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日本全国・移動運用記

第122回 徒歩による東京都大島町移動

JO2ASQ 清水祐樹

2025年11月4日掲載

東京都大島町は、離島の伊豆大島にある町で、2021年4月に運用した際の様子を第68回(2021年5月号)で紹介しました。それから4年以上が経ち、CWでの運用を希望する声が多かったため、再び移動運用を計画しました。

前回は、現地でレンタカーを借りて1泊2日の日程で実施しました。レンタカーは無線機器の積み込みや準備に、時間と労力がかかります。そこで今回は、より手軽に運用できるように、徒歩で運搬できる機材を持って、静岡県熱海市から高速ジェット船を利用して日帰りで移動することにしました。

長尺の荷物を無くした、徒歩移動運用セット

筆者はサテライト通信を運用するため、アイコムのIC-705を2台所有しており、飛行機での移動時に持参して運用することがあります(直近の例は、2025年8月号)。この際、釣竿アンテナ、長さ約1mのモービルホイップアンテナ、自作のサテライト通信用アンテナを、長さ1.3mほどの釣竿ケースに入れて運搬しています。

しかし、今回利用する高速ジェット船は持ち込める荷物に制限があるため、長尺の荷物を無くしたいと考えました。そこで、サテライト通信用のアンテナは、性能が低下することは承知の上で、144/430MHz用の伸縮式ロッドアンテナとデュープレクサーを使用することにしました。釣竿は、仕舞寸法が約0.5m、長さ4.5mのコンパクトな物は持っていますが、HF帯の出力10W運用では長さが不足すると考え、最大40mまで展開できるロングワイヤーアンテナと、オートアンテナチューナーAH-705を持参しました。IC-705の電源は、PD 15V/3A出力対応のモバイルバッテリーと15Vトリガーケーブルを使用し、出力10Wを確保しています。

これにより、釣竿ケースを持参する必要が無くなり、運用に必要な機材は全て機内持ち込みサイズのキャリーケースに収まりました(写真1)。ほぼ同サイズのリュックサックとも比較したところ、まだ蒸し暑い季節でリュックサックでは背中の汗が気になるため、今回はキャリーケースで運搬して、衣類や食料品は、別の小さいバッグで持参しました。


写真1 徒歩による移動運用セットの外観

熱海市に前泊し、高速ジェット船に乗船

高速ジェット船の出港時刻を考慮すると、熱海港には朝8:30に到着する必要がありました。筆者の自宅からは車で4時間ほどかかるため、当日の出発は負担が大きく渋滞等で遅れるリスクもあると判断し、前日に熱海市内で宿泊しました。熱海市の中心部は駐車場の確保が難しく、そもそも持参する荷物が少ないため、熱海駅までは新幹線で移動して、熱海駅と熱海港の間はバスを利用しました。

大島町に向かう当日の朝は、予定より早く熱海港に到着したため、隣接する公園で動作確認も兼ねて30分間だけ運用しました(写真2)。アンテナは、木の植え込みの上に20mのロングワイヤーを置いただけ、アース線はブランコの柵に絡ませて、オートアンテナチューナーAH-705で給電する構成としました。7MHz帯と10MHz帯のCWで運用したところ、思いのほか多くの局から呼ばれ、1分に2局のペースでQSOが進むほどのパイルアップになりました。


写真2 熱海市での運用の様子

高速ジェット船は伊豆大島に10:15に到着しました。サテライトのRS-44が10:29から始まるため、港の近くにあるベンチで急いでサテライト移動運用セットを組み立てました。無指向性のロッドアンテナでは受信感度が低く、さらにRS-44の仰角も低かったため、ダウンリンクの信号が弱く苦戦しました。それでも、何とかCWではQSOできました(写真3)。

続いて、港から徒歩4分ほどの公園に移動しました。ここでは、日陰があること、地面が安定していること、アースとして使える金属製の物体があること、人が通らない場所にアンテナを展開できること、の各条件を満たす場所を探しました。このうち、アースとして使える金属製の物体は見当たらなかったので、長さ5mのアース線を地面に直接置いてアースにしました。今回の移動では、釣竿や伸縮ポールは持参しなかったため、アンテナチューナーAH-705を一脚に取り付け、そこから20mのアンテナ線を水平方向に伸ばし、木に引っ掛けて固定しました(図1、写真4)。


写真3 サテライト通信の運用の様子。衛星からのダウンリンクが強くなるように、伸縮式ロッドアンテナは傾けて設置している。


図1 HF帯の運用で使用した機材の配置


写真4 大島町での運用の様子

7MHz帯のCWから運用を開始すると、通常の移動運用ではあまり見られないような厚いパイルアップになり、1分間に3局近いペースでQSOが進みました。S9+20dB前後で入感する局も多く、相手局が100W出力と仮定すると、こちらの10W出力は10dB低いため、相手局には約S9+10dBで聞こえている計算になります。この結果から、地上高が低い簡易的なアンテナでも、HF帯では十分な性能を発揮できることが分かりました。

10MHz帯でも同様にパイルアップが続きましたが、14MHz帯から上は伝搬のコンディションが思わしくありませんでした。さらに、運用場所の北から東側には山があり、東京の都心や千葉県方面は地形的に遮られていたため、CQが空振りすることも多くなりました。またHF帯の運用が一段落した後で、アンテナを伸縮式ロッドアンテナに切り替え、144MHz帯と430MHz帯でもQSOできました。

結果

QSO数を表1に示します。熱海市では30分間、大島町では運用開始から終了まで約4時間の運用で、1時間に120QSO以上のペースになる時間帯がありました。


表1 QSO数。モードは全てCWで、サテライトのSSBは交信できなかった。

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