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日本全国・移動運用記

第117回 利尻島・礼文島移動(前編)

JO2ASQ 清水祐樹

2025年6月2日掲載

利尻島と礼文島は、どちらも北海道の日本海側北部に位置する離島です。利尻島は利尻郡に、礼文島は礼文郡に属しています。全郡との交信(WAGA)を達成するためには、これら2つの郡との交信が必要です。そのため、4月末から5月初めの大型連休に利尻島と礼文島で移動運用を計画しました。

運用計画

福井県の敦賀から北海道の苫小牧までの日本海側をフェリーで移動し、さらに苫小牧から稚内まで自走で移動した後、フェリーで利尻島と礼文島に渡りました(図1)。苫小牧から稚内への移動の途中でも運用を行いました。

利尻島には「利尻町」と「利尻富士町」の2町、礼文島には「礼文町」の1町があります。このため2か所での運用が必要な利尻島での運用時間を、礼文島よりも長めに確保しました。


図1 全体の移動ルート。4月29日は利尻島から移動していないため、記載は省略した

4月24~25日(1~2日目) 苫小牧から留萌に移動

苫小牧に到着した時の気温は8℃で、寒さはそれほど感じませんでした。21時に勇払郡(胆振)厚真町で運用を開始すると、例年この時期は7MHz帯の国内向け伝搬はスキップすることが多かったのですが、今年はコンディションが良く、14MHz帯でいきなりパイルアップになりました。その後、21MHz帯で5エリアなどとも交信できて、今年の8エリア移動は多くの局と交信できそうな予感がしました。24MHz帯では交信できませんでした。

苫小牧から、翌日の宿泊予定の留萌市までは移動距離が長いため、運用する市町村は岩見沢市、雨竜郡(空知)沼田町、そして留萌市に隣接する増毛郡増毛町に絞り込みました。増毛町では激しい雨になり、釣竿アンテナが揺れてQSBを伴いながらの交信になりました(写真1)。夕方に留萌市で運用を開始してから、しばらくすると雨は上がりましたが、一日を通して伝搬のコンディションは良くなく、24MHz帯と28MHz帯では交信が難しい状態でした。


写真1 増毛郡増毛町での運用の様子

4月26日(3日目) 留萌市から北上しながら、4町村で運用

留萌市から稚内市に向かう途中、日本海側を北上しながら、留萌郡小平町、苫前郡苫前町・羽幌町・初山別村の各町村で運用しました(写真2)。前日の大雨の影響で路面の状態が悪く、冠水している場所もあり、安全に運用できる場所を探すのに苦労しました。そのため、舗装された公園の駐車場など、安定した場所を選んで運用しました。

7~14MHz帯では長時間のパイルアップになるものの、18MHz帯では国内との交信が難しく、24MHz帯と28MHz帯はほとんど信号が聞こえない状態が続きました。

海岸近くでは非常に強い風が吹いており、タイヤベースで釣竿アンテナを設置してから、風が強すぎて運用を断念せざるを得ない場面もありました。さらに、早朝の小平町での運用時には雪がちらつき、初山別村での運用時にはあられが降るなど、厳しい天候の中での運用になりました。


写真2 苫前郡羽幌町での運用の様子

4月27日(4日目) 北緯45°線を越えて、稚内市へ

夜中には再び雨が降りましたが、気温は上がったため雪の心配は無くなりました。この日は、天塩郡(留萌)遠別町・天塩町・天塩郡(宗谷)幌延町・豊富町の順に運用して(写真3)、稚内市を目指しました。これらの町の間は、幌延町から豊富町への移動を除いては距離が離れており、各運用地点間の移動には時間がかかりました。

北海道では「どこでも移動運用できそう」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実際は、運用場所に多くの制約があります。まず、クマが出没するリスクがあるため、人が住んでいたり通行したりする場所でしか運用しません。また、病害の拡散を防ぐ目的で、農道への立ち入りは禁止されています。さらに、4月末の道北や道東地方では、公園などが冬季閉鎖されていることも多く、利用できる場所が限られています。

