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Masacoの「むせんのせかい」 ~アイボールの旅~

第76回 シャープ社友会 ラジオ愛好者同好会の皆さん

2025年10月1日掲載

Masacoの「むせんのせかい」 ~アイボールの旅~

シャープ社友会ラジオ愛好者同好会について

その社友会のミーティングスペース(社友会室)で、会長の藤林さん(JO3QVT)をはじめ、4名の皆さんから、「シャープ社友会」と「ラジオ愛好者同好会」のことを教えていただきました。


シャープ社友会の部屋に到着しました♪


ラジオ愛好者同好会のメンバーは13名。この日は4名の皆さんが集まってくださいました

「シャープ社友会」は、シャープを退職した方々の親睦を図る目的で、1980年に設立された組織です。いわゆるOB会ですね!

なんと、現在の総会員数は4,000名強(近畿管内だけで2,500名)で平均年齢は78歳。大阪に本部があるほか、全国6か所に支部があり、会報の発行やさまざまな親睦行事を行っているだけでなく、篆刻(てんこく)、俳句、詩吟、手芸、歴史探訪、ビデオ、パソコン、写真、歩こう会、ゴルフなどさまざまなジャンルの「同好会」が活動しているそうです。


部屋のあちこちに、同好会の活動状況を伝える掲示や作品展示がありました

その同好会の1つが、きょうお邪魔した「ラジオ愛好者同好会」なのです! 発足は2024年4月で今のメンバーは13名。主な活動は「八尾事業所の社友会室にて、月1回のペースで定期ミーティングを開催」「不定期の見学会や交流会、プロジェクトも計画・実施」というものだそうです。

詳しい活動内容は、シャープ社友会 ラジオ愛好者同好会のホームページをご覧ください。プロジェクトの資料もたっぷり! 見応えがありますよ。


ラジオ愛好者同好会の会長、JO3QVT藤林さんから詳しい説明を伺いました

--あ! アマチュア無線の同好会ではないのですね?

「はい、広い視点でラジオや無線を楽しんでいけるように、シャープOBのアマチュア無線家だけでなく、BCLやSWLをしていた社員や、ラジオやテレビの販売や製造、アフターサービスなどを経験していた社員にも参加を呼び掛けました。アマチュア無線の有資格者は半数ぐらいだと思います」(藤林さん)

--シャープにアマチュア無線クラブはあるのですか?

「1964年、本社にシャープアマチュア無線クラブ(JA3YHU)が開局し、初代会長は荒川さんが務められました。そのほかにも各工場や寮ごとにクラブ局を開設するところもありました。しかしシャープアマチュア無線クラブは2021年に解散してしまいました。それでも、その後もずっとクラブメンバーだった現役社員の方がJA3YHUの免許を維持してくれたおかげで、今年7月にここ(社友会室)にJA3YHUを再設置することができました。10月4日、5日には万博特別局 JA3XPOの運用を行うことも決まり、メンバー一同今後に大いに期待しているところです」

--伝統あるコールサインのクラブ局復活、JA3XPOの運用、楽しみですね!!

たくさんのプロジェクトが進行中!

そして、おもな活動の1つになっている「プロジェクト」についても伺いましたよ! たくさんのプロジェクトが進行中ですが、そのいくつかをご紹介します♪

★アンティークラジオ博物館の設立プロジェクト
シャープの広島事業所がある東広島市に、「ゆーみん」という名前の古民家カフェが2024年7月にオープンしました。その隣に今年10月、「アンティークラジオ博物館」を作ることになり、その開館プロジェクトが進んでいるそうです!


広島県東広島市に「アンティークラジオ博物館」を設立するプロジェクトが進行中!

この博物館の開設には、ラジオ愛好者同好会とシャープ社友会広島支部の皆さんが全面協力! なんと館内に展示するアンティークラジオや蓄音機は、荒川さんが長年にわたって収集してきたコレクションの一部なんですって!

荒川さんはシャープの駐在員としてアメリカやイギリスに住んでいたことがあり、そのときに地元のラジオクラブに入ったり、フリーマーケットやコンベンションを回ったりして、たくさんのアンティークラジオを集められたそうです。これまでにも大阪狭山市で「ラジオと蓄音機のコレクション展」を開催したこともあります!


