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おきらくゴク楽自己くんれん

その2 50MHzポケットダイポールアンテナで入賞を目指す!? ~ALL JAコンテスト参戦記~

JF3LCH 永井博雄

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皆さん、こんにちは。先月作った50MHzポケットダイポールアンテナ。せっかくですから抜群の携帯性を生かして活躍させる機会はないものか?と思案していました。

4月24-25日に予定されていたALL JAコンテストに参加して自動車では行けないような抜群のロケーションから運用できればゲインの少ないアンテナでも多くの局と交信できてマルチも稼げて、そしてうまくすれば入賞も狙えるかも?と考えました。

1. 入賞を狙うプランを考える

参加バンドはもちろん50MHzバンドでシングルオペレーターの部門。50MHzは各エリアで入賞があり入賞確率が高くなっています。しかしガチンコ勝負な電信電話部門では強力な常勝局に太刀打ちできません。多エレメント高ゲインのアンテナと50W出力のライバルが沢山参加しています。しかしQRP部門であればみんなローパワーです。持ち前?のフットワークを生かし高い山の上で運用すれば入賞できるスコアを獲得できそうです。ここ数年のコンテストの結果を参考にスコアの目途を立ててみます。運にもよりますが頑張れば何とか入賞がかなうかもしれない。ということでシングルオペ電信電話QRP部門に参戦することにしました。

それではどこで運用するのか? 私の住んでいる所から「飛び」だけを考えれば過去に登って運用したところで最も高い大台ケ原日出ケ岳(1695m)に登るのが一番いいのは間違いないでしょう。50MHzでQRPの5Wでも大票田の2・3の両エリアはいうに及ばず遠い1エリアでも強力局となら交信できそうです。ただALLJAコンテストは夜21時に開始します。真っ暗な人のいない山頂で一人夜通し過ごすのはビビリな私にはとてもできそうにありません。かといって明るくなってからの参加では交信できる局数が限られ入賞が遠のきます。そこでコンテスト共通規約(3)にある「コンテスト参加の目的で常置場所を離れ移動運用する局かつシングルオペに限り、運用開始時のマルチプライヤー内の運用場所変更を認める。」というのを積極的に活用しようと考えました。つまり、コンテスト開始後しばらくは安全でそれなりにロケーションのいい場所で運用し出来るだけ交信数を増やしておいて、夜明けからは同じマルチエリア内のもっといいロケーションから運用ができるわけです。

ということで
コンテスト開始21時から2時間程度、三重県名張市の山の上で運用。仮眠休憩後2時間程度車で移動してから登山。三重県多気郡大台町の大台ケ原日出ケ岳で運用

と、けっこう強硬なスケジュールであまり「おきらく」ではないのですがFBな計画ができました。問題は天候と4月初めに入院して落ちるところまで落ちてしまった体力がもつかどうかです。(汗)

週刊天気予報では当日は曇り主体のなんとも微妙な感じでしたがズレていくことを祈っておきます。

2. 参戦準備とコロナ対応で参加部門変更

今回使用するリグは機動性抜群のIC-705にいつも大容量のBP-307を装着しています。ID-51も持っており純正バッテリーパックBP-272は3個持っています。これだけあれば5Wで合計8時間以上の運用ができそうです。運用地を移動中に車内等で充電もできるのでそれ以上の時間の運用も可能です。

しかしコンテストが近づくにつれ、新型コロナ感染症の勢いが増し、第4波の感染者の増加が叫ばれるようになりました。JARLでもコンテストでは感染予防に努めるように呼びかけられています。運用予定の山では通常より少ないでしょうがそれなりの数の登山者が訪れることが予想されます。声を出さないといけない電話モードでは気をつけていても思わず大声になったりする心配があります。そこでそういう心配のない電信モードでの参加に切り替えることにしました。声を出さずにもくもくとパドルを叩いていれば周囲に人がいても他人に心配を与えることは少ないだろうという判断です。

電信モードでもQRP部門の入賞はあるのですが、5W出力の電信では交信することができる局数がかなり少なくなり退屈なように思えたので、IC-705の最高出力である10Wで運用する電信部門Mにエントリーすることにしました。50Wの移動局と真っ向勝負となり入賞の可能性は低くなりそうな気がしますが過去参加している局の設備や運用地、ここ数年の結果などを参考に分析。アンテナの機動性を活かしFBなロケーションを味方にすればがんばり次第で入賞の可能性は十分にあるだろうと判断しました。

