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おきらくゴク楽自己くんれん

その4 【格安の直流インバーター溶接機で】 お手軽移動用タイヤ踏みベースを作る

JF3LCH 永井博雄

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皆さん、こんにちは。これまでアンテナ製作・改造の記事を続けてきましたが、今月はアンテナの足元に注目したいと思います。

アマチュア無線を始めた頃、6mの移動運用に興味がでてきて一番困ったのが移動運用に使う用品をそろえるのにお金がかかることでした。今ほど諸材料や用品の値段が高くはなかったものの、お化けポールと呼ばれたフジインダストリーの伸縮ポールや専用タイヤ踏みベースなどの購入は小遣いの少なかった稼ぎの悪いサラリーマンにはかなりの負担でした。そこで知り合いの溶接機を持っている方にお願いしオリジナルのタイヤ踏みベースを作ってもらったこともありました。

その後長らく作ってもらったベースや中古で譲ってもらったメーカー純正ベースなどを使用していましたが、最近ではHFやV・UHFでのお手軽装備での移動運用が多くなり使用するポールもホームセンターに置いてある3,000円ほどの伸縮ポール(6mまで伸びる)を使うためそれに合わせた小さなタイヤベースが欲しいなと思っていました。


締め付けリングが太く扱いやすい6m伸縮ポール

この伸縮ポールですが、少し細いので大きなアンテナを上げることはできませんが、安い上に軽くて締め付けリングが大きくて扱いやすく6mも伸びるので気構えすることなく気軽に移動運用に持って行くことが出来ます。あればとても便利なので移動運用を始めようという方でまだ持ってない方には是非とも購入されることをお勧めします。

1. 知り合いの鉄工所屋さんに

ある日知り合いの鉄工所屋さんにお邪魔した時、廃棄の材料の中に鉄パイプとC型鋼材が目に入りました。それだけでタイヤ踏みベースが作れそうなことに気が付きました。そこでお願いをしてタイヤで踏める形に溶接してもらえないか頼んだところボランティアで下の写真のものを作っていただきました。


プロに溶接してもらった廃材利用のプロトタイプ?

このベースはホームセンターで売られている6m伸縮ポールが使えるようにと考え作ってもらいました。パイプは足場用鋼管で内径48.6mm、厚みが2.4mmですから内径は43.8mmとなっています。太いポールは挿さないので割り切ってベース自体を小さくしてコンパクトカーでも無理なく運べるようなサイズにしてもらいました。


プロトタイプで踏んでみた

早速自家用車のタイヤで踏んでみたところ、幅60mmのC型鋼材ではちゃんとタイヤが踏んでいるのかがわかりにくく、車を動かしながらタイヤと鋼材の位置関係を監視しながら作業する必要があり、使い勝手が良いものではありませんでした。しかし材料加工費がタダでしたのでそのくらいは我慢ガマンとありがたく使うことにしました。

しばらくして、バイク関係のネット動画を見ていますと最近はAC100V電源の溶接機で直流インバーター方式のものがあり以前からある交流トランス式と比べて格段に扱いやすくなっているというのを知りました。しかもネット通販で海外メーカー製なら1万円もしない価格で手に入るそうです
「これなら作ってもらったようなのを自分で作ることが出来るかも?」
と、過去溶接の経験はない私ですが何だかワクワクした気持ちが湧いてきてしまいました。

2. 格安溶接機の購入

早速ネット通販で「100V 溶接機」と検索して、画面に出てきた品物で安いものを選んでポチっと注文してしまいました。これがはやる気持ちを抑えきれずにやってしまったミスで、届いた溶接機は200V用でした。注文前に検索したワード通りの品物なのかどうか? よく注意することが必要でした。仕方がないので面倒ですが家のリビングのクーラー用200Vコンセントを延長し外に出して使ってみましたが運がいいのか悪いのか、グランド側のコードコネクタが不良でスッポ抜けてしまい使うことが出来ません。購入したWEBショップに連絡して不良部品の交換を要望するも部品だけの発送はできないということでしたので丸ごと返品することになりました。

改めて不良品を扱っていたWEBショップとは別のサイトで1万円以下の100/200V兼用タイプ、AT2000というモデルを見つけ入手しました。国内メーカー品でも同等以上の仕様のものが売られています。しかし価格は1.5倍以上になるようです。今回のような不良品トラブルが嫌いでアフターも心配、という方は国内メーカーの製品を選ばれればいいと思います。トラブルがあるかも知れない、という事を覚悟されるのであるならば安い製品に挑戦されればいいと思います。


苦労の末、届いた100/200V溶接機

3. 必要な材料をそろえます

今回使用するカラーC型鋼(60x30xt1.6x6m)はめったに家で使うことはありませんのでかなり大きな店舗でも普通のホームセンターには置いていません。ホームセンターチェーンのプロ向け店舗で購入しました。それも色々なサイズのうちあまり売れないこのサイズが在庫で残っている、といった感じで他のサイズの鋼材は置いていませんでした。地域によっては全く違うルートで鋼材を探さなければならないかも知れません。その場合は近くの鉄工所などに聞いてみるのもいいでしょう。

ホームセンターチェーンのプロ向け店舗で購入品リスト

カラーC型鋼60x30xt1.6x6m 1本 足場用パイプ 1m 1本
溶接棒低電圧用 φ1.6mm 500g 約72本 ラッカースプレー 銀色
溶接用保護面 ワイヤブラシ