イギリスで開かれたアンティークラジオのコンベンションの模様。荒川さんから写真を見せていただきました

今のところ、アンティークラジオ博物館のオープンは10月7日(火曜日)を予定しています。落ち着いた古民家カフェで、お茶やケーキをいただきながら、レトロなラジオで心も癒される・・・ そんな素敵な博物館の誕生に期待! 私もぜひお邪魔させていただきますね♪

★英国製鉱石ラジオの復活プロジェクト
荒川さんが収集されたアンティークラジオの中に、100年前に作られたイギリス製の鉱石ラジオ(1924年発売)がありました。残念ながら音が出ない状態でしたが、「これをラジオ愛好者同好会で修理して、実際に音を出してみよう」というプロジェクトが企画され、藤林さんと吉田さんが中心となり、皆さんで工夫して修理を行い、無事にラジオが聞こえるようになったそうです!

100年前のラジオは、ICやトランジスタ、真空管といった部品は使っておらず、しかも無電源。ある意味とてもシンプルな構造なので、工夫を凝らすことで今でも修理ができたということでした。

ここで荒川さんが「その修理プロジェクトで復活した鉱石ラジオがコレです!」と、現物を披露してくださいました!!


1924年にイギリスで製造された鉱石ラジオ。荒川さんの大切な宝物の1つです

--きゃあ! お持ちくださったんですね!

ラジオは15cmぐらいの木製の箱に収まっていて、上蓋をパカッと開けると大きなダイヤルがついています。中央に選局用の大きなダイヤル、その下には「PHONES」と書かれたヘッドホン端子、上には「AERIAL」と書かれたアンテナ端子やアース端子も見えます。


荒川さんの説明を聞きながら、100年前の鉱石ラジオを慎重に操作しています・・・

「Masacoさん、大きなダイヤルの上にバネの付いたピンのようなものがあるでしょう? これが鉱石検波器です」

--ピンに黒いツマミがついていて、自由に動かせそうですね!


ヘッドホンをつけてから黒いツマミをゆっくり動かし、ラジオが一番良く聞こえるところを探ります

「ヘッドホンをつけてから、そのツマミをゆっくり静かに動かして、一番感度良く受信できるところを探るのです」

--へえ~! コツと根気が必要なんですね!


鉱石ラジオの内部。大小2つのコイルの重なり具合でチューニングを取ります

★シャープの国産第1号鉱石ラジオの複製プロジェクト
英国製鉱石ラジオの復活プロジェクトが成功したことで、ラジオ愛好者同好会でさらに凄いプロジェクトが始動しました。それが「シャープの国産第1号鉱石ラジオの複製プロジェクト」です!

日本でラジオの本放送が始まったのは今から100年前の1925(大正14)年。当時のラジオは高価な輸入品ばかりでしたが、いち早く国産第1号の鉱石ラジオの製造に成功したのがシャープ(当時は早川金属工業研究所)でした。奈良県天理市にある「シャープミュージアム」にはその現物が展示されています。私も2020年に月刊FB NEWSの「Masaco、大人の社会科見学!」コーナーで一度お邪魔したことがあるんですよ~!


シャープのミュージアム(奈良県天理市)に展示されている国産第1号の鉱石ラジオ。近代化産業遺産群に認定されている貴重なもので、分解や修理は困難です

最初、このプロジェクトは“ラジオ放送100周年を記念して、ミュージアムにある鉱石ラジオの現物を修理して音が鳴るようにしよう”という方針でしたが、非常に貴重なもので、経済産業省の「近代化産業遺産群」の1つに認定されているため、修理と言えども分解したり、手を加えたりすることが難しいことがわかり、「それなら本物そっくりのレプリカを作ろう!」ということになったそうですよ。

設計図も配線図もないので、ミュージアムに展示してあるラジオを何度も見せてもらい、ノギスで細かな寸法を実測したり、当時の写真を拡大したりして内部構造や回路を割り出し、できるだけ当時のパーツを使いながら、手に入らない部品や銘板などは自分たちで作り、なんとか完成にこぎ着けました!

「その複製した鉱石ラジオがこれです。今年の春に完成しました」


ラジオ愛好者同好会が複製に成功した、国産第1号鉱石ラジオがこれです!!