コンテスト参加のために用意した物

50MHzポケット
ダイポールアンテナ

IC-705
(BP-307付)

PDモバイル
バッテリー 2個

PDモバイル用12V
トリガーケーブル

RG-58U/A同軸5m
M-BNCコネクタ付

3m伸縮ポール

ポール固定用
ソフトワイヤー各種

ノートPC

移動用携帯
ミニパドル

パドル用
3Pケーブル

ID-52

コネクタ・金具類

これらと水や食料などをバックに詰めると8㎏以上の重さに

IC-705で10Wを出すためには外部電源が必要です。今回はPDモバイルバッテリーと12Vトリガーケーブルを使う事にしました。12Vだと10Wから少し出力が下がりますが僅かな低下です。運用上全く影響はないでしょう。その分電池の寿命が延びることの期待し12Vのトリガーケーブルを選択しました。PDモバイルバッテリーは念のための予備を含めて2個持っていくことにしました。

直前の天気予報では祈りが通じたのか当日の現地大台ケ原の天気はよさそうです。いよいよALL JAコンテストの時を迎えます。

3. コンテストがスタート

初日は21時から2時間限定の運用としました。日出ヶ岳と同じ三重県(21)で私の家のある奈良県との境にある山(約530m)に車で行き運用しました。移動コンテスター御用達の青山高原まで行けばもっと多くのQSOを積み上げることができたかも知れないのですが、遠いという事と有名移動地ですから他局とのバッティングやかぶりを受けやすい事などのリスクを考えこの場所にしました。


初日の移動地から見るふもとの町の夜景

この場所へは車で来ましたのでポケットダイポールを7mの高さまで上げて出来るだけ良い条件でアンテナの特性を活かしながら局数を稼ぎます。マルチプライヤーは明日とればいいと割り切りとにかく交信数を増やすことに専念しました。開始後2時間を経過、23時を過ぎたころで50QSO程度ができました。10Wとダイポールアンテナでこれだけできればまずまずです。

ココでの獲得マルチプライヤー13でした。遠くは千葉県(12)の局と交信できました。この場所から10W出力のダイポールで1エリアと出来たのは予想外のうれしい誤算でした。明日もっとマルチを増やす予定ですが未だ近場の滋賀県(23)・和歌山県(26)・岐阜県(19)が出来ていません。このことが翌日に響くことになりました。


おぼろ月に照らされるポケットダイポールと電波塔

まだバンド内は賑やかでしたが明日運用する場所までの距離も遠く、担ぎ上げもあり疲れが溜めてしまっては運用ができなくなるので後ろ髪を引かれる思いでアンテナを片付け現地を離れました。

4. 大台ケ原へ向かう

ノートPCなどの充電している間に仮眠をとってから車を走らせました。6時頃の運用開始を目指しまだ暗いうちに大台ケ原ドライブウェー終点の駐車場・登山口に到着。早速、山頂を目指して歩き出します。いつもの休日なら日の出が目当ての人などを見かけるのですが駐車場に多くの車が止まっていたものの、外出を自粛された人が多いのか登山道では孤独な歩きとなりました。あまりに静かで少し不安になってきた頃、重いバックを背負いゼイゼイ息を切らして歩く無線家は、全く普通呼吸の美人山ガールさんに華麗に抜きさられてしまいました。(笑)


静かな登山道は朝5時を過ぎるとかなり明るくなった


途中朝日が昇ります睡眠不足の目には眩し過ぎ

この登山道は「登山というには楽過ぎる」とよく言われますが、最後に急な坂と階段があり病み上がりの虚弱体質な睡眠不足で荷物持ちにはとてもしんどい登山でした。


何とか山頂展望台が見える所まで来ました


山頂に到着

到着した時、山頂付近には3人ほどおられましたが、すぐに離れられ私一人になりました。気温は低く体感では+2~3℃くらいでないかと感じました。もう一枚羽織るものを持ってくればよかったと後悔しましたが日が昇り気温が上がれば何とか過ごせそうです。

4月はまだまだ寒い日が多いです。ALL JAは以前4月28-29日の固定でしたが、土日開催になってからしばしばこういう寒い日に当たることが多くなりました。令和になっても4月29日が祝日なのは変わらなかったのでALL JAコンテストは元の28-29日固定に戻していただきたいと個人的に思っています。


早速ポケットダイポールアンテナを設置

しばしの休憩後、展望台の片隅にアンテナを取り付けます。幸い展望台に他に人はいなくて作業に支障はありませんでした。あとで登山者が来た時のことも考え遠慮気味?に移動シャックを設営。予定の6時を少し回りましたが運用準備が整いました。

