Summits On The Air (SOTA)の楽しみ
2026年7月15日掲載
今年度は「登山にチャレンジ」というテーマで、これから登山を始めてみようという方のために安全管理そして楽しく山に登ることのできるように初歩的な内容の記事を投稿しています。登山ガイド、国際マウンテンリーダーの資格保持者である筆者からの知見でいくつかに分けて掲載してみたいと思います。
登山はとても楽しいスポーツ、レジャー、リクリエーション活動です。しかし一歩間違うと直接「死」に直面する面もあります。これら登山の危険な面をあらかじめ知っておくことでその対策にもなり、また実際にその危険に立ち向かったときの対処の参考ともなりますので、あらためて体系立ててまとめてみたいと思います。
単に漠然と登山は危険という認識では何も役立ちませんので、具体的にどんな危険があるのか、そしてそこから危険を避ける判断につなげていただけたらと思います。
熱中症は夏の高温、多湿環境下において自分で体温調節ができなくなる症状です。炎天下の中でしかも湿度が高いときに、発汗による汗の気化熱での体温調節がとれず、次第に自分の体温が上がっていくとめまいや頭痛、吐き気や痙攣などがおきる症状です。
一方で脱水症は必ずしも高温多湿ではなくとも下痢や嘔吐などでも身体の水分や電解質が失われることで起きます。大半は高温の中で活動することによる発汗による症状で、喉の渇きや尿量が減ったり、めまいが起きます。登山時は脱水症が引き金になって熱中症につながるケースが大半です。つまりこれからの夏山登山シーズンに多発します。

人間の体は60%が水分です。さらに細かく分けると、この60%の40%は細胞内に含まれる体液、そして15%が組織間液と呼ばれる細胞の外側にある水分、そして5%が血液です。電解質やたんぱく質はそれぞれの場所に固有の量が存在しますが、水は細胞内、細胞間、血管を自由に行き来することができます。このため暑い季節の登山中は細胞内、細胞間の水分を使って発汗し、そこに不足した水分は血液中から水分が補充されることになります。するとそれだけで血液の流動性が低下し、血液がドロドロという状況となります。
人間が体温を調節するためには汗だけでなく血液の流量もとても大切な役割をもっています。血管を膨張させ血液の流量を増やすことで、熱い身体から熱を奪ってその熱を持った血液を手足や耳など身体の抹消血管でラジエターのように冷却するためです。このラジエターの中をドロドロの血液が流れたら当然冷却効率は落ちていきます。身体に熱がこもると今度は身体を形作っているたんぱく質が化学変化を始めます。深部体温が37度くらいから、この化学変化が起き始めます。そして42度になるとたんぱく質が凝固しはじめます。こうなるとすでにその場で対処、処置できるようなものではなく病院での救急措置が必要となります。
熱中症の症状と対処方法は2024年より以下の4段階に重症度を分けています。

出典: 日本救急医学会ガイドライン2024
この重症度を見ていただけると分かると思いますが、登山中にその場で対処できるのはI度だけです。II度以上は医療機関での対応が必須です。I度にあるような症状が出たら危険信号です。Passive Cooling=冷所での安静、そしてActive Cooling=体内冷却、体外冷却、血管内冷却が必要となります。このI度の症状が出たときの対処も山の中では実施不可能な場合もあります。ですからI度の症状が出る前にこまめに水分補給と休憩が必要と言われる理由はここにあります。
登山中に脱水症、熱中症が起きやすい理由は、長時間にわたる運動が主な理由ですが、実はそれ以外にも、大量の水を持つと荷物が重くなる、特に女性に多いのがトイレ回数を減らすためという隠れた理由もあります。
個人差や季節の差もありますが、通常行動時間と補給する水分の量には次の関係があります。
5ml x 体重(kg) x 行動時間(H)
例えば体重70kgの場合行動時間が5時間であれば、
5 x 70 x 5 = 1750ml
つまり1.75リットルの水が必要とされています。目安として活用してください。
また発汗により失われるものは水分だけでなく電解質も失われます。この両方が失われた状態で水だけを補給すると、体内の体液が電解質の薄い状態となり、身体はこれを補正するために身体から水だけを出そうとします。すると滝のように汗が出たり、頻繁に尿意をもたらすことになります。このため水だけの補給ではなく経口補水液の補給が必要です。電解質、塩分は身体の中のダムの働きをします。最近はパウダー状で水に溶かして使うものもありますので携行することをお勧めします。経口補水液をこまめに取ることで実はトイレの回数も自然な状態で減らすことができます。
最後にこむら返りなどの筋肉の痙攣ですが、筋肉の疲労もありますが水分と電解質の不足で起きる熱中症の典型的な症状です。この対策として芍薬甘草湯という漢方薬があります。これは足がつった時などに使う対処療法としての特効薬的な位置づけのものであり、科学的にもその有効性は認められてます。しかし最近この漢方薬を足のつり対策として予防的に登山前に服用している人がいますが、全く意味がないとされています。有効な効果持続時間は数時間しかありませんし、大量摂取の場合ですが、副作用としての偽性アルドステロン症(偽アルドステロン症)のリスクも高くなると言われています。
さて最後にテーマである登山中のリスク対策とは話が変わりますが、3つSOTA日本支部からのお知らせです。
SOTA日本支部ではSlackを使ったコミュニティプラットフォームがあります。すでに100人以上のSOTA愛好家の方々が参加されています。このコミュニティに新たに参加をご希望の方は私宛のメール、ja1ctvアットマークjarl.comでも結構ですし、SOTA日本支部のホームページの問合せのページから連絡を頂いても結構です。登録案内を送らせていただきます。
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