複製に成功した国産第1号鉱石ラジオの内部。バリコンなどできるだけ当時の部品を使ったそうです

--わあ! ありがとうございます! すごくレトロな感じがしますね。とても今年作ったものには見えません。

「銘板や検波器の外装、本体の塗装などは古く見えるような技法で作っています。Masacoさん、本当に聞こえるのでヘッドホンを使って受信してみてください」


複製した国産第1号鉱石ラジオの検波器部分。黒い筒は同軸ケーブルの外皮を活用、そこに巻いてある紙もわざと古く見えるように加工したそうです

--音は少し小さいけれどハッキリ聞き取れます。100年前の人たちはこんな感じでラジオを楽しんでいたのですね!


部屋の中にリード線アンテナを張っていただいたら、NHKラジオ第2放送の音声がハッキリと聞こえました。ビックリ!!

「よく見ると、ヘッドホンの端子が2組あるでしょう? 2人が同時に聴ける工夫が100年前に考えられていたのですね。こういうところがシャープらしいと思います」

この「シャープの国産第1号鉱石ラジオの複製プロジェクト」は大成功! 3月19日にはシャープのミュージアムで、このラジオを使って放送を聞く「ラジオ放送100周年記念展-よみがえった100年前のラジオで放送を聴いてみませんか-」というイベントを開催したら、小学生から90代のお年寄りまで、70人以上の来場者があったとか!

さらに5月31日と6月1日には、NHK大阪放送局(コールサイン: JOBK)で行われた「BK100年まつり」の会場にこのラジオを展示したところ、2日間で1,000人以上がヘッドホンを耳に当てて、ラジオの音を楽しんだそうです。なかには若いときに聞いた鉱石ラジオの音を覚えている年配の方からの「とても懐かしい音がする!」という喜びの感想も!

★1931年製の真空管ラジオを修復して鳴らそうプロジェクト
シャープの天理ミュージアムで保存していた、1931年製の真空管ラジオ(シャープダイン#31号)を修復して、ホーン型の外部スピーカーから音が出るようにしよう! というプロジェクトも実行されました。


修復に成功した1931年製の真空管ラジオ(シャープダイン#31号)

5本の真空管を使った「1-V-2」(高周波1段増幅→検波→低周波2段増幅)という回路構成の高級モデルで、なんと点検してみたところ、真空管はすべてフィラメントが点灯し、動作していることがわかったそうです!

その上で、「危険な部品は新しいものに交換する」「シャーシ上、シャーシ内ともに、部品形状は極力オリジナルの外観を残す」という方針を立てて、故障や劣化した電子部品(電解コンデンサなど)と端子の交換、ダイヤル照明や内部銘板の修復などを行って、無事に修復を終え、ホーン型スピーカーとつないで音が出るようになりました。


ラジオの内部。電解コンデンサは当時の形状を残したまま、内部のパーツだけを交換。内側に貼っている銘板も複製したそうです。周波数目盛り窓の飾りは当時のまま!

「Masacoさんもぜひ聞いてください」

--ありがとうございます! ・・・わあ、ちゃんとスピーカーから音が出ていますね。ヘッドホンなしで大勢の人が聴けるので、画期的だったのでしょうね~。


スピーカーから聞こえてくるラジオの音声を真剣に聞いています

「ホーン型スピーカーに入っているスピーカー本体はとても小さなもので、一番下の台座に収まっています。それをホーンの長い筒とラッパを通すことで大きな音が得られるようになっています」

--本当だ! 台座の下のスピーカーはすごく小さいものですね!!


台座に収められた小さなスピーカー。ホーンを通すことで大きな音声が得られる仕組みになっています

★月刊FBニュースの取材を受けようプロジェクト
なんとなんと! ラジオ愛好者同好会のプロジェクトの中には「月刊FBニュースの取材を受けようプロジェクト」まであるそうです!

「Masacoのむせんのせかい」コーナーで今回の訪問記が掲載されると、このプロジェクトは見事に達成! ということになると伺いました。ちょっと照れますけど、ありがとうございます!!! そしてプロジェクト達成おめでとうございます♪

次ページは「メンバーの皆さんにミニインタビュー」

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