5. 日出ケ岳山頂での運用を開始


さあ、飛ばすぞぉー

準備が整い運用開始早々、昨日出来ていなかった岐阜県(19)の局をゲット。その後この日初めての1エリアは何と群馬県(16)、そしてふわふわ浮き沈みしている6エリアの熊本県(43)・宮崎県(45)と交信出来て幸先のいい2日目スタートを切りました。さすがは三重県最高峰、ココまで登ってきた甲斐があったと喜びを感じながら運用を続けます。

しばらくして「アマチュア無線ですか?」と声をかけてくる方が。2人組さんで聞けばフリーライセンスラジオを楽しんでおられる方々でした。デジタル簡易無線や特定小電力を楽しまれるということでした。特小で思わぬ遠距離交信ができたらしく多いに盛り上がっておられました。

グランドウェーブの伸びはよくありませんが浮いたり沈んだり。それでも1エリア各都県は少しずつクリアしていきます。私の10Wの信号は1エリアでは弱いのでしょう、何度もコールサインやコンテストナンバーの再送信を要求されましたが9時前頃までに1エリアのすべてのマルチをクリアすることが出来ました。しかしなぜか滋賀と和歌山がまだ残ってしまっています。滋賀とつながるかなと南北方向にアンテナを振ると福井県(29)と石川県(30)をゲットしました。これはこれでヨシです。(笑)

そうこうしていたすぐあとに滋賀県(23)をゲットすることができました。


気温は低いものの昼間はいい天候に

お昼ごろになると登山ツアーらしき20名ほどの方々が展望台を訪れました。一気に展望台が密になりましたので一時運用を止め下に降り人が少なくなるのを待ちました。しばらくしてご一行が離れられたので運用を再開します。ここまで期待していたEスポのオープンは確認できず近隣の地域の局との交信が続き次のコンディションの変化を待ちます。

11時を過ぎ西方向が良くなりました。愛媛県(38)をゲット。12時を過ぎ広島県(35)・高知県(39)を続けてゲットしました。しかし未だにすぐ近くの和歌山県が残ってしまっています。まさかこのまま「ノー和歌山」で終了か?と不安になっていた13時過ぎ、向こうから呼んできていただきやっとゲット。心の中で一つの区切りがつきました。

それからもしばらく運用を続けましたが新しい局を見つけることが難しくなり長らく運用されていたフリーライセンスの方もいなくなり展望台は再び私一人になりました。当初はPDバッテリーがなくなるまで続けようと考えていましたが、14時を過ぎても残容量は半分程度。恐るべき高容量です。予備を使えばコンテスト終了の21時まで余裕で持ちそうです。しかし寒い中座り込んでの運用を続けるのがとても辛くなってきました。新しい局と次々繋がるのであればモチベーション上がるのですが…。それに暗くなる頃まで続けると安全に帰れそうにないで「そろそろ潮時か」と考え15時頃撤収を決断しました。

ここまでポケットダイポールアンテナはトラブルなく終始安定動作してくれてコンテスト移動は大成功で終了しました。


5分とかからず撤収が完了

6. まとめ

期待していたEスポ伝搬には遭遇できませんでしたが合計で150を超える交信数と28のマルチを獲得することが出来ました。10Wとダイポールアンテナでこれはなかなか良い出来映えではないかと自画自賛しています。過去50MHz移動運用でのALL JAで、Eスポの発生がなければ6エレ八木+50W出力での運用と同等のマルチ獲得ではないでしょうか。これであれば入賞の可能性をある程度は残せたのではないかと思います。のちに発表となる結果が大変楽しみです。

このようにこのアンテナは作る楽しみだけでなく最近流行りのポータブル機と相性が良く機動性をいかした楽しみを与えてくれるとてもいいアンテナだと思います。特に塩ビT字管を利用した給電部は大変頑丈で、今回の展望台2階から地面に誤って落としてしまいましたが破損することなく使うことができました。つけ外しが簡単にできコンパクトに収まるサイズで運びやすく今回のような担ぎ上げでの運用では強い味方となるでしょう。コンパクト無線機をお持ちのみなさんにぜひ作っていただき大いに50MHzを楽しんでもらえればと思います。

最後になりましたが、コンテストでこちらの弱い信号を懸命にとって交信していただいた皆さん本当にありがとうございました。またよろしくお願いします。

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