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今月のハム

JA4DPL 吉房幸治さん

2025年12月1日掲載



広島県東広島市在住の吉房幸治さん。中学3年生だった1961年にJA4DPLを開局した。開局以前より電気に興味を持ち、工業高校を卒業後はシャープ株式会社へ就職した。シャープ退職後の現在は電子回路設計や製品品質管理部門などの仕事をしながら、今年10月に開館した東広島ラジオ博物館の館長も努め、そこでは包丁研ぎから電化製品の修理、エンジン草刈り機や耕運機などの修理も行っているという。

雑誌広告でアマチュア無線を知り、中学生で開局

吉房さんは中学2年の頃、雑誌でアマチュア無線の通信教育の広告を目にしたことがきっかけでアマチュア無線に興味を持ち、その後独学で電話級アマチュア無線技士の勉強を始めた。中学3年生だった1961年4月に当時住んでいた岡山県から試験会場である広島県へ受験に出かけ、無事合格しすぐにTX-88Aと9R-59で開局したそうだ。開局後は当時出始めのSSB送信機を雑誌の記事などを見ながら、仲間で自作にチャレンジしたという。

工業高校入学後は、もともと電気の知識や技量を持っていたことから、高校1年生で電気工事士の資格を取得した。無線活動は高校から就職までの間は、電話のみを楽しんでいたという。就職後は2アマへステップアップし電信の運用も始めた。また1アマはしばらく後に取得したそうだ。

就職後は海外での運用も

就職後はトランジスタラジオなどの回路設計を担当したが、1978年ころから海外工場の立ち上げに参加し、1980年代はマレーシアの出張の度に、出張先のホテルの窓から釣り竿で吊下げた垂直ダイポールを使用して、9M2/JA4DPLのコールサインで21MHzの運用を行った。当時はコンディションも良かったため10Wで十分楽しめたそうだ。

またマレーシア駐在員の9M2TD内野氏のシャックを訪問して、ホテルに設置した仮設アンテナより良いアンテナを使用した運用も経験した。マレーシアで開催されたSEANETへ参加した時は30kg以上あるリニアアンプをハンドキャリーで持ち込んだこともあったそうだ。

また、中国への出張の折には、現地のクラブ局でのゲスト運用も行ったが、仕事が忙しく中国ではあまり多くは運用できなかったそうだ。

英語や、ドイツ語、そして中国語に堪能な吉房さんは、出張先でアマチュア無線家と知り合いになることが多く、出張先で現地のハムクラブのミーティングやパーティなどに誘われることも多かったという。時には無線機の修理やアンテナの調整、無線機を持ってきてほしいといった依頼を受けることもあったそうだ。

就職当初はトランジスタラジオなどの回路設計をしていたが、所属していた部署が音響システム関係だった事から、ラジカセ、そしてCDラジカセの開発と進み、設計・開発対象が磁気テープから光磁気ディスク(CD,MD,MO,BD,DVD)のピックアップ関連へと移っていった。

そのような経歴からラジオ博物館の収蔵品であるラジカセなどの修理はこれまでのノウハウを活かし、ポイントを理解しているため難なく対応できるそうだ。


ラジオ博物館に展示されているCDラジカセ群。この中にも吉房さんが開発に携わった機種もあるとか

無線活動

吉房さんは呉市の野呂山にもシャックを構えている。バックホーで敷地の整地やシャックまでの道路の整備を自身で行い、タワーの建設やアンテナの設置も高所作業車などを使って行った。仲間に手伝ってもらい作業を進めたそうだ。


野呂山シャックでのアンテナ作業
ブーム長17mの21MHz帯7エレモノバンド八木アンテナを一人で設置中


21MHz帯7エレ八木
25mh


7MHz帯3エレ八木
15mh



430MHz帯31エレ八木×2パラ×2段
15mh(エレベータ式)


144MHz帯13エレ八木×4パラ×2段
27mh(クランプアップ式)


野呂山シャックの標高は約820mあり周囲約30kmはシャックより高い山がほとんどないため抜群のロケーションで、1kWの免許を受けて国内局、海外局との交信を楽しんでいるという。またVUHFの飛びも抜群で144MHz帯や430MHz帯では仙台から沖縄まで交信できるそうだ。特に144MHz帯のアンテナは13エレ八木×4パラ×2段を設置しており、250mWのハンディ機で2エリアと十分交信でき、HF帯ではアンプなしの100W程度でヨーロッパやアメリカなどからパイルアップになり十分楽しめるそうだ。

吉房さんはコンテストにも参加しており、ほとんどがマルチバンド部門にエントリーしている。海外コンテストでは相手によって英語、ドイツ語、中国語を使い分けているため、交信相手が驚くこともあるという。


国内コンテストの賞状

修理屋工房

小さな頃より機械いじりの得意な吉房さんは持っている技術を活かして、以前より様々なものの修理を行っている。無線関係では無線機本体はもちろん、ローテータなど周辺機器の修理、アンテナやタワーの工事、そして包丁研ぎやラジカセ、エンジン草刈り機や耕運機のエンジン修理や電気工事までも行っており、ラジオ博物館の片隅に「修理屋工房」と看板まで掲げている。


修理屋工房の看板

取材時にはオープンリール式テープレコーダの修理中で、修理品が修理ベンチに置かれていた。またこの取材中に「ラジカセを直してほしい」という近所の方も訪れていたほど。なお、大きなものは現地へ行って修理するそうだ。


無線機テスターなど各種測定器が並ぶ中、修理中のオープンリール式テープレコーダが置かれていた

今後もラジオ博物館や修理屋工房での活動を通じて、ものづくりや修理などの機械いじり、そしてその技術などに興味を持つ人が多くなれば嬉しい、と吉房さんは話していた。

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