日本全国・移動運用記
2026年5月1日掲載
鹿児島郡十島村は、トカラ列島にある離島の村で、「交信が難しい市町村」としてしばしば話題になっています。交通手段は週に2便の村営船しかなく、悪天候で欠航になりやすい上、繁忙期は予約も取りづらいなど、アクセスに大きな制約があるためです。
このため移動運用は簡単ではありませんが、比較的気候が安定している4月を狙って計画しました。
鹿児島郡は離島で構成される郡で、三島村と十島村の2つの村があります。九州本土に近いのが三島村です。筆者はこれまで、三島村で2回の運用を行っており、その2回目の様子は2024年5月号で取り上げています。十島村での運用は今回が初めてです。
十島村へのアクセスは、鹿児島港と名瀬港(奄美大島)を往復する週2便の村営船に限られています。当初、4月の第1週に移動運用を計画していたところ、教職員の異動のため自動車の航送に制限があるとのことで、第2週に変更しました。
現地での滞在時間を最大限に確保するため、十島村で最大の中之島ではなく、鹿児島港に最も近い口之島を運用場所に選びました(図1)。
口之島を選んだ理由はもう一つあります。それは、WASAアワードなどにおけるグリッドロケーター(JARL Webの解説)のスクエア(経線と緯線で囲まれた領域)としての希少性です。十島村のほぼ全域はPL49で、ここも運用する局が少なく交信が難しいスクエアですが、口之島の最北部には北緯30°線があり、これより北側はPM40になります。PM40の陸地は、他には三島村の黒島しか無いため、こちらも珍しいスクエアです。
実際は、1泊2日の限られた日程でPL49とPM40の運用を両立することは難しいため、HF帯の運用はPM40に限定し、サテライト通信で条件が良いパスのみPL49を運用する計画としました。

図1 鹿児島郡十島村・口之島の位置
十島村での運用の前日に乗船するため、自宅から車で鹿児島港へ向かいました。渋滞などでの乗り遅れを防ぐため早めに出発したところ、到着後には時間の余裕があり、鹿児島港で1時間だけ7MHz CWと10MHz CW、さらにサテライトのFO-29を運用しました。その後に乗船し、口之島には早朝に到着しました(写真1)。

写真1 利用した村営船 フェリーとしま
到着は日の出前で、周囲は真っ暗でした。港から北へ進み、北緯30°線のモニュメント(写真2)を通過し、それより北側のPM40で運用場所を探しました。しかし、断崖絶壁で駐車できる場所は限られており、さらに人が住んでいない地域のため、スマホは圏外でした。通常の運用(コンテストを除く)では、インターネットで運用情報を常時発信しながら、同時に電離層の状態などをチェックしています。今回はそれができず、10数年ぶりにインターネット接続が使えない前提で運用を続けることになりました。

写真2 北緯30°線のモニュメント
最終的に、島の最北端の岬に広いスペースを見つけ、サテライトの運用も十分にできそうなので、そこを運用場所に決定しました(写真3、4)。ところが、強風で長いアンテナを設置することが難しい状況でした。途中で運用を中断して港に近い場所に移動し、インターネット接続して情報を収集することも想定して、強風に強く、設置と撤収が短時間で可能な、7m釣竿とオートマチックアンテナチューナーの組み合わせにしました。これは沖縄本島移動(2026年4月号)などで、7~28MHz帯の交信には十分な性能があることを確認済みです。

写真3 口之島PM40の運用場所の様子

写真4 運用場所から海側を眺めた様子
まずは7MHz CWで、いつも出ている周波数でCQを開始しました。インターネット上に情報を出していないため、最初の1局と交信するまでには空振りCQが何回か続きましたが、次第にパイルアップが大きくなり、通常の移動運用とあまり変わらないペースで交信が続きました。7MHz帯が終わると次は10MHz帯で、ここもいつもの周波数でCQを出すと短時間でパイルアップになり、十島村の需要が非常に多いことが分かりました。
信号強度が強い周波数帯では多くの局と交信できましたが、伝搬が弱い場合は、インターネット上に運用情報を書き込めないため、交信はかなり厳しくなりました。Eスポ(スポラディックE層)も発生せず、24MHz帯では2QSO、28MHz帯では1QSOに終わりました。28MHz帯の聞こえ方から判断して50MHz帯は難しいと考え、運用は見送りました。
昼休みには、帰りの乗船券の購入場所を確認するため島の中心部に移動し、その際にサテライトのRS-44でPL49から運用しました。この場所ではインターネット接続ができたので運用を事前に予告して、海外局からもコールがありました。
夕方になると風が弱くなり、長さ7mの釣竿アンテナを40mの逆L型ロングワイヤーアンテナに張り替えて、ローバンドを狙いました(アースは車の屋根に置いた、底面にアルミ板を張り付けたオートアンテナチューナーの容量結合アースを使用)。このアンテナは1.9MHz帯の1/4波長の長さで、微調整すれば1.9MHz帯ではアンテナチューナー無しで使用可能で、国内QSOには十分な性能があります。結果、1.9MHz帯では27QSOできました。
夜は島の中心部に戻り、再びサテライトのFO-29でPL49での運用を行いました。
翌朝も同様に運用を続けました。十島村の需要はほぼ満たされたようで、7MHz帯や10MHz帯ではパイルアップが落ち着き、最後に14MHz帯の近距離の伝搬が良くなって長時間呼ばれ続け、船の出発時間が近づいたため終了としました。運用中には雨は降りませんでしたが、乗船の直前に雨が降り始め、鹿児島港に着いた頃には強い雨になっていて、天候に左右されやすい航路であることが分かりました。
運用日、QTH、バンド別のQSO数を表1に示します。10MHz帯でのQSO数が最も多く(サテライトは除く)、次いで7MHz帯、14MHz帯となりました。周囲に人工物がほぼ無い環境で、ローバンドはノイズが全く無い状況で良好に受信できました。

表1 QSO数。1.9~28MHz帯はCW、サテライトはCW/SSB
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