夜には稚内市で運用しました。HF帯では固定局がいらっしゃるため、需要は少ないだろうと思っていたところ、意外に多くの局から呼ばれました。


写真3 天塩郡(留萌)天塩町での運用の様子

4月28日(5日目) 宗谷郡猿払村に行った後、稚内に戻り、フェリーで利尻島へ

道北地方は移動運用する局が少なく、HF帯での運用リクエストを多く頂いていました。時間の制約で、基本的には1日4か所までの運用に限定しているため、全ての市町村で運用することは難しい状況です。そこで、少しでも運用地点を増やすため、稚内市から利尻島にフェリーで渡る前に、稚内市から50km以上離れた、隣接する宗谷郡猿払村で運用しました。この日の朝はHF帯の伝搬コンディションはあまり良くなく、しかも平日である月曜日の朝だったためQSO数は少なめでした。

午後にはフェリーで利尻島に移動しました。天気は良好で、気温も上昇しましたが、依然として強風が吹いていたため、船内では少し船酔いしました。

宿泊先は利尻町だったため、利尻島の初日の夜は利尻町で運用することにしました。いくつかの場所を回った結果、以前にも利用したことがある公園の駐車場に落ち着きました(写真4)。17時30分から運用を開始し、1.9~28MHzの各バンドを巡回しましたが、ハイバンドのオープンはありませんでした。翌日には風速10m/s以上の強風が予想されており、釣竿アンテナでは破損の恐れがあるため、逆L型ロングワイヤーアンテナを使用する予定で、その予行演習を兼ねて長さ40mのロングワイヤーアンテナを設置しました。その結果、1.9MHz帯では釣竿アンテナを使うよりも多くのの局と交信できました。


写真4 利尻郡利尻町での運用の様子

4月29日(6日目) 朝から猛烈な風、午後からは雪に

天気予報では風速10m/sを超える強風に加え、日中の気温は3℃、さらに雪の可能性もあるとのことでした。前日に下見しておいた利尻富士町の公園に移動すると、あまりの強風のため、伸縮ポールを全て伸ばすことができず、低めの20mロングワイヤーアンテナで運用することにしました。

その後、伝搬コンディションの上昇を期待したものの、状況は思わしくなく、空振りCQの連発でした。7MHz帯と10MHz帯でQSO数を稼ぎながら様子を見ていたところ、9時ごろに稚内上空のE層臨界周波数が上がったため、ハイバンドでの運用に切り替えました。しかし、18MHz帯が前日より少し良くなった程度で、Eスポと思われる伝搬はすぐに消えてしまいました。

前日と同じ利尻町の公園に行くと、風速はさらに増して、ロングワイヤーアンテナの設置を断念しました。強風に耐えられる長さ7mの釣竿アンテナは風で大きく曲がり、車も揺れるほどの強風でした。ハイバンドの伝搬は前日までと大きく変わりませんでした。

午前中に利用した利尻富士町の公園では周囲に風を遮る物がないため、立ち木など風を遮る物がありそうな公園で運用することにしました(写真5)。利尻富士町に着いた頃から雨が雪へと変わり、車の窓は雪で覆われるようになりました。伝搬のコンディションも低下して、21MHz帯で6エリアと交信できた程度で、成果は伸びませんでした。夕方になっても強風が続きました。

写真5は、運用の合間に撮影したもので、雪が降り始めてから時間が経過し、路面の雪は溶けていますが、最も激しく降った時間帯には路面の一部が白くなっていました。4月末の北海道では、これまでも何度か降雪を経験しており、今回もスタッドレスタイヤを装着していたため、特に問題なく運用を続けることができました。


写真5 利尻郡利尻富士町での運用の様子

(次号に続く)

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