して、周囲が開けた、前回とは異なる公園で運用しました(写真3)。美幌町で運用した後は、2時間ほどかけて中標津町に移動しました。中標津町に移動する途中で雨や濃霧に遭遇し、気温が急激に下がりました。


写真3 網走郡美幌町での運用の様子

8月14日(5日目) 中標津町、標津町、羅臼町の3か所で運用

移動距離が長くなるため、中標津町、標津町、羅臼町の順で、1日に3か所で運用することにしました。中標津町の朝の最低気温は13度で、前日までは最高気温が30度近くの日もあり、防寒具はしっかり持ってきたものの、足の指先が冷たくなる感覚を久々に味わいました。

ここで、サテライトのRS-44が突然停止したという、残念な情報が入ってきました。この衛星はCW/SSBで交信を行うには最も使える時間が長く、遠距離との通信が可能です。そのため、この衛星が使えない場合、8エリアから国内向けの運用にも大きな影響があります。FO-29は不安定な状態で、いつ使えなくなるか分からず、それ以外に平日にCW/SSBで使える衛星は、パスの終盤で弱くなるJO-97だけになってしまいました。そのため、予定していたサテライトの運用で、十分にサービスできない地点が発生しました。

中標津町ではコンディションが良く、50MHz帯でも交信ができました。ところが、その後の標津町(写真4)と羅臼町ではハイバンドのオープンが無く、伝搬の条件は普通でした。


写真4 標津郡標津町での運用の様子

8月15日(6日目) 台風の影響で、根室市までで運用を中止、さらにFO-29も停波

台風7号が日本海を北上しており、15日と16日は日本海側のフェリーが欠航になりました。当初の予定であった16日の夕方までの運用を変更して、15日午前の根室市までで運用を中止しました。

実は、帰りのフェリーが欠航する可能性は事前に予測しており、台風の影響を受けにくいと思われる太平洋側を運行する苫小牧から八戸行きのフェリーを、保険として予約していました。過去に、台風や大雪によるフェリーや飛行機の欠航を何度も経験しており、欠航が確定した後に代替便を確保することは難しいことを知っていたので、前もって対策を取っていました。また、19日にはハムフェアに行く予定があり、帰りの日程を遅らせられない事情もありました。

さらに、サテライト通信では、衝撃的な出来事がありました。15日の朝5時台に根室市でFO-29を準備したところ、信号を確認できず、停波したとの情報が入ってきました。平日にCW/SSBで使える衛星がJO-97だけになり、筆者がサテライト通信を始めて以来、サテライト通信が最も困難な状況になりました(その後、RS-44は16日の夜に復活しました)。根室市から別海町(写真5)に移動して、JO-97の時間に合わせて別海町で運用し、再び根室市でFO-29の回復を待つものの、サテライトでは別海町のJO-97で交信できただけで、根室市では交信ができませんでした。HF帯の伝搬も悪く、未達成のミッションが残る結末となりました。


写真5 野付郡別海町での運用の様子

根室から苫小牧に7時間かけて自分で運転してから、苫小牧でフェリーに乗船し、八戸に到着した後は、自宅まで約1,000kmを自分で運転して帰りました。

結果

運用地点別のQSO数を表1に示します。運用地点間の距離が長く、運用時間を十分に確保できなかった日もあるため、1日1,000QSOは12日の1回だけの達成になりました。


表1 QSO数の集計。1.9~50MHzはCW、サテライトはCW/SSB。

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