My Project
2026年3月2日掲載
2枚の両面基板で構成されており、機能的には「制御およびAF部」と「RF部」で分けられています。表面上にはベタアース(GND面)が無く、両面基板なのでベタアース層もありません。両基板のあいだに挟んだシールド板にGNDを数カ所接続することでGND面としているようです。両基板はフラットケーブル(FFC)1つで接続しており、自社製汎用モジュールも使って回路構成をシンプルにしている印象を受けます。

筐体のフロントとリアは2本のネジとツメだけで結合
金属シャーシがなく、構造としては特小トランシーバーに近い
800MHz帯の携帯電話用ホイップアンテナが使われており、給電部のマッチングで144や430MHzという周波数に合わせています。波長に対してエレメントの実効長が極端に短いので、飛びは良くないと思われます。
ちなみに、携帯電話の機種によっては直線エレメントと先端部分のコイルの2つに分かれていて、アンテナ収納状態でも先端のコイル部で基地局からの信号を受信(=待ち受け)できるようになっていました。

アンテナの引き込み構造。エレメントを伸ばすと給電部と接続。縮めると切り離される

シンプルなアンテナマッチング部
まず基板を見て思ったのは、表と裏だけのパターン(2層基板)なのにジャンパーがほとんどない点です。当時のCADがどのようなものだったのか知りませんが、アートワークが上手だと言えます。
基板上の空きスペースをGND面にするのが今ではセオリーですが、前述のようにシールド版がアースとなっています。出力が100mWとかなり小さいことから、高周波電流への配慮があまり要らないこともあるかもしれません。実際、パワーモジュール基板へのGNDも3本のリードを介しています。それでも、表面実装コイルは向きが互い違いになるように配置して誘導結合を防ぐ配慮がRF回路基板の裏面に見られます。
ビープ音の鳴動には圧電サンダー(コンデンサマイクの横)を使うことでAF回路の簡素化を図っているようです。スピーカーから鳴らすよりチープな音がする感じは否めませんが合理的な方法です。
内蔵スピーカーには樹脂製コーン紙を使った防水タイプが使われています。AFアンプが小電力用で、スピーカーの径もかなり小さいので大きな音は出ないのでしょう。まさに携帯のように耳に当てて運用するスタイルです。
メイン基板の裏に電源回路があり、部品から推測するに昇圧をしているようです。ただ、AF出力が20mW、送信出力が100mWなので、全体的に低電圧動作しそうな感じがします。また、広帯域受信機能も無いので第1LO周波数の発振に広い電圧範囲を必要としたり、LCDバックライトのLEDを直列して使っているわけではないので高電圧を必要としているわけでもありません。ただ、ニッカド電池、すなわち電源が3.6V(1.2V×3本)の場合は電圧が低すぎるので昇圧が必要と言えます(なお、DTMFデコードICの電源はデータシートによると4.5V以上です)。

メイン基板の表。厚みのあるMCUに時代を感じる

メイン基板の裏

後付けのトランジスタへのリード配線
受信回路は典型的なダブルスーパーで、第1IFが30.825MHz、第2IFが455kHzです。第2IF回路がモジュール化されているので分かりませんが、おそらく標準的なIF ICが使われていると思います。

RF回路の基板の表面。真鍮製のカバーの中がVCO

RF基板の裏面。表面実装コイル(藍色)は向きが互い違いになるように配置されている
送信アンプのほか、PLL回路やIF回路もモジュール化されています。基板上のスペースを節約するためと、ほかのモデルと共通化のためでしょうか。

VとU、それぞれ専用の送信増幅回路モジュール
ほかのモデルではドライバモジュールとして使われているのかも?

コーティングが施されモジュール化された第2IF回路

PLL回路モジュール。送信機系統図によるとPLL ICは『M64070GP』
私は某雑誌で軍用無線機の分析記事を連載していますが、昔の無線機は今とは異なる部材や技術、アプローチで作られているので、調べてみると面白いです。特に今回のようなコンセプトのはっきりしたユニークな無線機の「コンセプトを維持しながらどこまで実用性を出せるか」というチャレンジを垣間見ることができました。
私は、コンセプトとは「捨てる」ことだと思っています。「できたほうがいいな」「付いていたほうがいいね」といった要素を捨てて、そういったものが無いことを使い手が意識すらしないくらい特徴が際立っていること。それがコンセプトだと思います。
実はこのところ製作意欲が湧かず、製作系の記事を掛けておりません。ネタ自体はたくさん持っているのですが、製作や検証ができず困っています。コーナーのコンセプト上、簡単な工作でもMy Projectらしい製作記事を書きたいのですが。それでもよければ今後ともお付き合いをお願い致します。
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