足場用パイプ1mの価格は500円。カラーC型鋼は2000円ほどでした。長さは6mもあります。たまたま購入した店舗では高速切断機を貸してくれて自由に使えるサービスがありましたのでパイプと合わせてあらかじめ決めていた寸法に切らせてもらいました。それでも5mを超える余りがでます。これではたとえ軽トラックで行ったとしても積んで帰ることはできません。車に載せることのできる長さに切断して持って帰りました。お店で材料を切らせてもらえるか? これが購入先を決める重要な要素です。アークの光を直接見ないよう溶接用保護面は必ず要りますし溶接用マスクもして作業してください。溶接後ワークを叩いてスラグを除去するための先の尖ったハンマーとワイヤブラシも必要です。


購入店舗で必要な長さに切らせていただく

4. アーク溶接初体験

買ってきた鋼材の余りを使って初めての溶接に挑戦します。


余った鋼材を使って初めての溶接練習。お約束のボロボロ状態

溶接機本体は非常に軽くてとても扱いやすいものです。しかし不器用人間の初めてのアーク溶接、アークの出し方や棒の運び方などなかなか動画などで紹介されているようにはいきませんでした。アーク溶接作業はハンダ付けのような感覚では全く上手くいかないということ。ハンダのように溶接棒を押し付けると写真のようにワークに大穴が開いてしまいます。溶接棒とワークの間隔は一定程度を保ったまま移動させることが上手くいくコツだということですがなかなかビビッてしまい上手くいきませんでした。意識をすればするほど棒が離れてしまい全然くっついていませんでした。しかし押し付けるとすぐに穴が開くということは裏を返すとこの100Vで動作する溶接機のパワーが凄いことを確認できました。

【くんれんコラム】
直流インバーター式アーク溶接機とは?


従来のアーク溶接機は変圧器で電圧調整した交流電流を使っていましたが溶接機自体も重くアーク電流も安定せず扱いにくいものでした。100V電源ではなおさら扱いにくいものでしたが最近では半導体デバイスの進歩のおかげで低価格で扱いやすい溶接機が出回るようになりました。

原理は乱暴な言い方ですが基本的にアマチュア無線の世界でもよく使われるようになったスイッチング方式の安定化電源と同じ原理で軽量コンパクトできる溶接装置です。商用交流電源を整流、IGBTなどパワー半導体でスイッチングし高い周波数の交流に変換、高周波トランスで変圧した後、再び整流して効率良く大きな直流アーク電流を得ています。従来AC100Vでは使い物にならないと言われていたのですがこの方式により初心者でも扱いやすいアーク溶接機が作られるようになりました。すごい進歩ですね。




5. とにかく形にしてみましょう

まずはC型の隙間にパイプが入るようグラインダーとヤスリを使って切り欠きを入れます。アークが飛びやすくなるよう接合部付近の錆止め塗料を削っておくといいようです。SNSで教えていただいたのですが足場パイプの表面は亜鉛メッキされていて上手くアークを維持できないのでこれも削っておいた方がいいようです。


スキマにパイプが入る様、グラインダーで削る


パイプをはめ込んで確認


この形で溶接します


作業中の様子


なんとか溶接完了

何とか各部材をくっつけるという最低限の条件は満たすことが出来たようです。


これのスプレー塗料は某100円均一で購入

塗装して仕上げればパッと見たところの印象が大きく変わりました。つまりごまかすことができましたhi。


塗装完了 この後踏みつけ部左の不要な部分を切除


実物の各寸法を示します

6. テスト運用


試しに踏んでみます

試しに踏んでみますとプロトタイプの時のような踏み越えてしまうことは減りましたが踏む部分の高さが30mm+板厚1.6mmの約32mm程度上がってしまうので車の傾きが大きくなってしまいます。これは移動地に平らなところが少ないので車の向きを工夫するなどして対応していきたいと考えています。
使用する伸縮ポールがパイプ径よりかなり細いので斜めに切った木材などを用意して隙間を埋めて対応したいと思っています。パイプ横に穴をあけてナットを溶接したりすれば調整ボルトなどでスキマ分を止めることもできるのでしょうが溶接難易度が非常に高そうなので今回はパスしました。


テスト完了後2号基に挑戦

今度こそはと2号基を作ってみましたが溶接の品質はさほど良くはなりませんでした。まだまだ多くの修行が必要なようです。2号基は隣接JCCの移動運用家の方にモニター使用してもらうようお願いをしております。

7. まとめ

溶接は思っていたより難しかったですが、何とか使えそうなものが出来て喜んでいます。当初の予定通り軽自動車でも写真のように気軽に運ぶことが出来る満足いくものが出来たのではないかと思っています。溶接機や用品の購入など使った費用でメーカー製のタイヤ踏みベースを買ってお釣りがくるくらいですがまだまだ材料が余っているので製品?単価はまだまだ下げることが出来そうですhi。

持ち運びを重視したため耐久性については未知数ですが、見た感じではそんなに心配ではありません。もちろんお気軽運用を想定していますので風の強い日など悪条件下では使用しないように考えています。


軽自動車後部座席でもこんな風に収まります

このタイヤ踏みベースにFBな名前を付けてあげたいと思ったのですがいい名前が浮かんでこないのでSNSでつぶやいたところ昔6mの移動運用家が愛用した大型タイヤ踏みベース「いこみゃあ」の開発者JF2CRPさんから気軽に移動に行こう、移動運用に参ろう「MY郞」(まいろう)という名前をいただきました。ちなみに「移動運用、我が道を行く」My ROADの意味も含んでいるそうです。お気軽移動用ではありますが、奥の深い移動用品になりました。


命名 移動運用に参ろう「MY郎」

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